[2022年10月1日]
モンシロチョウは英語ではスモール_ホワイトとかキャベツ_バタフライなどとも呼ばれる様です。
紋白蝶とは言いますが、白いのは翅の地色で、紋自体は黒色か、濃い灰色の様な色でしょう。
強いて言えば、紋黒翅白蝶:モンクロハネシロチョウ…とでも呼べるかもしれません。
もっとも、モンシロチョウ同士では他の個体をヒトと同様に識別している訳でもない様です。
多くの蝶類は紫外線でも外界を視ている様で、例えばモンシロチョウであれば、ブラックライトを
当てると、メスの翅は白く、オスの翅は黒っぽく見え、雌雄の区別がよりはっきりするそうです。
モンシロチョウは成虫であれば、何かの害を及ぼす事は無い様ですが、ご存じの通り、また
その英語名:cabbage butterflyの様に、幼虫時にはキャベツ・大根・白菜・小松菜・ブロッコリー
などのアブラナ科の葉を食害する害虫です。日本のモンシロチョウも奈良期前後の大根栽培の
渡来に伴って移入してきたと言われています。
さて、紋白蝶の幼虫:所謂アオムシはアブラナ科を食害しますが、有毒な害虫ではありません。
卵からの孵化時は毛虫の様な外見ですが、葉を食べ出すと直ぐに体色も緑系になっていきます。
アオムシの護身術は緑色の保護色だけで、天敵としては鳥類とアシナガバチが挙げられます。
脚長蜂はアオムシに限らず毛虫も捕獲し、噛み砕いては肉団子状にして巣に持ち帰り、幼虫の
エサとする様です。アシナガバチはスズメバチ科のハチで、営巣し、女王バチも存在しますが、
個体や巣への加害がなければ、まず刺してこないそうで、蛾・蝶の幼害虫を駆除する益虫と言う
性格も持っています。寧ろ近縁のスズメバチが天敵で、幼虫や巣への被害も確認されています。
アシナガバチと混同されがちなハチにジガバチがあります。ジガバチは巧妙な狩りバチです。
ジガバチは地面に穴を掘って幼虫室と呼ばれる幼虫専用の巣を作った後、幼虫の食料にする
獲物を捕らえて針で麻痺系の毒を注入します。殺さず、麻痺させて、腐敗させずに幼虫の生餌
とする訳です。幼虫室に獲物を運び込み、卵を一つ(種によって複数)産み付けると、メスは巣を
閉じて出ていき、二度と戻りません。 この際、生餌とするのは蛾の幼虫のみと言われています。
ジガバチの由来は巣穴の掘削や閉塞の際に出る振動音が、『ジガジガ(似我)』が、「我に似よ」
と聞こえた事からとの伝承があります。捕獲された蛾の幼虫が親ジガバチの呪文にかかって、
ハチの姿に変じ、巣穴から出てきた様に見えた…その為、似我蜂と呼ばれた…と言う訳です。
孵化の後、4回の脱皮を経て、通常2週間程度で、アオムシは羽化しモンシロチョウとなります。
名の通り白い翅の蝶ですが、「春よりは夏の個体・メスよりはオス」の翅が幾分黄色っぽく見える
個体もいる様です。そこで、モンシロチョウの近縁で、よく似て見える種にモンキチョウがいます。
名の通り翅の色が鮮やかな黄色をしています。但し、紋白蝶の幼虫がアブラナ科を好むのに
対して、紋黄蝶の幼虫はマメ科が好物の様です。紋黄蝶オスの翅は文句無しの黄色ですが、
メスは白色です。と、言っても全個体がシロと言う訳でもなく、黄色い翅のメスも普通にいます。
一見では、白い翅のモンキチョウのメスは、モンシロチョウと殆ど区別が付かない事もあります。
静止状態で観ると、翅の模様の違いは明瞭ですが、飛翔中などの見分けは困難です。2種の蝶
…モンシロチョウとモンキチョウは、【鱗翅目・アゲハチョウ上科・シロチョウ科】までは同じ系統
に属しています。次の「亜科」の段階で、シロチョウ亜科とモンキチョウ亜科に分かれます。
なお、モンシロチョウは早起き(?)で、早朝には葉の上などで、背中向きに尾部を合わせて交尾
を行い、翌日にはアブラナ科の葉裏に黄色く1mm程の産卵を行い、卵は約1週間で孵化します。
お昼時近く、日差しの中を2匹〜数匹のモンシロチョウが幸せ気に群れ飛んでいる光景に接する
こともありますが、これは勝手な思い入れで、仲良しやカップルと勘違いしているに過ぎません。
この様子は、既に交尾を終えたメスが出遅れのオスに付きまとわれ、困っている姿…だそうです。