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Andante (アンダンテ) 
音 羽 教 室 1:1個別指導専科

[2025年7月12日]

149号:再稿…起承転結は難しい‥

絶句二首 其二
  江碧鳥逾白…江は碧にして 鳥はいよいよ白く
  山青花欲燃…山は青くして 花は燃えんと欲す
  今春看又過…今春 みすみす又過ぐ
  何日是歸年…何れの日か 是れ帰る年ぞ

李白の「詩仙」に対して、「詩聖」と称される杜甫の有名な、しかし「無題」の、五言絶句です。
漢詩の近体詩には絶句・律詩・排律があり、日本では絶句と律詩が盛んでした。1句五文字の
五言と、七文字の七言があり、絶句であれば4句で構成され、律詩であれば2句1組を1聯と呼び、
4聯でひとつの詩を構成する、定型詩に分類されます。

絶句なら4句で、律詩なら4聯で、起承転結を形成します。一句目・二句目に対して、三句目では
上出の杜甫の絶句を眺めても視点が変わっています。そして、これが本家の【起承転結】です。
定家調の和歌にも【転】的な効果を活かした作風は確認出来ます。定家と言えば和歌ですが、
定家の日記:明月記は漢文で書かれています。1180年〜1235年迄の56年の長期に及ぶ克明な
記録とされ、治承・寿永の源平争乱:治承4年から小倉百人一首の頃までが確認できるそうです。

起承転結は漢詩の定型ですが、しかし、この手法を長文や説明文の記述に転用すると、普通は
破綻します。確かに定型は制約ですが、それが定法である為、「転」への親和を助長する様です。

私見に過ぎませんが、普通に説明的な文章を書くのに【転】は恐らく不要です。定められた字数
与えられた制限時間内に、課題文を仕上げるなら、起承結或いは【結承締】が無難です。
課題文は、与えられたテーマに関して、出題者側に対して、意見の提示や説明を目的とする
文章作成が着地点ですから、【転】を用いて論点がブレたりズレたりするのは本末転倒でしょう。

採点系のスポーツには2つの潮流があると聞きます。1つは技の難易度を追求する。
2つ目は技の出来栄え点を狙う。入試や検定にとっての有効な選択はどちらでしょうか。

作文系の課題は採点方式に減点法を採用している例が多い様です。減点法のイメージは、
体操の得点の様に、満点の状態から技の実施状況に応じて点数が引かれて行く方式です。
しかも、体操の様に明瞭な難易度や加点の基準設定を作文系課題には多分望めません。

そこで、作文系課題への対応は失点回避が先決…となる訳です。数式を展開するのではなく、
文章を連ねるのですから、許容範囲は狭くありません。が、慣れに由来する遺失は留意点です。
改行、句読点、接続詞、誤字脱字などが代表例です。課題(テーマ)に対しての準拠度も大切な
項目です。文章の所作や作法が正統的でも、出題に対して見当違いの内容や展開では評価の
対象になりません。却って主旨や主題の把握度での最大級の減点を受けること必定です。

併せて、近年目に付くのが、狭くコアな文字や言葉の使用です。少なくとも今の入試ではPCや
スマホでの受験を殆ど見掛けません。仲間内でしか使わない様な単語や語彙の組み合わせを
誰が読んで、どの様に評価されるのか?…更に、「書く」作業自体に訓練の要る場合もあります。
自身の書いた文章を「面識の無い採点者が読む」…客観的な立ち位置での記述が第一です。

最後に、作文系の課題で留意したいのは『二者択一』系のテーマを与えられるケースです。
AとBのどちらを支持するか?…と問われると、二択のいずれかに依拠した展開に終始して
しまいがちです。しかし、本当に二者択一を出題者側が求めているなら、作文系の課題で
選択を迫るそもそもの必然性が見えて来ない?…とは感じませんか。

極論になりますが、二者択一であっても、作文系の課題であるのなら、AもBも共にOKとか…
両方×的な回答や文章展開でも支障はありません。むしろその種の選択を出題者サイドが
期待していたと推測される様な事例が過去にあった事も付記させて頂きます。

国語・作文・小論文は日本語を土台としていますが、語学の検査ではないと思います。
それは理科や社会や数学の入試問題と同様ではないでしょうか。