[2025年9月25日]
少々身のすくむ話となりますが、あるデータをご紹介します。
朝日新聞4月7日付け朝刊の教育面の記事によると、
文部科学省の2023年度調査において小学校で確認された児童の暴力行為が、約7万件だったそうです。(中学校は約3.6万件)
この数字は、10年前のなんと約6倍とのこと。加速度的に急増しています。
この7万件を年間授業日数(205日間 ※年度によって若干の増減があります)で割ると、1日当たり全国で約350件の暴力行為が発生している計算になります。
また、別の見方をすると、そもそも全国の小学校数は、文科省の調査年度の2023年は国立・公立・私立全て合わせると18,980校です。
(文部科学省 令和5年度学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値 2023/12/20)
これを元に極々単純計算すると、1校当たり年間で3.7件の暴力行為が発生していることになります。
愕然とする数字だと思います。
この小学生の暴力行為が増えた背景に何が考えられるのか。
記事には公立小学校の校長先生・教員・大学教授・学童保育の施設長・保育士など先生方からの様々な意見が寄せられていました。
ほんの一部を紹介します。
<子ども自身の問題として>
〇気持ちを言葉でうまく伝えられない傾向にある
〇児童に対話させようとすると、「どう話せばいいかわかっていない」
〇児童同士の会話が減った
〇気持ちを言葉にできる子とできない子の差が大きい
〇大人の顔色をうかがい、気持ちをうまく話せずおかわりが欲しいかさえ言えない4歳児がいる
〇衝動の折り合いの付け方を身に付けることができていない
〇自分の感情をことばでつかむ力が弱くなっている
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<環境や大人の問題として>
〇子どもが気持ちを吐き出せる場が少ないと感じる
〇教員の働きかけが減った
〇子どもの気持ちを代弁するような声掛けを続けたら暴力はなくなった
〇自分を律する力が未熟な子どもにはある程度厳しい指導が必要と思う一方、それが学校に来られなくなるきっかけにもなりかねない
〇暴力の原因の一つに、大人側のコミュニケーション不足があるのでは
〇ぐずる子にスマートフォンを見せる親は、子どもが気持ちを言葉に置き換える作業を減らしていることになるのではないだろうか
〇家庭庁の調査では、2歳児の6割近くがインターネットを使っていることがわかり、暴力性の高いコンテンツのあるネットに頻繁に触れ、バーチャルと現実の区別がつきにくくなっているのではないか、と分析している
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この様に、「子どもが自分の気持ちを言葉で上手に表出できない」「子どもたちと対話できていない大人の姿勢」などが問題視されています。
前段が長くなってしまいました。
そこで本題ですが・・・
さて、この暴力行為は当教室では発生したことはありませんが、前述の意見の、特に子ども自身の問題点については、多くの同感する意見があります。
一言で言うと、「自分の感じたことや思ったことを言葉にできない」のです。
ですから例えば、 「夏休みに行った海はどうだった?」 と聞いても、 「楽しかった」で終わりです。
根掘り葉掘り聞き出したり、言いたいことを察して代弁したりしないと会話は続きません。
そこで、「気持ちの言葉」をじっくり教えることにしました。
今まで、国語だけでなく様々な指導の中で、あるいは些細な何気ない会話の中で、気持ち表す言葉を一つ二つ教えるに過ぎませんでした。
まずは、約400語をまとめた「感情の言葉」を例文で学習する取り組みを、この夏(夏期講習)から始めました。(うれしいときの言葉、悲しいときの言葉、驚いたときの言葉など13に分類)
算数とは異なり、学習成果はすぐには顕在化しませんが、親御さんからは、「家で、塾で習った言葉を何かと使いたがっている」という声もちらほら聞くようになりました。
「でも、おかしな使い方なんですけど・・・」というオチがあります。
いやいや、それでいいんです。
間違って使って、正されて、また使って・・・ そうやって身についてきます。
子どもたちは、「この気持ち、何て言えばいいのかな?」という頭の中にあるもやもやとした、言葉にするのが難しい感情を少なからず持っていることでしょう。
そのもやもやを言葉にできたときの何とも言えぬ “しっくりとした気持ちの落ち着き” を覚えて欲しいのです。
弟と毎日のように喧嘩をして “ムカつく” としょっちゅう息巻いている小5の男の子が、「今日、ぼく “虫の居所が悪いんだ” 」と言いながらどこか妙に得心した様子を見せていました。