[2021年3月26日]
赤色巨星の代表格:ベテルギウスの光度が下がっているそうです。言われてみれば、まったくその通り
…なのですが、安直に薄い雲や靄などの大気の影響だろう…と自己完結していた事を恥じています。
十数年前から光度が下がっている情報には接していたのに、現実とリンク出来ていなかったワケです。
平素、在籍生に注意している様なBonehead_Play線上の失態でした。テストでの失点の主因です。
ベテルギウスは自体の大きさを変えるタイプの脈動変光星です。膨張と収縮を繰り返している状態です。
その質量は太陽の約20倍で、半径が太陽の950倍〜1000倍で脈動変化しているとされています。
一等星は…最も明るいシリウス(-1.46等級)から、最も光度の低いレグルス(1.4等級)までの21個です。
従来のベテルギウスの変光:1.3〜0.0(平均0.5)が、最近は1.5等級⇒40%程度になっている様です。
恒星中22番目に明るいのはおおいぬ座のアダーラで1.5等級、23番目がふたご座カストルの1.58等級で、
アダーラ以降は二等星ですので、現況のベテルギウスも二等星相当の光度と言う状態です。
ベテルギウスが翳る原因としては二つの見地がある様です。我々の太陽の活動にも極大期や極小期が
ある事は知られていますが、ベテルギウスは肉眼でも判別できる脈動型の変光星です。複数の暗化要因
の重複で、観測史上でも稀な極小変光期に入っているのではないか?…との考え方が一つ目です。
そして、もう一つは超新星化説です。近々…大爆発を起こすのでは?…と言うものです。
尤も、ベテルギウスの爆発自体は天文学上では既定の路線の様です。今回の光度低下とは無関係に
早晩起こるものと想定されています。学者の関心は既に爆発の有無ではなく、それが何時起こるか?で…
一万年後かもしれず、それは今夜かもしれないそうです。超新星爆発と呼ばれる現象です。
1572年11月にティコ・ブラーエによって観測され、記録が残されたティコの星(カシオペヤ座)の発見に際し、
stella nova:新しい星と言う用語が導入された様です。現在、stella novaは新星と言う概念で使用され、
supernova:超新星とは異なる現象を指していますが、novaは新しいで、stellaは星の意味です。
また、1054年の超新星は中国の『宋史』「天文志」では突然に現れた明るい星⇒客星として記録が残され、
23日間は昼間でも確認できたそうです。この客星記録は藤原定家の日記『明月記』にも引用されています。
この超新星爆発の残滓は現在のかに星雲:M1(Messierカタログ?1)と同定されています。かに星雲の名は
その拡散具合が地球からはカニの姿に似て見えるからで、星座としてはおうし座の角端に近い位置です。
地球とベテルギウスの距離は約640光年以上離れているとされています。光速で640年もかかるも距離は
とてつもなく遠方なワケですが、宇宙のスケールで考えると、実はそんなに遠い恒星でもなさそうなのです。
例えば、カシオペヤ座のティコの星は凡そ9000光年程度で、かに星雲が約7000光年とされています。
観測史上最初の記録は後漢書に残る西暦185年の記事で、距離は約3300光年と…矢張り1桁違います。
他のスーパーノヴァ例を調べても、より遠方の記録ばかりです。仮にベテルギウスが超新星化した場合、
それは現時点では史上最も近距離の爆発例となる事に間違いありません。
スーパーノヴァで恐ろしいのはガンマ線バースト(gamma-ray burst:GRB)と呼ばれる現象です。恒星爆発に
伴い強烈なガンマ線放射が起こります。この時のガンマ線の威力は猛烈です。超新星爆発の当該恒星から
半径5光年内の惑星表面に住む生命体は絶滅し、何らかの生物的被害は半径百光年近くに及ぶそうです。
ベテルギウスのGRBは距離的には地球のオゾン層へのダメージ程度で、それも深刻なものでは無いだろう
…との予想が大勢です。しかし、人類の有する知識はその対象が地震でも気象でもCO2でも天体現象でも
足りていないのが現実です。自然現象への科学的データの蓄積として、100年とか200年程度の観測では
どうやらスパンが短過ぎる…という程度の自覚は持っておいた方が良さそうです。
例えば、当のベテルギウスとの距離も、それまで定説となっていた430光年±という推定距離が
大幅に改められ640光年±に修正されたのは2008年の事です。