[2014年6月21日]
中学受験は、やり方次第で子どもの潜在能力や向学心を伸ばすきっかけになるばかりでなく、人間性を育んでいくきっかけにもなります。
しかし、一歩間違えれば心に傷を負ってしまうリスクも大いにはらんでいます。
10歳〜12歳は、まだまだ精神的に未成熟です。
これから様々な価値観を身に付けていく大事な時期だけに、安易に 「人生の競争に勝つための合格」 といった狭い価値観を与えてしまうと、合否にかかわらず、その後の学校生活が暗澹たるものになってしまいかねません。
人生においては、競争よりも共生や共感の方がはるかに大事だと思います。
人間社会を取り巻く多様な真実と価値とに豊かに触れられるように、親として、門戸を広く持つべきだと思います。
社会体験、自然体験、伝統芸能、文化遺産、自然遺産、祭礼、映画、音楽、絵画、演劇、文学・・・
これらとのたくさんの出会いは、中学生になってから子どもを化けさせます。
子どもに受験を勧めるとき、 「自分を試すチャンスとして受験を動機付けること」 が、とても大事な発想ではないかと思えてなりません。
そして、この価値観を子どもが理解できるかどうか、納得できるかどうかが成否 (合否ではありません) の分かれ目だと思うのです。
少々大げさな表現になりますが・・・
人生は時々、自分でハードルを設けてそれを越える練習をすると、自分に自信が出てきます。若くて柔軟なうちに勉強をすれば、頭も鍛えられるし、それは自分の財産になります。友達が勉強して成績も上がっていたら、自分もやる気になるかもしれません。切磋琢磨して考える力が伸び知識が増えていけば、それも自分の財産になります。
結果はどうであれ、中学受験というハードルに挑戦するのは面白そうだぞ。
ということです。
「受験勉強は辛く試練だ」 という後ろ向きの発想ではなく、 「受験という少々高いハードルを乗り越えていくことに喜びを見い出していくんだ」 というポジティブな発想がベースにあるべきだと思います。もちろん親も子も共に。
スタートの時点で、後ろ向きだと、様々な無理を重ねてしまうことになります。意欲も湧かず、成績も思うように伸びません。
すると、親はどんどん前面に出てきて叱咤激励します。精神的に弱い子は折れてしまうことでしょう。
しかし、スタートが前向きだと、予想以上にうまくことが少なくありません。何事にも積極的で、自主的にどんどん進めます。精神的に常に余裕がありますので、とても素直です。
このような子は、 「よし、やってやろう!」 という固い決意が元々ありますからぶれません。
この気持ちをスタート時点で起こさせることができるのは、ご両親しかいません。受験勉強は3年生から、あるいは4年生からという時期、ではなく「よし、やるぞ」という気持ちが湧きあがった時点がスタートの時機だと思います。
しかし・・・、まだ機が熟す前にフライングしてしまったらどうするか。
とにかく責めるような命令口調や言葉で勉強をやらせようとしても逆効果です。
「やりなさい」 「早くしなさい」 「頑張りなさい」・・・ではなく、常に 「一緒にやろう」 が大原則です。
そして、親が一貫してぶれないことが子どもに安心感とやる気を与えるでしょう。
親が 「よし、一緒にやってやろう!」 と腹をくくることです。