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Andante (アンダンテ) 
音 羽 教 室 1:1個別指導専科

[2021年3月26日]

21号:放課後の豆知識;21…「等級」と「星空」

南天の星座は東から出て、西に没する間に角度が変化します。観察できる方角の事ではなく、
星座自体の姿勢としての角度です。オリオン座やうしかい座、白鳥座などは判り易いのですが、
東から登る際には横向きで水平線から昇ってきます。西の地平線に没する時は縦向きです。
北天の星座が北極星を中心に円周運動している事から、想像には難く無いのですが、
実感として把握するには何度も夜空を眺める慣れが必要かもしれません。

うしかい座BoötesまたはBoötisです。öの【¨】はウムラウトでなく、トレマと呼ばれるものだそうです。
その為、発音は「ブーテス」ではなく「ボゥテス」風になる…様なのですが、Boötesの由来は未解決です。
日本でも和名が決まらず、戦後まで「牧夫座」と「牛飼座」で割れていました。尤も、カシオペヤ座
戦前には女帝星座…などと表記されていた様です。カシオペヤは女帝や女王ではなく、王妃です。

参商之隔とは、距離が離れている為に会う機会の無い事、またはそれ故の不仲を指す言葉で、
参商の如し…とも言われます。シンショウも中国の星座(星宿)で、商は心宿シンシュクの別名です。
心宿はさそり座アンタレスとその両脇の星を合わせた三星です。は東方を守護する青龍の心臓に
アンタレスをなぞらえたとされ、その大きさや赤い色から大火大心の別名も漢文に散見されます。

(参)宿シンシュクは西洋のオリオン座とよく似た範囲を示す星宿の名称です。単に三ツ星だけでなく、
オリオン座の七星で構成され、ベテルギウスやリゲルも含まれます。洋の東西を問わず、古くから
様々な目印やモチーフとされてきました。Orion's beltはオリオン座の三ツ星を指し、Orion's sword
とは三ツ星のベルトから下へ連なる小三ツ星の事です。このソード(剣)の中央の光は恒星ではなく、
星雲です。肉眼でも恒星と見間違える程に明るく、オリオン大星雲と呼ばれています。

絶対等級という恒星の明るさの指標があります。各恒星との距離は均一でない為、一定の距離まで
恒星を移動させると仮定した際の明るさを絶対等級と言います。一定の距離とは10パーセクです。

1パーセクは約3.26光年です。恒星Pと太陽Sを結ぶ直線PSを想定し、太陽Sと地球Tを結ぶ底辺TSが、
太陽S直角PSと交わる時、恒星Pと地球Tを結ぶ直線PTは角Sを90度とする直角三角形の斜辺と
なります。この斜辺PTと垂線PSに挟まれた角Pの成す角度が1秒角 (3600分の1度)となる時の
垂線PSの長さを1パーセクと定義するそうです。文字で説明すると面倒ですが、図解なら平易です。

各恒星を10パーセクに移動させた絶対等級で比較すると、リゲルやデネブは-6.9となります。
対して太陽は4.8、視等級1位のシリウスは1.4、2位のカノープスが-5.6春の大三角の一隅の
うしかい座アークトゥルス(視等級4位)が-0.3ですから、リゲルやデネブの眩しさも想像できそうです。
恒星の等級ですが、例えば2等級が1等級になると、明るさは約2.5倍になります。

Orion's beltの3つの二等星は…向かって右側がδ(デルタ)星:ミンタカで視等級が1.79等、
中央のε(イプシロン)星:アルニラムが1.69等、左側のζ(ゼータ)星:アルニタクが2.23等です。
この中央のε星アルニラムはデネブよりも更に遠方…約二千光年も離れ、絶対等級はデネブ・リゲル
と同程度です。またアルニタク(約700光年)の見かけ上の近傍では馬頭星雲(約1500光年)が有名です。

全天2位のカノープスは日米欧の南部で地平線際にやっと見られる高度ですが、遊牧民族は南下の
際の指針としていたそうです。オリオンやその三ツ星も古代から海洋民族の目印とされていた様です。
実際に、δ星:ミンタカは殆ど天の赤道上に位置するので、ほぼ真東から昇り、ほぼ真西に沈みます。

オリオン座≒參(Shēn:シン)宿では、ベテルギウスやリゲルは和名で平家星源氏星などと呼ばれた
そうですが、3つの二等星が整然と並んでいるオリオンのベルトも道標としては有効だったのでしょう。

過日、街明かりの少ない郊外で東の地平線から横になって昇ってくるオリオン座に遭遇しましたが、
オリオンの三ツ星は地平から垂直に連なって、まるで縦に引いた垂線上に配されている様でした。