[2010年10月2日]
先日ある高校を訪ねたとき、生徒に読ませているという本を先生から紹介していただいた。
脳生理学的観点から、イチローの脳を科学的に考察した本だ。
(北島康介に関する本も紹介していただいた。)
ついこの間200安打を達成したと思っていたら、10月1日現在で既に今季211安打である。
次々と記録を塗り替えていくイチロー。その卓越した打撃術もさることながら、プレッシャーをはね返す精神力の強さには驚かされるばかりだが、その秘密は何か・・・・・。
著書の中で特に印象的だったくだりを要約してご紹介すると、
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脳の働きとボールをバットに当てる動作との関係は、球を目で見た「視覚情報」は脳の後ろの視覚野(しかくや)に到達して分析される。分析された情報は脳の中央にある運動野(うんどうや)に送られ、体の部位が動く。
18.44メートル離れたマウンドから投げられた時速150キロの速球は、計算上、0.44秒で打者の手元に到達する。一方、視覚情報が視覚野から、手の動きを起こさせる運動野に到達するまで約0.1秒。さらに手が動き出し、ボールを打つポイントまでバットを運ぶには時間がかかる。だから打者の多くは「ここに来るだろう」と予測してバットを振るが、イチローは予測と違うところにボールが来ても微調整ができる。
これは小学生のころから徹底的に鍛えた結果だ。脳の神経細胞は3歳ごろまで急速に発達し、6、7歳ごろと10、11歳ごろに一段と発達する。この時期に打撃練習を繰り返したことで、神経回路もより発達し、情報が速く伝達されるようになった。
無駄な筋肉がなく、体調管理ができているのは「おいしいものを食べたい」「長く寝たい」と思っても、マイナスだと思えばやらない自己抑制ができるから。幼いころから練習の繰り返しで、意志を制御する前頭葉(ぜんとうよう)が発達したと思われる。欲望をつかさどる大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)を前頭葉がしっかりと抑えている。
目標に向かって計画を立て、努力を続けた結果、満足感や喜びを感じると、ドーパミンという物質が分泌され、神経細胞の元になる神経幹(しんけいかん)細胞の働きを活発にし、さらに脳が発達する。イチローを見ると、人間の脳の進化を感じられる。
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