国語指導強化の背景と指導コンセプト
●貧困な言葉
−−会話が成り立たない
毎日使っている日本語。だから、私たちは日本の歴史や文化の背景を知り、きちんと国語として使いこなせるようになっていきたいものです。
ところが、子どもたちと接していると、普通の会話がスムーズに運ばない場面にしばしば遭遇します。
正しい日本語できちんと自分の意思を相手に伝えたり、物事や出来事を正確に説明したりすることがきちんとできないのです。
何を言っているのかわからないことが少なくありません。
−−言葉と思考力との関係
言葉の未熟さは、精神面の未熟さに因るところも大きく、学力や知的欲求の度合いと深くかかわってくるのではないかと思います。
例えば、子どもたちに、学校での行事の感想を聞いても、「マジやばかったです」 とか、「もう、大変でした」 の一言から次の言葉が続きません。
そもそも 「やばい」 という言葉の使い方からして誤っています。
(「やばい」という言葉を、「危険だ」 とか 「悪い結果を招きそうでまずい」、という本来の意味ではなく、全く逆の意味として使われています。)
このように、言葉が誤用されたり貧弱だったりすると、感じたことや考えをきちんと言語化 (文章化) することが難しいため、思考がスムーズに展開していかないのではないかと思われます。
−−笑い話(?)では済まされない
また、「20−7」 を 「20を7で引く」 と言ったり、 「来る」 と 「行く」 を逆に言ったりする笑い話のようなこともしばしばです。
小学校低学年ならまだしも、中学生が臆面もなく、何の違和感を覚える様子もなく普通に表現してしまっていることに、唖然としてしまいます。
●基本コンセプト
−−学力低下は国語力の低下に因る
私たちが「考える」ということは、「日本語で考える」ということです。当たり前ですが。しかし、この当たり前のことができていません。
国語力がないから、言葉を使って考えることができないのです。
つまり、自分の頭で考えることができなくなってしまうのです。
☆自分の言葉で考えないので(自分の言葉を持っていないので考えることができず)、
従って理解ができない。
☆理解していないから、応用がきかない。
☆記憶しても、理解していないことを記憶したところで、結局忘れてしまう。
☆これを繰り返したところで、身になる勉強にはならず学力は一向に上がらない。
−−「言語」 = 「思考」 であるということ
「自分の言葉を多く持つ」 ⇒ 「自分の言葉で考えることができる」 ⇒ 「自分の頭で思考することができる」
従って、「言語能力が向上する」 ⇒ 「考えることができる」 ⇒ 「自分の考えが相手に伝わる」 ⇒ 「他人の考えが分かる」 ⇒ 「言われたこと、書かれていること、物事がわかってくる」 ⇒ 「知的欲求が生まれる」 ⇒ ∞
−−国語指導において日々改良を重ねています
これらの貧弱な語彙力や稚拙な表現力にはかなりの危機感を抱いています。
そこで、このような実情から、当スクールでは5年ほど前から国語力の向上が学力を上げるための根幹であることを改めて認識し、様々な取り組みを行いってきました。
そして、試行錯誤を重ねまだまだ体裁を整えた程度ですが、国語のシラバス (目標と内容,使用教材,指導計画,指導方法,評価方法等) を作成し日々指導に当たっています。
※シラバスは 「国語?」 「国語?」 「国語?」 の三段階にレベル分けしています。
(シラバスはホームページ上には掲載しておりません。別途ご請求ください。)
−−国語力を上げるには、長い目で見る必要がある
国語の力を上げるには、地道な努力と継続が特に必要です。
算数・数学のように、練習したからといってすぐに力が顕在化するわけではなく、また、どんな学習がより効果的なのか、学習の結果どのくらい力がついたのか効果測定がしにくいのも事実です。
また、そもそも国語の力は 「読む」 「書く」 「聞く」 「話す」 という4つの大きな能力に大別されますので、全ての力をバランスよく上げていくことは容易ではありません。
−−塾と家庭での学習内容の住み分け
そこで、一つの方法論として、「日常的に家庭でできる学習」 (精神面の育成、知識習得)、と「塾における効果的な学習」 (知識習得、練習) を切り分けて考えました。
塾では、理解できたことや習得できたことができるだけ実感できるような内容の学習を取り入れ、お子さんの特質や学力傾向などを見極めながら指導をしています。
国語指導の取り組み内容
●四つの柱
当スクールでどのような内容の指導を行っているのか、簡単にご紹介いたします。
当スクールでは、国語だけに特化した思考力・表現力養成コースがありますが、それとは別に通常のコース (学力強化コース) の中で、次の 「四つの柱」 を中心に学習を組み立てています。
尚、以下に示す学習」は、学年 (小学生、中学生) に関係なく、その時点の国語力に応じて取り組んでいます。
※「日常的に家庭でできる学習」 (精神面の育成、知識習得)については、別途連載いたしますので、ご覧く
ださい。
「塾における効果的な学習」(知識習得、練習)
1. 一つ目の柱(言葉を知る) ――語彙の学習――
2. 二つ目の柱(日本語の文の組み立てを知る) ――言葉の決まり(文法)の学習――
3. 三つ目の柱(書く・表現する) ――正しい日本語表現の学習――
4. 三つ目の柱(聞く・読む) ――読書――
●一つ目の柱(言葉を知る) ――語彙の学習――
生徒の特質によって、それぞれの学習の比重は個々に異なりますが、比較的国語の苦手な生徒は、語彙力アップ (言葉の習得) を一番大きな柱としています。
言葉の学習は、机上で一度学んでもその大半は忘れてしまいます。学習した言葉が、違う場面で「あれ?、どういう意味だっけ」と、気づいたときに、少しずつ身についてくるものだと思います。
例えば、「腕が鳴る」 とか 「舌鼓を打つ」 という言葉 (慣用句 )が、教科書や読んだ本に出てきたり、学校の先生の話の中に出てきたり、会話やテレビで聞いたりして、ふと気に止まり、その意味や使い方を再確認したときに記憶にとどまります。
そして、また忘れて、また覚え直しての繰り返しでようやく自分の言葉として使えるようになるのです。
主な学習内容は次の通りです。
○身につけたい言葉(名前の言葉、動き・様子の言葉、表現を豊かにする言葉)
※抽象的な意味の名詞、形容詞、副詞、動詞など
さらに、上記の学習にも含まれますが、それだけに着目して学習する内容です。
○熟語(二字熟語、三字熟語、四字熟語)
○「〜化」「〜性」「〜的」、「非、否、不、未、無」のつく言葉
○同類語、反対語
○同音・同訓異義語
○慣用句、ことわざ、故事成語
○敬語 など
「身につけたい言葉」 は、語彙のレベル(難易度)を8段階に分けて繰り返し学習いたします。
目安として程度を示していますが、習熟度に応じて学習いたします。
レベル1 : 小学校1・2年程度
レベル2 : 小学校3・4年程度
レベル3 : 小学校5・6程度
レベル4 : 小学校卒業程度
レベル5 : 中学校初級(1・2年)程度
レベル6 : 中学校中級(2・3年)程度
レベル7 : 中学校卒業〜高校初級程度
レベル8 : 高校中級程度
※レベル1〜2は、身のまわり言葉から、文章読解に最低限必要な言葉や日常生活で必要な言葉と、さらに
積極的に使いたい言葉を学習します。
※レベル3〜6は、各教科を含むさまざまな学習活動に対応でき、身近な社会生活を営む上で必要とされる
言葉を学習します。
※レベル7〜8は、各教科を含むさまざまな学習活動に対応でき、その後の社会生活を営む上で必要とされ
る言葉を学習します。
●二つ目の柱(日本語の文の組み立てを知る) ――言葉の決まり(文法)の学習――
ここで言う言葉の決まり (文法) は、中学上級で学習する学術的内容の濃いものではなく、「正しい言葉遣い」 と 「きちんとした文章を組み立てる」 ために必要な、基本的な 「文の構成」 の理解と、「指示語」 の理解です。
○文の組み立て (主語、述語、修飾・被修飾の関係)
文法用語は、中学生になってから本格的に学習いたしますが、言葉のかかり方の学習(主語、述語、修飾・被修飾の関係)は、小学2年生から学習をいたします。
「黄色いチューリップが咲いている。」 というような短い文章から、10文節程度の文章まで既に書かれている一文の中の言葉がどの言葉にかかるのか(どの言葉を修飾するのか)という、文の組み立て(構成)をしっかり理解します。
○指示語 (こそあど言葉)
指示語の学習は、単にその指示語の指している内容を正確にとらえるというだけでなく、文の構造を正確に理解するということにほかなりません。
以下の内容も関連学習項目として必要に応じて学習いたします。
特に品詞の分類は、中学生を対象に英語の文法理解を助けるために取り入れています。
○品詞の分類 (名詞、動詞、形容詞、形容動詞、副詞など)
○組み合わせて使う言葉 (副詞の呼応)
○使役・受身の文 ※助動詞の用法
○可能(れる、られる) ※助動詞の用法
○「〜的」の用法 など
●三つ目の柱(書く・表現する) ――正しい日本語表現の学習――
この学習の特化したコースとして、「思考力・表現力・作文力養成コース」 を併設しています。
このコースでは、正しい日本語表現の学習をメインの学習として位置づけています。 (詳しくは、コース案内をご覧ください)
主に次の内容を学習いたします。
○助詞・助動詞、接続詞の正しい使い方
○文語表現と口語表現 (書き言葉と話し言葉)
○言葉の並べ替え、書き替え
○推敲
○短文 (説明文、意見文) 作成
○作文・小論文
二つ目の柱の 「文の組み立て(文の構成)」 や 「指示語」 の学習では、既にきちんと整っている文章を読んで、その組み立てや指示語の理解をしていきますが、三つ目の柱の 「正しい日本語表現の学習」 では、自分で正しい日本語表現を考える学習をいたします。
最も基礎的な内容をご紹介いたしますと、
「ぼく、きのう、サッカーやった。」 → 「ぼくは、きのうサッカーをやりました。」
「わたしは、ブランコの公園で遊んだ。」 → 「わたしは、ブランコのある公園で遊んだ。」
というように、適切な助詞・助動詞を補って文章を完成させたり、文章中の誤りを正したりする練習から始めます。
小学生は意外と苦労します。
書き替えの学習は、例えば 「主語+述語」 の文章を 「修飾語+名詞」 のほぼ同じ意味になるように書き替えます。
(例:「チューリップがきれいだ。」 → 「きれいなチューリップ」)
この練習は、一見とても簡単に見えますが、指示語の内容を言葉を入れ替えて記述したり、長い文章を要約したりするときに、子どもたちがかなり苦労している点です。
主語・述語が対応していなかったり、修飾語の位置が不適切で意味の通じない文章になったりしてしまいます。
この学習の結果、語彙力の程度や学年によって効果が表れてくるまで個人差は大きいのですが、概ね1年で、はっきりと表現力(文章力)の上達が認められます。
●四つ目の柱(読む) ――読書――
読書に関しては、「読書クラブ」という読み聞かせのシステムで、国語の授業とは別枠で実施しています。
(詳しくは、コース案内をご覧ください)
読書は読解力、語彙力、精神面など長い目で見ると様々な面においてその効果が期待できますが、特に比較的短い期間で目に見えて認められる効果は、「読むスピードが速くなること」 と、「読み飛ばさず一字一句しっかり目で追って読むことができるようになること」 です。
読解の苦手な子どもは、長い文章を読むとき、聞いたことのない言葉がでてきたり、意味のよくわからない言い回しや文が出てきたりすると、何度も読み返してみようとせず読み飛ばしてしまい、わかる箇所だけを拾い読みしてしまう傾向にあります。
これでは、どんどん自分の想像の域に入ってしまい、文章の内容を正確につかむことが困難になってきます。
さらに、このような学習を繰り返しても読解力は向上するどころか、ますます文章が読めなくなってしまう危険性があります。
「読み聞かせ」 は、明瞭な発音で適切な位置で区切ったり、一拍置いたりして朗読していますので、自分で読むときよりも正しい読み方がわかってきます。
これがまず第一の効果です。
そして、二次的効果として、耳で聞きながら文章を目で追うことを繰り返していると、耳と目が慣れてきて驚くべき速さ(通常の約3倍弱)で聞いて読む (文字を目で追う) ことができるようになってきます。
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以上4つの柱(「言葉を知る」 「日本語の文の組み立てを知る」 「書く・表現する」 「読む」)を学習することによって期待する結果は、もちろん国語力の向上ですが、
まずは、毎日の生活の中での変化です。
日常的にはある物事をきちんと説明することができるようになったり、
人の話を集中して聞けるようになったり、
わからない言葉は進んで調べるようになったりすることです。
そして、各教科の面では国語の教科そのものよりも、
算数・数学の文章問題がしっかり理解できるようになったり、
社会や理科の理解がスムーズになったり、
英語の文法が理解できるようになったりすることです。
そしてそこには、もっと学びたいというとても大事な「意欲」が生まれてきます。
そうすると、そこからどんどん知的欲求が広がっていくことでしょう。