[2022年1月14日]
【白夜】と書いて「びゃくや」または「はくや」と読みます。古くは「はくや」が優勢だった様なのですが、
昭和40年代の『知床旅情』が流行歌として大ヒットした事で、その歌詞にある「びゃくや」と形勢が
逆転してしまったのではないか?…と言われています。漢字の音読みには、呉音・漢音・唐音など
がありますが、「白=びゃく」は呉音・「白=はく」は漢音です。漢音は主に遣隋使・遣唐使によって
輸入されましたが、呉音はそれ以前の渡来人由来や仏教用語起源とする説があります。
「びゃく」でも「はく」でも『白い夜』です。ドストエフスキーの代表作の一つに邦名『白夜』があります。
ロシア語でのタイトルは【Белые ночи :ベーラヤ・ノーチ】、直訳で「白い夜」だそうです。
ドストエフスキーの『白夜』はサンクトペテルブルクの白夜を舞台とした、孤独な青年の淡い恋心を
描いた短編小説なのですが、原作としては10回以上も映画化されているそうです。有名なのは、
ヴィスコンティの『白夜』(伊語: Le notti bianche / 仏語: Nuits blanches)でしょうか。
さて、白夜現象は深夜でも暗くはなりきらず、或いは日没後でも薄暮の状態が継続する様子を
指します。夏至前後の極地付近で起こります。北半球では6月下旬、南半球では12月下旬です。
北緯や南緯で、66.6度を越えた地域では水平線や地平線に太陽が沈まなくなります。
地球の自転軸は公転面に対しての垂直軸から、約23.4度程傾いています。この角度が、夏至や
冬至・四季や白夜を生んでいます。逆に言えば、自転軸の傾きが0度に近ければ、季節変化は
発生しない事になります。それぞれの地域や緯度によって、1年中同じ気候が続くハズです。
1日を通して、地平線/水平線から日が昇らなくなるのは、90度マイナス23.4度以北の冬となります。
北緯66.6度以北の地帯では、全く太陽の昇らない日があります。北極と反対側の南極付近では
反対の季節に同様の事象が起こる訳です。この状態:白夜と反対の現象を【極夜】と呼びます。
極夜は夏至と反対の冬至の頃の極地付近で見られる現象です。
白夜と極夜の共通項は高緯度になるにつれてその継続が長期化する事です。長いところでは
極夜が4ヶ月も続きます。但し、前出の知床半島は北緯で44度±なので、白夜にはなりません。
北緯でも、南緯でも、極夜・白夜の目安は66.6度となります。日没に至らない状態を日本語では
白夜と表現しますが、英語ではMidnight Sunと言う様です。太陽に注目した見方でしょうか?
…対して、極夜の英訳はpolar night…こちらは全くの直訳と言っても良さそうです。
白夜は1日を通して日照があるため、海中の植物性プランクトンには恩恵をもたらし、それを餌と
する動物にとっても繁殖の糧となります。極夜では、この事情が逆転し、過酷な環境となります。
暗く寒くひもじい極夜ですが、しかし極光の観測には最適とされています。
極光=オーロラは、南極・北極の両極点近傍ではあまり観測されません。地磁気の緯度で凡そ
60度から70度の辺りでオーロラが多く発生するため、この領域をオーロラベルトと呼ぶ様です。
地球の南北磁極を取り巻くドーナツ状の領域でオーロラは主に発生していると観測されています。
但し、地図上の極地と地磁気の磁極は一致していません。北半球を例に採ると、地図の北極点
と地磁気の北極なら、2010年のデータによると、地磁気北極は北緯;80.0/西経;72.2…辺りに
あるとされている様です。おおまかな地図上で言えば…グリーンランド島の西側、海峡を隔てた
カナダの最北のエルズミーア島…その北部付近が磁極になる訳ですが、何れにしても、極夜の
条件となる66.6度の緯度地域とオーロラベルトがラップしているには違いありません。