[2021年3月26日]
日が沈んで暗くなった頃の今時分の南の夜空は割りと寂し気です。
東からはオリオン座など冬のダイヤモンドと呼ばれる一等星の群れが昇ってきています。
西には夏の大三角が過ぎた季節の名残を惜しむかの様に沈みかけています。
南天にも一等星はあるものの、今頃の南の空に輝くのはフォーマルハウトが唯一つの一等星です。
南の一つ星とも呼ばれるみなみのうお座の星で、アラビア語で魚の口を意味するそうです。
フォーマルハウトは全天に21ある一等星の中で、惑星系が確認されている4つの恒星の1つです。
ケンタウルス座α星は南西諸島以北では殆ど見られませんが、他の2星は前出のダイヤモンドの
メンバーです。おうし座のアルデバラン、ふたご座のポルックスです。
オリオン座が南中(20:00)するのは2月の初旬ですが、オリオンの右上が牡牛、左上に双子です。
黄道十二宮では4月末〜5月末はTaurus:金牛宮で、5月末〜6月末がGemini:双児宮です。
星座の数は全天88と言われますので、当たり前の話ですが、自身の出生星座の近辺には
教科書で学ぶ星座も在る訳です。ベテルギウスやシリウスも冬のダイヤモンドの一員です。
さそり座のアンタレスやオリオン座のベテルギウスは赤色(超)巨星と呼ばれる恒星です。
この2つの巨星を我々の太陽の位置に移動させると、その外周は火星軌道を越える規模の大きさ
と言われます。はくちょう座V1489星(V1489 Cygni)と名付けられている恒星に至っては…
木星軌道を超える大きさの赤色(超)巨星らしく、桁違いのスケールです。
はくちょう座V1489星は凡そベテルギウスの2倍を越す超々巨星と言われますが、16等星程度の
明るさで可視範囲ではありません。それは距離が離れているからです。約5250光年…だそうです。
前出:大犬座のシリウスは全天で?1の輝星ですが、それはシリウス自体の明るさも然る事ながら、
距離の近さが明るさの要因と言えます。距離は約8.6光年です。太陽から最も至近の恒星である
ケンタウルス座α星が約4.3光年ですから、シリウスも近い恒星に違いありません。
概ね、距離が2倍になると明るさは1/4、3倍になると1/9になる…距離の二乗に反比例です。
以下は実視等級と距離を簡単に並べたものです。一等星といっても明るさには幅があります。
シリウス −1.46 8.6光年
リゲル 0.13 860光年
ベテルギウス 0.42 642光年
アルタイル 0.76 16.7光年
アンタレス 0.91 550光年
デネブ 1.25 1400光年
レグルス 1.40 79.3光年
列記してみると、リゲルとデネブの明るさが際立っている事が明白かと想います。白鳥座デネブが
一日で放射するエネルギーは我々の太陽が140年かけて放射する量と等しい…と言われる程です。
また、この2つの星は同じタイプの変光星であり、リゲルの光度は太陽の12万〜28万倍とされています。
デネブは夏の大三角の一翼で、白鳥座は宮沢賢治の銀河鉄道の夜には北十字として登場します。
欧米諸国では Cygnus や The Swan と言うより、The Northern Cross と呼ばれる事が多い…と
聞いた記憶もあります:【A popular name for Cygnus is the Northern Cross.】。
実際、クリスマス頃の日没後、西から北西にかけての空には、白鳥座が嘴部のアルビレオ(3等星)を
地平線に向け、尾部のデネブを頂点に翼を拡げています。夜空にかかる十字架そのものの姿です。
今時分の天の川は西の地平から天頂部にかけて流れています。白鳥座は天の川に浸る星座なので、
天の川を見つけたら、少し顔を上げた辺りの河中に白く輝いている星がデネブです。
仰角30度程度では、高層の建物や市街地の照明に隠れてしまうかもしれません。
開けた場所がオススメです。南天の星座として扱われる事の多い白鳥座ですが、
デネブの北極星からの見かけ上の距離はカシオペヤや北斗と殆ど変わりません。