[2021年3月26日]
恒星…とは言いますが、星の明るさは永遠でも一定でもありません。生まれたばかりの星も
あれば、燃え尽きた星も、爆発寸前の星もある…と言われています。恒の星でもない様です。
白鳥座のデネブやオリオン座のリゲル、或いはオリオンの三ツ星の中央:アルニラムなどは
最も明るい恒星のグループですが、これらの星も明るさが変わる様です。所謂、変光星です。
上記のデネブ・リゲル・アルニラムなどははくちょう座α型変光星と呼ばれています。
はくちょう座α星=デネブの事で、星の表面の或る部分が膨張するのと同時に、他の部分が
収縮するタイプの変光星です。デネブは白色超巨星で、リゲル・アルニラムは青色超巨星です。
赤色変光星で有名なのはベテルギウス・アンタレス・はくちょう座V1489で、共に赤色超巨星で
ある事は前々回にも触れました。ベテルギウスの膨張収縮には規則性が見られ、アンタレスは
不規則的と言われます。北極星の様な黄色変光星もあります。これらポラリスまでの7つの星は
星自体の明るさ(大きさ/温度)が変化するタイプの変光星で脈動変光星と呼ばれています。
それらに対して、食変光星と言われるグループがあります。こちらは恒星本体の明るさや大きさが
変わるわけではありません。連星関係にある恒星同士が共通重心の周りを回る際に互いの光を
遮る事によって、見かけ上の明るさ(2星の合成光度)が変わるタイプの変光星のカテゴリーです。
その為、連星系でも遮蔽の位置関係に無ければ、星の明るさが変わる事もありません。
食変光星で有名なのはペルセウス座β星のアルゴルでしょう。食変光星にはアルゴル型変光星
なる分類もあります。アラビア語で悪魔やグール(食屍鬼)の頭を意味するそうです。アルゴルは
二等星ですが、その変光性からか?…ギリシア神話ベースの西洋の星座でも特異な位置を占めて
います。勇者ペルセウスの手に握られたメドゥーサの首の位置に輝くのがβ星アルゴルです。
ご存知の様に、メドゥーサはギリシア神話では怪物:ゴルゴーン3姉妹の末妹です。ペルセウスは
メドゥーサ討伐の帰途に海獣ケートスから生贄の王女アンドロメダを救出、二人は夫妻となります。
その王女アンドロメダの母がカシオペヤで父がケフェウスです。この4人は全て北天の星座となって
います。メドゥーサ討伐の際に彼女の血から生まれたペガススや海獣ケートスの星座もあります。
鯨類をCetaceanと呼ぶのはケートス:Kētos:くじら座から…とも言われます。このくじら座の心臓付近
に位置するのが脈動変光星ミラです。歴史上最初に識別された変光星であるとされ、ミラ型変光星
と言うグループも存在します。ラテン語で 「不思議な」 を意味するMiraからの呼称だそうです。
食変光星≒連星と言えそうです。これは未だ実証中の仮説らしいのですが…肉眼で見える恒星の
半数以上が連星である可能性が示唆されています。また、恒星のうち少なくとも約1/4は連星系で
あると考えられ、連星のうち約1割は3つ以上の恒星からなる多重の連星系と言われています。
連星関係による恒星の変光現象には食変光と脈動変光がダブっているケースも存在します。
アークトゥルス・アケルナル・アルタイル・アルデバラン・アンタレス・カノープス・カペラ ・
ケンタウルス座α星・ケンタウルス座β星・シリウス・スピカ・デネブ・フォーマルハウト・プロキオン・
ベガ・ベテルギウス・ポルックス・みなみじゅうじ座α星・みなみじゅうじ座β星・リゲル・レグルス
個人的な知識の範囲ですが、上記の実視:肉眼での1等星21の中で、赤が連星を示しています。
連星でないのは他の8星ですが、或いは観測精度/技術の向上で、また変わるかもしれません。
加えて、太字の4星は惑星系を持つとされています。こちらも将来は増加が見込めそうな分野です。
変光星ミラや前回のオリオン座ζ(ゼータ)星:アルニタクは2連星。北極星:ポラリスを初め、アルゴル、
ケンタウルス座α、リゲルは3連星。わし座アルタイル、しし座のレグルス、ぎょしゃ座カペラは4連星。
春の大三角の一隅:おとめ座のスピカは5連星。二等星ながらふたご座のカストルは…何と!6連星。
カルトルは1.58等、ポルックスは1.14等、2星の名称はそのまま双子座の二人の名前でもあります。
日本でも金目・銀目(ポルックス・カストル)などと呼ばれ、確かに双子星と見えるのですが、実際には
…弟には惑星系、兄は6連星…見た目とはかなり違っている様です。夜目遠目…でもありませんが。