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Andante (アンダンテ) 
音 羽 教 室 1:1個別指導専科

[2021年3月26日]

6号:放課後の豆知識;6…「冥王星」と「プルトニウム」

今から約13年前の2006年8月末に冥王星惑星から準惑星へ扱いが変更されました。
冥王星にしてみると不本意な話です。dwarf planet(ドワーフ・プラネット)=準惑星です。

小人、矮人、侏儒、或いは亜人類など…人間よりも少し背丈の小さい伝説上の種族として
民話・神話・童話・寓話・ファンタジー作品などに登場するのが…ドワーフ:dwarfです。

冥王星は1930年の初めに発見され、同年の5月にPlutoと命名されました。名付け親は
英国在住で当時11歳だったヴェネチア・バーニーさんだったと言われています。
彼女の名前は小惑星バーニー:Burneyとして、その名を天文分野に留めています。

プルトニウム:Puは冥王星:Plutoから命名されました。冥王星発見から11年後の1941年2月、
ウランに重水素:deuteriumを衝突させる方法によって合成されたのがプルトニウム238です。
驚くべきは…その4年半後の8月には原爆として実用化(?)されてしまった事かもしれません。

プルトニウム(原子番号94)の合成に先立つ事、僅か数か月、ネプツニウム:Np(原子番号93)
の単離が確認されています。1940年の年末だそうです。人類初の人工的な超ウラン元素
してネプツニウムは記録されました。名称は海王星:Neptuneを語源としています。

海王星は1846年9月にドイツのベルリン天文台で存在が確認されたのですが、天王星の
外側にある天体の軌道を計算し予測したのは英国のアダムズと仏国のルヴェリエです。
また、最初の海王星の目撃は、1612〜1613年にかけてのガリレオだったと言われています。

ガリレオが作成した星図には木星の非常に近くにある天体(現在の海王星)の観測記録が
残されているそうなのですが、ガリレオはこの天体を青色の恒星と誤認していた様なのです。
ガリレオが自作したと言われる屈折望遠鏡(ガリレオ式望遠鏡:Galilean telescope)のサイズは
口径42mm/長さ2.4mで、倍率は9倍だったそうですから、やはりガリレオは天文学の父です。

ネプツニウム239はウラン238に中性子を当てて合成されたそうです。また、同じ年の1940年には
日本の理化学研究所で、ウラン238から中性子を1個取り除いたウラン237の合成実験の最中に
ベータ崩壊が確認できたことから、ネプツニウム237が発生していたハズ…なのですが、こちらは
単離までは行かなかったらしく、発見とは認められなかった様なのです。

もし単離できていたら、ニッポニウムと名付けられた…と言われているのですが、ネプツニウムも
幻のニッポニウムも元素記号は【Np】なんですね。

ネプツニウム・プルトニウムの母体のウラン:U(原子番号92)は、紀元1世紀頃にまでその利用の
痕跡を追跡できるそうです。当時は酸化ウランがガラスの着色剤として使用されていた模様です。
元素としてのウランはドイツのクラプロートが1789年に発見しました。同じドイツ出身の天文学者
ウィリアム・ハーシェルにより1781年に発見された天王星:Uranusが命名源となっています。

クラプロートが発見したウランは、後年に二酸化ウランだった事が判るのですが、ウラン鉱物が
放射線を発している事は1896年にフランスのアンリ・ベクレルにより始めて判明します。

その功績で、彼の名はベクレル(becquerel:Bq)として、放射線計測の単位となっています。
放射性物質が1秒間に崩壊する原子の個数(放射能)を表す単位がベクレル:Bqです。
Bq以前は壊変毎秒:dps(decays per second/disintegrations per second)でした。

ハーシェルはドイツ人ですが、英国で活動していました。天王星発見者として天文史に名を残す
ハーシェルですが、最初に見つけた時には新惑星ではなく、新彗星と誤認していたそうです。

  ウラン⇒1789年……………天王星:ウラヌス⇒1781年
  ネプツニウム⇒1940年……海王星:ネプチューン⇒1846年
  プルトニウム⇒1941年……冥王星:プルート⇒1930年