[2021年3月26日]
太宰治の短編小説:『走れメロス』は著名な作品ですが、
その最後には「古伝説とシルレルの詩から」との記述が残されています。これは…
走れメロスが古代ギリシャの伝承とシルレルの詩を基に創作された事を語る部分です。
シルレルまたはシルラーとはドイツのヨーハン・クリストフ・フリードリヒ・フォン・シラー
の事で、彼は詩作・歴史学・作劇・思想家と多方面で業績を残したドイツ古典主義の
代表的な人物です。同時代人であるゲーテと並び称される存在と言われています。
ドイツ中部の文化都市:ワイマールにはゲーテとシラーが並んで立つ像が今も残ります。
彼らの像は劇場広場と呼ばれる所に立っています。ここは世界遺産の一部として
ワイマールとデッサウのバウハウスとその関連遺産群の中に登録されています。
像が示す様に、ゲーテとシラーには面識も交流もあった様です。彼らの活動期は日本では
寛政期頃です。偶然ですが、1759年11月に生まれたシラーから10ケ月早い同年の1月に
江戸城内の田安家に誕生したのが寛政の改革の中心であった松平定信です。
劇作家でもあったシラーは自身の思いや考えを或いは劇中で代弁させているのでは?と
勘繰りたくなる様な個所も個人的には幾つか覚えがあります。
愚者相手では神々自身さえ太刀打ちできない…『オルレアンの乙女』
勇敢な男は自分自身のことは最後に考えるものである…『ヴィルヘルム・テル』
大いなる精神は静かに忍耐する…『ドン・カルロス』
また、他の語録を挙げると…
学問は、ある人にとっては神々しい女神であり、
他の人にとってはバターをくれる有能な牝牛である。
人間は一人一人を見るとみんな利口で分別ありげだが、
集団をなせばたちまちバカが出てくる。
人は幸運の時には偉大に見えるかもしれないが、
真に向上するのは不運の時だけである。
理科の生物の分野では…進化は辺境から起こる…と、されるそうです。
また、上記:シラーの言を借りれば、真に向上するのは不運の時だけ…だそうです。
さりとて…辺境や不運にあるもの全てが進化し、向上したか?…と問われれば、
その答えは当然、全肯定でも全否定でも無い事は衆目の一致するところでしょう。
ニュアンスは異なるかもしれませんが、次記の様な先人の言葉も残されています。
『挫折を経験した事がない者は、何も新しい事に挑戦したことが無いということだ。』・
『困難の中に、機会がある。』…ご存じの方も多いと想います。アインシュタインです。