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Andante (アンダンテ) 
音 羽 教 室 1:1個別指導専科

[2021年7月3日]

64号:2021年も残り半分

2021年も折り返し地点を過ぎました。ふと、ここ数年を振り返ってみて、
奇妙な符合(?)を感じました。例えば、令和元年は亥年、野生のイノシシ
さながらの気まぐれな天災…取り分け、颱風に翻弄された年でした。

2019年:令和元年の亥年天災の年でした。
2020年:令和二年の子年パンデミックの年でした。
2021年:令和三年の丑年の今年…特に後半はどうなるのでしょう。

ネズミ(鼠・子)は「小さいもの」と「広がるもの」の喩えとして引かれます。
大山鳴動して鼠一匹・窮鼠猫を噛む・鼠窃・鼠賊・鼠輩…等は「小さい」例で、
ねずみ算・ネズミ講 ・城狐社鼠・鼠相場…等は「広がる」方の例と言えそうです。

黒死病と呼ばれたペストも、かつてはネズミが原因とされていましたが、実は
ネズミ、イヌ、ネコなどを宿主とし、ノミが媒介するペスト菌に由来するものでした。
アレクサンドル・イェルサン北里柴三郎により、その原因がペスト菌と特定され、
ネズミの汚名は晴れました。2024年度予定の新千円札の肖像はその北里博士です。

対して、ウシは「遅」や「鈍」のイメージで語られる事が多い様に感じます。しかし、
牛歩・鈍牛はその反面として、古くから「鎮静」や「確実」とも重ねられてきました。
後手後手のコロナ対策にも何か意味があって欲しい…と願わずにはいられません。

また、今!最も期待されているワクチンという名称はラテン語のVacca雌牛
由来するものです。世界初のワクチンである天然痘ワクチンが雌牛から採られた
事から名付けられました。英国の医学者エドワード・ジェンナーの功績です。

和暦で言えば寛政十年:西暦1798年、ジェンナーは天然痘への予防療法として
『牛痘の原因と効果についての研究』を刊行して種痘法を広く公表しました。
有史以来、人類に対し猛威を振るってきた天然痘は、このジェンナーの種痘法に
より、1977年を最後に地球上の自然界から根絶されました。

天然痘撲滅は1958年のWHO総会でのソ連の生物学者ヴィクトル・ジダーノフ
提案により、全会一致で「世界天然痘根絶決議」を可決し、その実施が始まりました。

1977年のソマリア人青年を最後に自然感染の天然痘患者は報告されておらず、
3年後の1980年5月8日、WHOは天然痘根絶宣言を発するに至りました。現在、
研究用の実験施設内のサンプルを除いて、自然界に天然痘ウイルスは存在しない
とされています。天然痘は、ヒトへの感染症で、人類が根絶できた唯一の例です。

今の新型コロナウィルスと同様、天然痘ウイルスもヒトからヒトへ感染するものです。
感染の母体=感染媒体です。移動能力も自己増殖能力もウィルスにはありません。
その特性を理解し、対応策を推進した実行力と徹底性を現代の我々も学ぶ or 真似る
べきかもしれません。他の生物と異なり、人は知識としての歴史を持つ種ですから。