[2021年11月21日]
温暖化の問題がクローズアップされています。温暖化の現状は素人には解り得ない部分も
多く…とは言っても、世界の潮流が温暖化回避に向かう中では、危機感を抱いてしまいます。
タイトルの【氷床】は温暖化パラメータの1つです。
現在、その氷床の存在が確認されているのは5つですが、既に2つは融けてしまっています。
1:スカンジナビア氷床
アイルランド北部やイギリス北部からスカンジナビア半島を経てロシア西部に至る地域。
2:ローレンタイド氷床
カナダや米国の北半分を覆っていた。五大湖や氷河湖、Central_Parkの迷い石…はその痕跡。
上記が既に失われた氷床です。勿論、現状の温暖化との直接の関係はありません。
3:パタゴニア氷床
かつては南米大陸南端のパタゴニア一帯を覆っていた。
パタゴニア氷床と現存の南パタゴニア氷原には深い関連性が推測されます。
南パタゴニア氷原からは48の氷河が流れ出ているとされ、それらの氷河の内、
有名なペリト・モレノ氷河を含む3本の氷河では地球温暖化…にもかかわらず、
何故か氷河の後退が確認されていません…希例の氷河と言えそうです。
4:グリーンランド氷床
グリーンランド島の80〜82 %を覆い、仮に融解すると、7〜7.2メートルの海面上昇をもたらす。
5:南極氷床
地球表層の約90 %の淡水がここに固定されており、融ければ、海面上昇の推測値は約61m。
南極もグリーンランドも、近年の温暖化で、淡水の固定量には減少傾向が見られる様です。
また、氷塊の減少は海面上昇だけをもたらす訳ではありません。北半球のグリーンランドと
南半球の南極は、その膨大な氷塊で地球を冷やす役割を担っています。逆に言えば、氷が
一旦大量に融け始めると、融解→気温上昇→融解→気温上昇…と言う負の連鎖を呼びます。
かつて大昔の地球で、類似の事態が発生していた痕跡が確認されているそうです。ただし、
その時の主役は【水:氷】ではなく、メタンの昇華でした。今から5500万年前頃の事だそうです。
現時点の海底にも大量のメタンハイドレートが埋蔵されており、気体化したメタンには同じ量の
二酸化炭素の20〜70倍前後の温室効果があるとされています。ノルウェー沖の海底には
約800個の穴がメタンハイドレートの5500万年前の昇華の痕跡として確認されているそうです。
この直径1〜5?程度の噴出口跡は現在ではノルウェー沖以外でも発見されています。
粗密はあっても、メタンハイドレートは世界の海底に分布している様です。メタンハイドレートは
低温かつ高圧の条件下でメタン分子が水分子に囲まれた、網状の結晶構造をもつ固体ですが、
その固化条件が崩れれば昇華してしまう訳です。一度、大量のメタンが大気中に解放されると、
氷塊の例と同様に、地球規模でドミノ倒し的に気体化→温暖化が進行してしまいます。
メタンハイドレートだけで温暖化が進行したとは考え難いのですが、大きな一誘因との考察は
無視できません。高温化の結果、ユーラシアで進化を始めていた哺乳類は全世界的な拡散を
強め、植物界では針葉樹森に代わって広葉樹森が範囲を拡げ、樹冠形成と母指対向性獲得の
遠因になったとされ、先の温暖化が無ければ、霊長類の今の展開も無かったかも知れません。
この温暖化の進行から数千年の間は地球上に大規模氷塊・氷床の無い状態が続き、平均気温も
現在より6〜9℃も高かった様で、その収束にはその後に数万年を要したそうです。また、メタンの
大量解放は、単に温暖化だけが原因とは限りません。大規模な海洋後退が起これば、海水面の
低下が想定されますが、大陸棚付近の海底面に分布しているメタンハイドレートには減圧となり、
昇華を促進されてしまいます。隆起・沈降の地殻地盤の運動に依らない海退は氷期に起こります。
高温でも低温でもメタンハイドレートは解放される訳で、大切なのはやはりバランス…の様です。
二酸化炭素にしても高温時には大気中への拡散が進み、低温時ならば海水への溶解を促進
されます。温室効果ガスの極端な不足は約6億年前に全地球を氷結させたと言われています。
「過ぎたるは猶ほ及ばざるがごとし」、中庸こそ至徳と言うべき…でしょうか?