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Andante (アンダンテ) 
音 羽 教 室 1:1個別指導専科

[2021年3月26日]

34号:放課後の豆知識;34…「菌」と「ウイルス」

】を漢和辞典で引いてみたら、?きのこ・タケ、?カビ・細菌・ばい菌・バクテリア、?タケノコ・・・でした。
「囷」+「艸」でですが、意符が草冠で、音符が。囷は「囗」+「禾」で、「」は囲いで、「」は穀物
表し、「囷」は米蔵穀物蔵を意味する文字で、「キン」の音です。これらの事から「菌」の文字が示すのは
穀物などの倉庫の様に傘の様な形状を持っているキノコの事だそうです。

「菌」に対して、【】は榎茸・椎茸・松茸・・・の様に使われますが、この用法どうやら日本に限定的で、
本来の意味では、茸茸(ジョウジョウ)・蒙茸(モウジョウ)・鹿茸(ロクジョウ)などの様にキノコとはあまり
関連の無い文字です。「茸」は草が茂って入り乱れている様子を表す文字で、他にシカなどの袋角
指す用法例が上記の鹿茸です。

さて、【】のベーシックな分類ですが、簡易な大別では・・・

?:菌類(真菌類:菌界:Fungi)⇒【キノコ・カビ】などの真核生物で、その大部分は従属栄養生物

?:細菌(Bacteria)⇒【大腸菌・納豆菌・シアノバクテリア】等の原核生物細胞膜(エステル型脂質)を持つ
                                         (腸内細菌・発酵細菌・病原細菌…など)

?:古細菌(Archaea)⇒【高度好塩菌・メタン菌・好熱菌】等の原核生物細胞膜(エーテル型脂質)を持つ
               (嫌気・高温・好塩・好酸…など、極端な環境に生息する種が多く、細胞壁も独特)

は上記の様に区別される様なのですが、生物・生命としての特性である【自己増殖】能力を持ちます。
対して、ウイルスは細胞ではなく、タンパク質のとその内部の核酸からなる粒子とされています。

細胞壁や細胞膜を持たず、ウイルスだけでは繁殖増殖も行えない。他の生物の細胞内に感染して初めて
増殖(自己複製)が可能となる。逆に言えば、殆どのウイルスは【タンパク質の合成・自己の複製】に必要な
酵素の遺伝情報を持たず、感染先の宿主細胞の持つタンパク合成機構・代謝・エネルギーなどを利用し、
宿主の細胞にウイルス本体のDNAまたはRNAをもとに、その複製を行わせる事でしか増殖できません。

生物と言うより、の中に遺伝情報だけを持つ粒子がウイルスで、他人の褌(細胞)で相撲を取る訳です。
ウイルスは共通構造として、ウイルス核酸殻(カプシドを構成するタンパク質分子から出来ています。
カプシドと呼ばれるタンパク質の外殻と、その中の核酸…これだけです。核酸カプシドヌクレオカプシド
と呼びます。ヌクレオカプシドの形:外見は各ウイルス毎に固有の形状を持つと言われます。

ウイルスの中にはヌクレオカプシドの更に外側にエンベロープと言う膜状の構造を持つ種類があります。
エンベロープは大部分が脂質から出来ている為、エタノールや有機溶媒・石鹸などで破壊する事が可能で、
一般にエンベロープを持つウイルスは消毒用アルコールや界面活性剤などでの不活化が比較的に容易と
言われています。強いて例えるなら、油でギトギトの皿やフライパンに洗剤を垂らしてみたら?…ですが、
ウイルスの不活性化と食器やフライパンを洗剤で洗う事を比べても、ソレは安直と言われるだけですね。

例えば、ノロウイルス(ノーウォークウイルス)はエンベロープ持たない構造です。60℃で30分の過熱でも
感染性が残るそうです。感染力の喪失には75℃以上で、1分間以上の加熱を要する…とされています。
75%程のエタノール溶液では不活性化できず、過熱と洗浄が有効な様です。乾燥した常温下でも8週間の
感染力が確認されており、10〜100個程度の少数のウイルスが侵入しただけでも発病が懸念されます。

しかし、ノロウイルスと異なり、コロナウイルスエンベロープ持つウイルスなので、エタノールでの消毒、
或いは石鹸・洗剤などで、ウイルス最外部分:エンベロープの脂質を壊し、不活性化が可能とされています。

新型コロナウイルスは確かに厄介な粒子ですが、約100年前に米国から拡散したと言われるスペイン風邪
の頃に比べて、現在は情報の量も質も治療レベルでも雲泥の感があります。理科や生物・化学の教科書に
コロナやノロは載っていないかもしれませんが、有機の知識細胞の構造等は学校で学ぶ事ができます。