[2021年3月26日]
今は曖昧になってしまっていますが、【七草】とは秋の七草を指したそうです。
…では、春は?と言うと、【七種】だった様なのです、春の七種…と言う訳です。
【七草⇔七種】…共に読みは、『ななくさ』です。
君がため 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ
小倉百人一首の15番:光孝天皇の作です。ここに出てくる若菜は何か特定の植物
ではなく、春に食用・薬用となる野草などの植物の総称の様なものとの事です。
新春の若菜摘みは当時の慣例だった様です。元々は1月15日を小正月の別名で呼び、
この日に七種の草の入った粥を食べた様なのですが、この15日の粥に入れたのが
七種でした。いつの間にか、若菜の七草と粥の七種が入り混じってしまった様なのです。
なので、春は七草でも七種でも、どちらでもOKみたいです。
【種】の文字を調べると、「植物の種子」の他に「材料、食材、素材」とは書かれています。
春の七種:せり・なずな・すずな・すずしろ・ほとけのざ・ごぎょう・はこべら
秋の七草:萩・芒・桔梗・撫子・女郎花・葛・藤袴
確かに、秋の方で普通に食用になりそうなのは…「葛」くらい?でしょうか。
さて、1月7日ですが、この日は節句です。節句と聞くと、桃の節句や端午の節句などを
想い浮かべますが、1月7日・3月3日・5月5日・7月7日・9月9日を五節句と呼びます。
何故、奇数ばかり?…と感じた方!…流石です。
古代から中国では数字を陽数と陰数に分け、偶数:陰-奇数:陽として扱いました。
上記の奇数…つまりは陽数の重なる日が節句として定着したと言われています。
特に【九】は最も良い陽数とされたので、九が重なる9月9日を重陽(チョウヨウ)の節句と
呼ぶ様になったそうです。また、各節句には特定の植物が象徴的に添えられた様です。
人日 (じんじつ)…七草(若菜)
上巳 (じょうし)…桃
端午 (たんご)…菖蒲
七夕 (しちせき)…笹
重陽 (ちょうよう)…菊
人日…古来中国では、正月の1日を鶏の日、2日:狗(犬)の日、3日:猪(豚)の日、
4日:羊の日、5日:牛の日、6日:馬の日として、当該日にはそれらを殺さない(食べない)
事にしており、7日目は人の日として犯罪者への刑罰は行わない様にしていた。
上巳…上旬の巳(み=ヘビ)の日の意味であり、元々は3月上旬の巳の日を指していた。
端午…「端」(ハシ)は「始め・最初」という意味で、5月の最初の午(ウマ)の日の意味だった。
七夕…中国での行事だった七夕(シチセキ)が奈良時代に伝わり、日本在来の伝説と合わさったもの。
本来の「たなばた」は「七夕」ではなく、『棚機津女:たなばたつめ』の『棚機』の文字を充てる。
狩り暮らし たなばたつめに 宿からむ 天の河原に 我は来にけり
ひととせに ひとたび来ます 君待てば 宿かす人も あらじとぞ思ふ
上記二首は伊勢物語;82段からです。七夕は東アジアでの星祭としても広まっています。
端午を男子の節句とするのは、菖蒲⇒尚武…武を重んじる事からで、江戸期以前は
女の人の節句でした。反対(?)に上巳は年齢・性別は無関係に、草や藁で作った人形(ヒトガタ)の
体を撫でて(特に患部などの)穢れ(けがれ)をヒトガタへ移し、無病息災を祈り、災厄を祓う事を
目的とした民間儀礼だったと言われています。現代では流し雛などにその名残が認められます。
ところで、現行のカレンダーでは3月3日・5月5日・7月7日は毎年、同じ曜日になります。