[2012年11月4日]
Mちゃんが教室に入ってくるなり、ニコニコ顔で
「先生! 達成したよ!!!」
「え? 何が・・・ 学芸会で・・・もしかしたら主役?」
「そんなんじゃないよ、ほら、約束したじゃん! 本、100冊」
「先生、約束だよネ!」
「あ〜、そう言えば、今年の1月に、宣言したっけ、Mちゃん!」
ここまでの会話がどうも今一つ噛み合わない。
私が何かもうひとつ大事なことを忘れているのである。
「あのさ〜、ほら、先生と約束したじゃん!」
「え・・・ だから100冊読むってことでしょ?」
「それとあと、だ い じ な こ と ! ! !」
私は、まだ思い出せないでいる。
「プロスペールの ケ ー キ」
「あ〜? そうだった!」
完全に言質を取られてしまいました。
記憶がだんだんと蘇り、焦りを感じ始めました。
実は当時、冗談で言ったつもりでした。
見くびって軽く言ってしまい、傷つけてしまったことを申し訳なく思いました。
そして、深く反省し、すっかり忘れていたことをすぐさま詫びました。
恐らく100冊は無理だろうと、軽い気持ちでおちゃらけで言ってしまったのです。
でも、約束は約束です。
約束とは、
今年中に本を100冊読んだら、お祝いとしてケーキをプレゼントする、というものでした。
バースディケーキのように、名前とメッセージを入れたホールの(丸い)やつです。
来週の日曜日に、一緒に注文しに行ってきます。
Mちゃんは、現在小5。
小4の春から、教室で 「読書クラブ」(読み聞かせ) を始めました。
「マジック+ツリーハウス」 20巻を約半年で読み、その後は、ファンタジー系にはまり、 「ダレン・シャン」
12巻を月3冊ペースで一気に読みました。
すっかり本の虫となったMちゃんは、今年の1月、何かの話の弾みで 「100冊読破」 を宣言し、今年の最大の目標となったのです。
実は、私はその話のいきさつはよく覚えていないのです。
その後、私からは、夏頃までは 「家でも読んでる?」 とさりげなく聞くだけで、読んでいる本や、ましてや感想などは聞きませんでした。
なぜなら、内心あまり期待はしていませんでしたので。
ところが、ところが、約10ヶ月で100冊読破を達成してしまったのです。
今になって考えてみると、もともと気丈なMちゃんは、敢えて言わなかったのでしょう。
ケーキのことは。
ケーキのために本を読んでいる、と思われるのがしゃくだったのかもしれません。
「一番面白かった本は何?」
と聞いてみました。
すると、少し考えてから・・・
「博士の愛した数式」 と答えました。
「主人公のルートが私と同い年で・・・、ちょうど私にも一緒に暮らしているおじいちゃんがいて・・・、算数の話もすごく面白かった、ちょうど約数を勉強したところで・・・、そうそう友愛数の話・・・」
と脈絡なくまくし立てました。
この本は、2004年に本屋大賞をとったベストセラーですが、さすがに小5には早いと思いましたが、しっかり読んで感動したようです。
確か、今年の1月に青い鳥文庫の 「モモちゃんとあかねちゃん」 を勧めてからは、教室では、この文庫の他のシリーズや岩波少年文庫や伝記を読んでいました。
そして、夏ころから少しずつ大人向けの本も読み出したようです。
教室には、小学生が読む本を並べてある本棚とは別に、中が見えるキャビネットには、私の好きな作家の本も並べてあり、中学生や高校生に貸し出しています。
Mちゃんはその中から、どうやら面白そうな本を見つけ出して借りていたようです。
「博士の愛した数式」 もその中の1冊です。
吉本ばななや、夏目漱石、村上龍、五木寛之 も読んだらしいのです。
今、「ダ・ヴィンチ・コード」 の上巻を読み始めたとのこと。
そういえば、最近何だか妙に “おませ“ になってきました。
ちょっと子ども扱いすると、ムッとした表情を見せるのです。
気をつけなくては・・・
この1年間の成長は、100冊の本が大きな力となったことは間違いありません。