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Andante (アンダンテ) 
音 羽 教 室 1:1個別指導専科

[2021年3月26日]

37号:放課後の豆知識;37…【得手】⇔【苦手】

かつての家庭教師系の仕事をしていた頃の或る生徒の例からです。

当初のリクエストは『理科が苦手』との事でしたので、週1回でS塾のフォローが始まりました。
が、指導する端から身に付く感触で、どこが苦手なのか?…さっぱり判りませんでした。
指導開始から間も無く、理数系の指導に加え、国社系のフォローの要望も頂き、
入試まで週2回の指導になりました。

サンデー・ショックの年で、結果は浦明⇒立女⇒雙葉⇒中等部と連勝し、慶應に進路を決めた…
と、記憶しています。こんなに成績優秀なのに、何故?理科が苦手だったのか…が疑問で、
指導が始まって暫く経った頃、生徒本人に訊ねた事がありました。

答えは呆れたシンプルさで、S塾の『理科の先生が嫌い だったから』…でした。素地が優良でも、
授業中に理科講師の顔を見ない様にしていたから、知識・技術の理解・定着にムラが出たのでしょう。

これは笑い話で済む昔語りかもしれませんが、もしも…あのタイミングで誰かが彼女の理科の補填を
行っていなければ、その後は?…と考えると、そうそう笑ってばかりもいられません。
得手苦手は瑣末な事でも分岐し、その発端を潰す事が出来れば、その後の展開が変わる事もあります。

彼女のケースでは両親が彼女の可能性を信じ(期待し)、家庭教師に相談した事で、その後の選択肢の
幅を削らずに済みました。難関中学への連続合格は生徒自身のスーパー・ゴールだった訳ですが、
絶妙なパスを出した親側からのファイン・アシストがあればこそです。

目の前の現状を是とせず、不振の発端を発掘修正する事で、より大きな成果をあげる生徒には、
彼女の前後にも毎年の様に出逢って来ました。その根底には家庭側の理解があった訳です。

他方、期待や干渉が過多で潰れて行くケースも見て来ました。
最初から見切りを付けて、否定や強制ばかり…なんて事例もありました。それらの場合の多くでは、
その萌芽期やその端緒として、無理解思い込みの様な視野狭窄的な蠢動を否定できません。

不得手や苦手を克服し、失点を防ぐには修正力向上欲が欠かせません。
また修正には自省と言う自己否定を容れるメンタル面のキャパが求められます。
敗因を直視できる内面の成長が無ければ、自分本位では努力を重ねている積りでも、
そもそもの方向が間違っていては、得点には至らず、合格にも届きません。

論旨に戻ると、【得手・苦手(好き・嫌い)は瑣末な事でも分岐する】…です。
最悪なのは、失点が多い⇒得点が伸びない⇒苦手感の増殖⇒放棄…の流れです。
前記の親側のファイン・アシストに対比して・・・ここでは、オウン・ゴールも頻発している様です。