[2021年3月26日]
太陽の見かけ上の明るさは−27等級と言われます。また月:Moonは−17等級だそうです。
星の等級は1段階で約2.5倍の明るさになるので、昼間は星が見えないのですが、超新星や
地球近傍小天体の他に、例外的に昼間でも可視な星があります…それが金星です。火星より
馴染みは薄いかもしれませんが、距離は金星の方が地球に近く、惑星の規模も火星の赤道の
直径が約0.68万?なのに比して、金星は約1.21万?、地球が約1.27万?と、ほぼ拮抗します。
惑星は恒星の光の反射で輝くので、明るいのは太陽に向かっている側:球面の半分だけです。
太陽と惑星と地球の位置関係で、地球から観察できる反射部分の面積が変わります。これは
太陽-地球-月の関係と似ています。但し、地球よりも太陽側にある水星や金星では欠けた
姿しか地球からは見られません。また、明るさは距離の二乗に反比例なので、惑星と地球の
距離(位置関係)も明るさに影響します。地球に近い火星や金星は特に明るさが変わります。
土星 -0.4:最大の明るさ
天狼 -1.46:(おおいぬ座シリウスの漢名)
木星 -2.9:最大の明るさ
火星 -3.0:最大の明るさ
金星 -4.8:最大の明るさ
昼間も裸眼や実視で認識可能なのは-4.0以上の様です。極大の明るさの金星なら昼間でも
視認できる訳です。明けの明星・宵の明星として親しまれている金星ですが、最も明るい時は
朝夕の時間帯を越えても、その白い光を見る事ができそうです。金星の漢名は太白です。
金星は明星・太白・Venusなどと呼ばれ、枕草子254段にも『星はすばる、ひこぼし、ゆふづつ、
よばひ星、すこしをかし』とあります。キリスト教では「光をもたらす者:lux光+fero運ぶ」(羅語)
から、明けの明星(金星)を意味する言葉「ルシフェル:Lucifer」とされました。化学の分野でも
Luciferinは発光素、ルシフェラーゼはルシフェリンが酸化される際の触媒酵素の名称です。
他の神話でも、金星はギリシアのアフロディテ・メソポタミアのイシュタルなど美の女神として
語り継がれてきた訳ですが、夜目遠目笠の内、実際の金星は地獄の様な環境と言われます。
金星の大気は昔は60気圧・400℃などと言われていましたが、最近では90気圧・460℃程度に
上方改定されている様です。太陽からの距離は、地球を1.0auとすると、水星は0.39auで地表の
温度は180℃とされています。金星は太陽から0.72auです。水星より1.85倍も離れている金星の
地表温度が太陽からの距離とは逆に、水星に対して2.5倍以上の高温状態で、気圧に至っては
地球地表の90倍…コレはもう誰が見ても、焦熱地獄/圧力地獄です。
金星の高温・高圧は地球よりも太陽に近い軌道そのものが要因なのではありません。
惑星の反射量(率)を示す指標にアルベド:反射能があります。羅語「albedo」由来の用語で、
元来は「白さ」「白いこと」の意味だそうです。入ってきた光に対する、反射して出ていく光を
比で表し、例えば…光が100入ってきて、反射で32出ていくなら、アルベド0.32(32%)となります。
或る資料では、入射光の総量に対してのアルベドが…地球は0.3、金星は0.9とされています。
金星はその大気で太陽光の大部分を反射してしまっている状態です。今の金星の高温・高圧の
最大原因は96%超と言われる二酸化炭素濃度の様です。これは単に対岸の話ではありません。
最近の研究では、もし創生期の地球に海洋が発生せず、大気中の二酸化炭素が海水や
炭酸塩の形で岩石に吸収されていなければ、想定されるのは二酸化炭素濃度95%以上、
約70気圧の地球環境で、文字通りの姉妹惑星です。これも単に過去の話ではありません。
CO2やメタン…それ等:温室効果ガスの素になる元素の総量は今の地球にも存在しています。
また、金星の高度45km〜70km付近には硫酸の雲が存在し、この硫酸の(雨)粒は下層で分解
されて再び雲層に戻るため、地表に届く事はなく、下降⇒分解⇒上昇を繰り返している様です。
かつての熾天使ルシフェルの堕天した姿が、地獄の魔王サタン…奇妙な符合を感じます。
金星の地形への命名には女神や精霊などの各国・各民族の女性系の名称が採用されており、
日本からも雪女・人魚・乙姫・お多福・和泉(式部)・(与謝野)晶子・(北条)正子・卑弥呼…等など
他にも多くの日本由来の命名があります。科学的には地獄でも、伝統的には女神ですから。