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Andante (アンダンテ) 
音 羽 教 室 1:1個別指導専科

[2021年3月26日]

1号:放課後の豆知識;1…「フッ素」と「ウラン」

ウランと言えば、放射線を出す剣呑な物質で、
フッ素と聞くと、歯医者さんや歯磨き粉を連想される方も多いと想います。

地球上で或る程度の利用可能な量が存在している物質で、天然の元素としては
ウランが最も重いと言われます。ウランと言えば、原爆・原発のイメージですが、
それは核分裂を起こさせる事でエネルギーが取り出せる性質があるからです。

エネルギー源として使えるのはウラン235で、ウラン238はそうではありません。
ウラン235だけが唯一天然に産出する核分裂を起こす物質として知られています。
ウラン235は特撮のウルトラマン(初代)に出てきた怪獣ガボラの好物です。

ここで、問題となるのがウランの中での存在比率です。全ウランの量を100%と
すると、ウラン238は全体の99.24%になるそうです。対して、第二勢力の235は
0.72%と言われ、残り(?)がその他のウランの同位体となるワケです。

天然ウランの中から235を取り出さなければ、エネルギー源にはなりません。
ところが、困った事にウランの融ける温度:融点は約1100度、沸点に至っては
3700度を越えます。ウラン鉱石の状態では238と235の分離は不可能ですが、
物理的に気化させるのにも膨大なエネルギーが必要になり、非効率です。

因みに、太陽の表面温度はだいたい5500度だそうです。アニメのヤマト2199に
その名が出てきた恒星グリーゼ581(赤色矮星)の表面温度が3200度程度の様
ですから、3700度は文字通り天文学的な高温と言えるのでしょう。⇒そこで!
物理が無理なら、化学の出番…熔かすのがNGなら、溶かせばイインデス。

採掘されたウラン鉱石を砕いて硝酸溶液に浸し、溶出⇒濾過⇒乾燥させると、
粉末状になる様です。この段階が所謂イエローケーキと呼ばれる状態だそうですが、
そこで出てくるのがウランの次の特性:ハロゲン化させると気化し易くなる…です。

ハロゲンとは周期表に向かって右から2番目の縦列です。周期表は軽い元素ほど
上段に記載されています。ハロゲンで最も軽い元素…やっとフッ素の登場です。
ウランのフッ化は、5フッ化の後、更にフッ化して、6フッ化ウランにするそうです。

では、その6フッ化ウランの沸点は?と言うと、ナント56〜57度…嘘みたいです。
この気体状の6フッ化ウランなら238と235を分ける事が可能になります。
238と235は単純な重量(質量)差ですから、遠心分離ができる訳です。

しかしながら重量差と言っても、3/238しか無いのですから、フッ素の方にも
品質が求められるのは当然です。日常生活では殆ど関連の無い間柄の様な
ウランとフッ素にも意外な接点があったものです。