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Andante (アンダンテ) 
音 羽 教 室 1:1個別指導専科

[2021年9月23日]

72号:なんとなく…低気圧

台風(颱風・颶風)や熱帯低気圧・温帯低気圧など…幾つか、低気圧にも種類があります。
台風と熱帯低気圧は基本的に同じ種類ですが、勢力が異なります。風の強い方が台風です。
最大風速が「34ノット:風力8」以上の熱帯低気圧が台風のカテゴリーに入ります。

海里(=:nautical mile )は長さの計量単位で、元々は地球上の緯度1分(1度の60分の1)に
相当する長さを指し、1852 mです。この1852 m=1海里を1時間で移動する速度が1ノットです。

34ノットは1852m×34=62968m毎時ですので、÷3600で毎秒に直すと約17.5mとなる…ハズ
なのですが、多くの文献には「34ノット、つまり毎秒17.2 m以上」…の様に記されています。
そこで、もう一つの基準である「風力」で調べると、風力8は【疾強風(しっきょうふう)】の名称で、
風速「17.2〜20.7m/s」の状態を指し、《風に向かって歩けない》状況や程度を示す数値の様です。
風力は【0〜12】までの13階級【平穏〜颶風】で、風の強さを表す尺度…風速の目安です。

熱帯低気圧の中でも、殊に風が強い例を台風と呼ぶ訳ですが、では熱帯低気圧と温帯低気圧
との区別はどこにあるのでしょうか。先日の台風から変わった温帯低気圧も、風速は20m 毎秒
とか毎秒30 mなどの報道がありました。毎秒20 mなら時速72 ?で、ノットで約38.9の計算です。

熱帯低気圧と温帯低気圧の区別で最も簡単なのは天気図を見る事です。熱帯低気圧には前線
ありませんが、温帯低気圧には温暖前線寒冷前線があります。天気図上の曲線や波線の片側
半円が等間隔に並んでいるアレです。半円:温暖▲:寒冷です。因みに、ほぼ東西方向に
伸びた前線の上側に半円下側に▼が交互に並んでいるのは停滞前線です。南側からの暖気
北側に向かっているので、半円は前線の北側に突き出る様に並びます。反対に、北からの寒気
南に向かって流れているので、は下向きです。

寒冷前線温暖前線でも、半円の向きは寒気暖気の流れる方向を示しています。
温帯低気圧は寒気と暖気の温度差を発生源としています。対して、熱帯低気圧は前線を
伴いません…熱帯低気圧の原動力:エネルギー源は暖かい海洋から蒸発する水蒸気です。
その為、熱帯低気圧や台風は、温帯低気圧の様に陸地(大陸)上空では発生しません。
寧ろ、上陸したり、冷たい海域に至り、付近の水蒸気の量が減れば、勢力を落とします。

日本付近を通る台風は、北進するにつれ、周辺の空気との間に温度差を生じます。台風域内の
暖気が周囲の冷たい空気と混ざり始めると、台風としての性質は次第に薄まり、勢力を落として
熱帯低気圧になったり、徐々に前線を形成して温帯低気圧に変わります。この際、温帯低気圧に
移行した元台風や元熱帯低気圧は前線によって、より広範囲に影響を及ぼす危険性もあります。

最後に蛇足となりますが、台風➡typhoonの英訳に関してです。幾つかの説がある様です。
先ず、ギリシア神話の怪物テュポン:Typhon(ツィフォン)。次に、アラビア語で嵐を意味するTufan
また、Typhoon(英語)の古いスペルはTouffonだったとか…他にも由来譚が残されている様です。
明治の末頃、岡田武松氏により颱風という言葉が生み出され、その後1956年:昭和31年から
台風と表記される様になった…事は大筋で一致している様です。

これはあくまでも個人的な記憶なのですが、前出:岡田氏の孫に当たる方のお一人は英語の私塾
を開いており、そこで耳にした由来は上記の幾つかの説の中にはカウントされていないものでした。
もっとシンプルな発想からの英訳だった様な気がするのですが、或いは勘違いかもしれません。


1904(明治37)年、中央気象台の予報課長に抜擢された岡田氏は、翌1905(明治38)年5月27日に、
同課長として対馬海峡沖の天気予報を出しました…天気晴朗ナルモ浪高カルベシ。この時の
同氏が発した予報は日露戦争における日本海々戦(1905年:明治38年5月27日〜28日)に際して、
連合艦隊から大本営宛に打電された電報:「敵艦隊見ユトノ警報ニ接シ聯合艦隊ハ直ニ出動、
之ヲ撃沈滅セントス。本日天気晴朗ナレドモ浪高シ。」
の典拠ではないかと言われています。