[2025年7月23日]
メイン・ベルト…天文やSFに遠い方には耳慣れないかもしれません。要は小惑星の集合帯です。
多数の小惑星が帯状の軌道を形成しているのがアステロイド・ベルトです。アステロイドと呼ぶ
方がメインと言うよりしっくりくる方も多いのかもしれません。
「アステロイド」の命名者はウィリアム・ハーシェルと言う天文学者です。
「星のような」を意味する「asteroid」はギリシャ語の asteroeides に由来しているそうです。
aster は「星」、-eidos は「形」の意で、惑星・恒星・衛星・彗星などと区別する為だった様です。
ハーシェルの業績として、天王星の発見・土星の衛星エンケラドゥスとミマスの発見・天王星の
衛星チタニアとオベロンの発見、更に干渉法の基礎や赤外線の発見など…天文学の巨人です。
メイン・ベルトとアステロイド・ベルトとは、ほぼ同意義の用語ですが、アステロイド≒小惑星で
ある以上、それは火星と木星の間の空間の小惑星帯のみを示す狭義な単語でなくても構わない
…つまり、火星-木星間以外に存在する小惑星帯もアステロイドベルトと呼ぶ事が可能な訳です。
実際、太陽系の外殻:海王星の外側にも小惑星帯の存在はほぼ確実と言われている様です。
名をエッジワース・カイパー・ベルトと言います。メインベルトとの違いは位置だけでなく、準惑星を
多数含んでいる点や、範囲が30au〜55auと推定されている事です。メインベルトの準惑星は1つ:
Ceres (ケレスまたはセレ)だけです。範囲も 2.6〜3au 辺りとの推定です。因みに、【au】とは
太陽と地球の平均距離(半径)を【1au】とした天文学上の距離の単位で、中学生の履修範囲です。
勿論、小惑星帯は太陽系の外縁や火星-木星間に限らず、他の恒星系でも10〜以上の候補が
挙げられています。メインベルトと特に呼ぶのは他の小惑星帯との区別を明瞭化する際です。
ケレスは元々小惑星番号:1の天体でした。それ以前:特に1801年の発見間もない頃は惑星と
すら考えられていたのですが、観測の進展や機器の発達に伴い、小惑星に分類されてきました。
2006年、準惑星:dwarf planet というカテゴリーの新設に伴い、その範疇に収まった様です。
準惑星:dwarf planet の「ドワーフ」とは、ファンタジーなどに登場する人類以外のヒト型生命体:
亜人類:デミヒューマン…ゲルマン語派系統では「とても背の低い(人間)」や「小さきもの」を表す
用法が多いそうです。白雪姫の「7人の小人」はその一例で、小人・矮人・侏儒などです。絵本や
挿絵などでの7人は木こり:森の住人の様な姿も見掛けますが、本来は鉱夫:山が仕事場です。
2006年にドワーフ・プラネットに分類されたのはエリス・ハウメア・マケマケと冥王星の計:5つ、
ケレスを除く4つは太陽系外縁天体のエッジワース・カイパー・ベルト天体です。
準惑星ケレスはメインベルトでは最も大きな質量を有する天体で、球形です。メインベルト内の
全体の質量の約1/3がケレスの質量と推定されており、地球の月の質量の凡そ1.3%と見られて
います。要するに、残りのメインベルトの質量は月の2.6%≒ざっと3%程度な訳です。
今、ケレスの軌道半径を約2.8au とすると、地球の軌道半径が1auなので、1au×2×π=2auπ。
ケレスは2.8au×2×π=5.6auπ。ケレスの通る軌道は地球の軌道の3倍程度の距離となります。
太陽を周回する地球の軌道の3倍の長さの軌道に、総質量で月の3%未満の岩石や氷塊などが
漂っている空間…試しに、想像してみて下さい。多分…おそらく…きっと、スカスカですよね?
現在確認されているメインベルトの天体で1番大きいケレスから12番目のエウロパまでの質量
の合計は全体の6割程と推計されます。その事も併せて考えると、濃密とは言い難い気がします。
しかし、ニュートン力学での物体の運動エネルギーは、物体の質量と速さの二乗に比例するの
ですから、軽微な物体でも宇宙船を貫通する危険性が高い点には留意が不可欠とされます。
SFなどでは、土星の環の様に宇宙空間に岩石や氷塊が密集している設定や描写もありますが、
実際の小惑星帯は大部分が空隙で、メイン・ベルトの外側に打ち出された探査機が小惑星帯を
横断した際にも、これまでに重大な衝突事故を起こした事例は1回も報告されていない様です。
では何故、「小惑星帯」と呼ぶのかと言えば、それは他の空間よりも小天体の密度が高いから。
例えば Clearing the neighbourhood around its orbit. これは現時点での「惑星」を定義する項目の
一つで、軌道近くから他の天体を排除していることが惑星の条件…と言う事です。上記のケレスは
この条件を満たさず、準惑星とされます。惑星の条件は他に二つ、全部で三つの項目があります。