[2013年5月26日]
かなり旧聞に属しますが、ちょうど2年前の今頃、理論物理学者のスティーヴン・ウィリアム・ホーキング博士が 「天国も死後の世界もない。それらは闇を恐れる人のおとぎ話だ」 と断言したことで世界中に議論が巻き起こりました。
それよりも遡って、前年に発表した神の力を否定するような内容の著書に、宗教界からの批判を猛烈に浴びていました。
この 「死後の世界はない」 という言葉は何を意味するのか、真意は図りかねますが、これはとても興味ある発言だと思ったのです。
私自身スピリチュアルな世界を信じる性質(たち)でも、何かの宗教に傾倒しているわけでもありません。
博士がかつて、海水の塩分濃度が地球が誕生した46億年前と変わらないのは、地球が生命を持っていて自ら塩分を調節しているからだ、という内容の講演をされていたからです。
つまり、この2つの発言はどう繋がるのだろう、という疑問です。
理論物理学者の発した地球の塩分濃度と死後の世界の話は、思考の到底及ばない凡人の頭を混乱させます。
最近読んだある工学博士の書いた本の中にも、霊的なことが書かれていました。そこには「宇宙は全体として一つの生命体である」 と記されています。
理解できぬまま3回は観たであろう 「2001年宇宙の旅」 の何とも不可思議なシーンがふと頭をよぎります。
科学者の方が、非科学的な神仏に近づいているのかもしれません。
実は、こんなことをふと思い出したきっかけは、今月13日付け朝日新聞朝刊の科学面に大きく取り上げられていた 「暗黒物質 (ダークマター) 」 の記事です。
宇宙に存在が予想されてきた正体不明の未だ観測されていない、見えないがその重さはあるという 「暗黒物質」 (ダークマター)」 の痕跡らしきものが見つかったというのです。さらには、正体不明の 「暗黒 (ダーク) エネルギー」 もあるらしいのです。
このような宇宙の謎は、私にとって非現実世界をさらに超越したまさにダークな世界の話です。
新聞の記事内容は日常の感覚を完全に越え、 「星の王子さま」 のおとぎの世界へと私を誘(いざな)います。
どんどん話は飛躍してしまいますが、この有名な本の中に
「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」 という示唆に富んだ言葉があります。
「暗黒物質(ダークマター)」 は、とても興味津々で解明を期待する一方で、痕跡だけで実物は見えなくていい、もし見えてしまったらそれは肝心なことではなくなってしまいそうな気もします。
さて、冒頭のホーキング博士の話に戻します。
2年前の 「死後の世界はない」 論争の渦中、「人々はどのように生きるべきか」 とのホーキング博士への問いに対し、博士は 「自らの行動の価値を最大化するため努力すべき」 と答えたそうです。
宇宙は、最先端の科学ですら解明できないことだらけです。ましてや私たちは何ほども知りません。
博士のメッセージは、だから、 「先が見えない、わからないからこそ、今を大切に生きなさい」 とも聞こえてきます。