[2022年11月25日]
前回、バリンガー・クレーターで紹介した同隕石孔への衝突体の速度は毎秒11〜12?でした。
ユカタン半島北部海岸付近のチクシュルーブ・クレーターでは推定速度が20 ?/sとされています。
また今秋以降に活発なおうし座流星群では、流星の速度が30 ?/s程度と推測されている様です。
月や火星・金星への落下・衝突であれば、大気も重力も地球とは異なるので、当然の様に隕石・
流星の速度も地球とは違うのが当たり前です。では、宇宙から地球へ落下してくる隕石や流星が
前段の様にそれぞれに異なる推定速度を持っているのは何故でしょうか。
それは、前回でも紹介した様に、相対的な速度と運動方向に因るものと考えられている様です。
地球に突入・落下・衝突してくる小天体にもそれぞれの運動に伴う固有の速度が考えられます。
対して、忘れてならないのは、地球にも自転運動と公転運動とそれら固有の速度がある点です。
地球上で生まれて生活していると、無意識に天動説的な肌感覚になってしまいますが、地球の
運動は…自転なら赤道付近で概ね時速1671?≒秒速0.464 ?、公転なら約30 ?毎秒の速度
…高速で回転し、超高速で宇宙を猛進しているのが地球と言う惑星の姿です。
流星が地球に進入してくる速度は概ね30〜60 ?毎秒の範囲とされます。数字だけ見ても、地球
の公転時の速度が無関係とは考えられず、むしろ地球の公転速度に流星の移動速度を上乗せ
加算した合計の速度…それを流星の推定速度として考えるべきで、つまりは相対的な速度です。
しかし、この速度で大気圏に侵入してきても、流星は大気との摩擦で燃えて発光している訳では
ない様です。流星の発光は空力加熱の様な物理的なものでなく、大気と小天体の分子同士の
衝突による、分子(或いは原子)のプラズマ化に伴う発光現象として説明されています。例えば…
酸素ボンベを携えて登頂する最高峰エベレストは8848 m≒9 ?
有人実用ジェットの最高速機:ロッキードSR-71(ブラックバード)で実用高度25,929 m≒26 ?
オゾン層(20〜25km±)を含む成層圏が10〜50 ?
成層圏の外側:中間圏が50〜80 ?
中間圏の更に外側:熱圏が80〜800 ? ( ISS:415 ?/最低高度278 km ・ 最高高度460 km )
熱圏の外側には外気圏が上空:約1万?までを包み、その向う側を宇宙空間と呼んでいます。
外側から並べ替えると、宇宙空間⇒外気圏⇒熱圏⇒中間圏⇒成層圏⇒対流圏…となります。
流星の発光は、上に列記した階層では熱圏の下層部:110 ? 〜 90 ?で活発になるそうですが、
上限が120 ?程度、下限は80 ?位とされています。何にしても、成層圏の外側:2倍の高空です。
空力加熱≒摩擦熱を発する程の濃密な大気がその高度には無いので、摩擦発光は起きません。
オーロラは太陽風によるプラズマが地球の磁力線に沿って高速で降下、地球の大気に含まれる
酸素や窒素の原子を励起することによって発光する現象ですが、その高度は80〜200 ?程度と
されています。このオーロラと流星の発光バンドの符合は偶然ではなく、反応:発光に適した高度
…反応が可能な濃度の大気分子量がその高度の大気中に存在している事の示唆と思われます。
前記の通り、流星の発光は上空100 ?±辺りです。殆どの星間物質は成層圏に至らず大気との
反応で消滅します。発光度合いは主に大気圏への進入速度・星間物質の質量に左右されます。
比較的高速で、比較的大きな質量で、比較的入射角の緩やかな場合は、火球として目撃される
ケースも増える様です。逆に、明るい流星でも鉛直的な落下軌道では観測される時間も機会も
激減します。また、それら火球や流星の中で、消滅せずに地表に至った物体を隕石と呼びます。
比較的低空まで物体としての進入が行われた場合、落下もしくは発光中に音響を伴うケースも
出てきます。以前に本頁でも触れた僧旻の「天狗:アマツキツネ」に該当する例となるでしょう。
ロッキードSR-71(ブラックバード:高度24 ?でマッハ3.0)の様な超音速機の超音速飛行時など、
大気中を音速より速く移動する物体が発生させる衝撃波を原因とする、轟音・大音響を指して
ソニック・ブームと呼びます。マッハを単純な速度として捉えるのは難しいのですが、目安として
音速は1秒間に300〜340 m程です。比較すれば、流星の速度は秒速10,000 m以上…単純計算
なら音速の30〜200倍です。隕石の組成・成分や落下条件にも依りますが、発光・音響などの
様々な現象を伴うのも当たり前かもしれません。