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Andante (アンダンテ) 
音 羽 教 室 1:1個別指導専科

[2021年11月1日]

76号:宇宙の寿命

「未来永劫」とか「終末の劫火」などに使われるの文字は長い時間を表すと言われます。
「未来永劫」の「永劫」は「永遠」とほぼ同意義に使われ、「劫火」は世界が滅びる時に起こり、
それは世界を焼き尽くす大火を指し、「業火」と書かれる事もある様です。

古代インドの哲学的な思想は仏教にも反映されており、そこでの「劫」とはインドの循環宇宙論での
1つの宇宙の長さ」を表す単位としても用いられる様です。そして、1つの「永劫」4つの「劫」から
構成されるそうです…1つの宇宙の始まりの時期を「成劫:じょうごう」、その後の安定期を「住劫:
じゅうごう」
、そこから崩壊に至る時期を「壊劫:えごう」、最終的に宇宙が壊れて存在しない「空劫:
くうごう」
までが1回の永劫のサイクルで、宇宙は何度もこの永劫のサイクルを繰り返す…とするのが
インド哲学の循環宇宙のモデルの様です。「劫:ごう」は「こう」とも発音されます。

他にも、法蔵菩薩が阿弥陀如来になる前に行った思惟の長さは「五劫」であるとされますが、これは
落語『寿限無:じゅげむ』でも「五劫(ゴコウ)のすり切れ…」と、その名前の一部として語られています。
「思惟」は「しい」または「しゆい」と音読みし、「考える事」・「思う事」・「思いや考えを廻らせる事」で、
有名なところでは中宮寺(奈良)・広隆寺(京都)の弥勒菩薩半跏思惟像などが挙げられます。
「半跏」は「結跏」の略式の坐法で、一方の片足を他の片足の腿の上に組んで座る様子を指します。

永劫の各段階にはそれを象徴する色があり、成劫:白住劫:赤壊劫:青空劫:黒…とされて
いるそうですが、では仮に循環宇宙説を採用した場合の「1永劫」の長さとはどの程度?でしょうか。
…このテーマに関して、以前にささやかな出来事があったそうです。

皆さんは「梵天の塔」または「ベナレスの塔」と言うものをご存じでしょうか。
立体パズルゲームの「ハノイの塔」もしくは「ルーカスタワー」の大規模版とお考え下さい。

 ・ハノイの塔は、3本の杭と、中央に穴の開いた大きさの異なる数枚の円盤で1セット。
 ・最初、全ての円盤は1本の杭に、小さい円盤が上になる様に順に積み重ねられている。
 ・円盤は一回に一枚ずつ、どれかの杭に移動させる事ができる。
 ・小さい円盤の上に大きな円盤を乗せる事はできない。

ハノイの塔は、上記のルールに従い、最初の杭にはまっている円盤全てを、他の杭への移動を完了
させた時点でゲームオーバーとなります。数学的には、N枚の円盤全てを移動させる為は、最小で、
「2のN乗−1回」の手数を要する…とされています。

ハノイの塔は、フランスの数学者エドゥアール・リュカが1883年に発売したゲーム『ハノイの塔』に
ルーツがあると言われます。そのゲームに添えられていたリーフレットには、このゲームの由来が
記されていたそうです。

曰く…インド:ガンジス河畔のベナレス(ヴァーラーナシー)にある仏塔には「梵天(ブラフマー)の塔」が
納められている。それは、青銅の板の上に、3本のダイヤモンドの針が立てられており、その内の
1本には、各々大きさの異なる64枚の純金の円盤を、大きい円盤を下に、順に積み重ねてある。
(上記のルールに則って)この塔の全ての円盤の移し替えが終わった時に、世界は終焉を迎える…。

…の様な類の事が記載されていた様です。前記した様に、3本の棒を巧みに使えば、膨大な手順を
費やして、64枚の円盤全てを他の棒に移動させる事は可能とされています。上記の式に従うと…
64枚の円盤を移動させるには、(2の64乗 − 1)回 = 18,446,744,073,709,551,615回…
円盤1枚の移動を1秒で行ったとすると…5845億を必要とします。

現代宇宙論のビッグバンは、今から凡そ138.2億年前と計算されてるそうですので、仮に日本人の
平均寿命を87歳とすると、現宇宙は人類年齢では2歳…となってしまいます。勿論、このリーフレット
に記載された由来譚は創作の産物に過ぎなかったのですが、大真面目に取り上げてしまった書籍
などもあったそうです。小さな嘘はスグにバレるが、大きな嘘は露見しない…でしょうか。

今後の宇宙がどうなるのか?は…現代の物理学でも、未だ明確に解明されていない様です。
前漢武帝の頃、淮南子と言う一種の辞書的な思想書が編まれました。そこには『宇宙』の
意味(?)が記されているそうです。」とは天地四方」とは古往今来空間時間を表す
言葉が『宇宙』であると解説されている様です。