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学研CAIスクール
中村橋教室

[2014年5月10日]

あきらめから2年 今が最高

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今春高校に合格したK君は、今が旬です。例えて言うなら、たけのこ、とでも言いましょうか。
(蛇足ですが、タケノコ (筍) は、十日間を意味する 「旬」 から来ている、との説もあります)
正確に言うと、合格した数日後の3月からが旬の始まりで、5月に入った今でもその勢いは増すばかりです。

いったい何が旬なのかと言うと、 「英語の勉強」 です。
中3生が高校に合格して、一人、二人と卒塾していく中、彼は当然のように今まで通り通塾し、大の苦手の英語の勉強に益々力が入っていきました。
まったく予想だにしなかったことです。 高校が決まったら即日辞めるだろうと踏んでいました。
ところがどっこいです。 合格直後に驚天動地の大事件が起こったのです。


彼は中1の夏から私のところに通い始めました。
数学は得意でしたが、英語はからっきしダメで、何と言うか英語に対しては生理的に全く受け付けない、といった様子でした。
試行錯誤の末、不本意ながら万策尽きたと私が感じてしまったのが中1の最後の学年末試験直前。
“come” のつづりが書けなかったことがとてもいいきっかけを私に与えてくれました。
ここで躊躇なく指導方針の転換を図ったのです。

それは、 “あきらめること” でした。
今までどんな生徒でも、ここまでスパッと方向転換したことは正直ありません。
中1の学年末試験の直前に、迷いなく 「英語はやめよう」 と宣言し、その瞬間から丸2年も英語の指導はしませんでした。
その時の、彼の安堵感と言うか解放感と言うか、少々はにかんだ穏やかな表情が今でも忘れられません。

正直なところ、一抹の不安は残りましたが、これを機にお互いのストレスは完全に解消し、まだ何も全く見えないのだけれども、逆に前途洋洋とした期待感に満ちた気分になったことは、とても不思議な感覚でした。

結果論ですが、適切な判断だったと思っています。
そうして今、彼は2年前一切をあきらめた英語の勉強を猛然と始め、何と3月・4月の2ケ月間で中1範囲ほぼ全ての学習をこなし、私を瞠目させました。
6月に英検5級、10月に4級、来年1月には3級合格を目指しています。 この調子なら、恐らくいけるでしょう。


子どもたちの中には、勉強の得意な子もいるし、苦手な子います。それを無理にでもさせなければこの子は落伍するだろうと、考えてしまいます。
しかし、案外そんなものでもないのです。 違う方向で、あるいはいつか思いがけない才能を発揮するかもしれません。

いずれにしろ、人間にできることには限りがあります。
中学生が9教科全てに興味を持って意欲的に取り組むなど、よくよく考えたら無理なことです。
私の立場から言うと、自己否定になるかもしれませんが、そのうちの幾つかでいいと思います。
そして、ある程度あきらめるということも必要だと思います。

「あきらめる」 の語源は、 「あきらかにきわめる」 だそうです。
物事を明らかにして、人間にはできないこと、どうしようもないこともあるのだと理性的に確認することなのです。


実は、彼が英語の勉強に目覚めた理由を彼の口から聞いていません。
当初はその言葉を聞きたかったのですが、とても野暮な質問だと思いました。
彼の目は口ほどにものを言っていますから・・・