「読書」 に必要な力とは
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読書には当然ながら 「読む力」 や 「感動する力」 が必要です。
しかし、読書力 (※あまり一般的な言葉ではありませんが)そのものを練習したり、読書の成果を評価したりすることは、極めて難しいのが実情です。
なぜなら、その成果が目に見える形では表れにくいからです。
そこで、練習方法や評価方法を考える前に、「読書」 に必要な基礎力について考えてみたいと思います。
● そもそも 「読書」 とは
====== 読んで理解しているかどうか、本当のところ判断できません ======
読書は算数の練習と違って、成果が目に見えません。
きちんと読んでいるかどうか正確に確認することは無理です。
つまり、目で字面だけを追っているだけなのか、文章の中に入り込んでしっかり理解しているかどうかは、第三者にはわかりません。
それが「読書」というものです。
====== 感動は強要できません ======
さらに、理解していたとしても、納得したり反論したり感動したりすることがなければ本来の成果は得られないでしょう。
だからといって、それらを強制したり訓練したりすることは不可能です。読んだ本人が感じてくれなければ、強要することは無理なことです。
====== “おもしろそうだなぁ” までの時間を乗り越える ======
そもそも、本はその内容に入り込むまでには、少しの我慢と時間を要します。
本の最初の方は、えてしてあまり面白くない場合も多く、中に入り込んでいくと徐々に面白くなり、深い感動を覚えるといったことがよくあります。
名作と呼ばれる本ほど、そのような傾向が強いと思います。
ですから、「おもしろそうだなぁ」 と思うまでの辛抱の時間を越えることができるかどうかが、「読書」を続けることができるか否かの分かれ目となります。
● 読書に必要な環境と基礎力
【視力】
当たり前ですが、本を読むためには視力が必要です。
ここで問題にしたいのは、目の健康です。
例えば、テレビゲームなど強い光を放つディスプレイを長時間見つめることは目にとっていいとは言えませんし、目も疲れやすくなるでしょう。
【文字を読む力】
小学生であれば、できるだけ漢字にふりがなのふってある本を読ませることが大事です。
また、特に低学年の小学生が本を読む時、出てきた読めない漢字や意味のわからない言葉をいつでも尋ねられるように親がそばにいる環境が望ましいでしょう。
【言葉の単位を理解する力−文節で区切って読む−】
読書に限らず、算数の問題文にしても社会の教科書の文章でも、その文章の意味が分かっていないとき、そのほとんどが字面だけを追ってしまっています。あるいは、言葉や熟語の意味が分かっていないかのどちらかです。
理解できなかった文章を再度読ませるとき、文節で区切って(「ネ」という単語を入れて不自然でない箇所)一緒に読んであげてください。本を速く正確に読む力の元になる読み方です。
例えば、「20世紀には/人々は/自由と/平等を/手に/入れましたが/戦争の/ために/命を/落とした/人も/たくさん/います。」 (/の前に「ネ」を入れて読んでみてください)
【集中力と忍耐力】
本の世界に入り込んで、そのすばらしい世界を飛び回るには、前述のように最初少しの我慢が必要です。
日頃から「我慢する」「待つ」「黙っている」 という訓練が必要です。
また、背筋をまっすぐ伸ばして座る訓練が必要です。
やはり、集中力のない子は座る姿勢も決して良くありません。
【善悪の判断力】
読書は感動を伴います。
物語の場合は、「わくわく」「どきどき」「ひやひや」「うきうき」「たのしい」「うれしい」「かなしい」などの 『感情の感動』 があります。
また、説明文や論説文では、「理解」「納得」「疑問」「驚き」「反論」 など 『理性の感動』 があります。
このような感動を得るには、作者と読者の間に共通の言語と共通の感性がなければなりません。
そこには、善悪の判断や、道徳観といったものがある程度必要です。
これらは、もちろん読書によって培われることも多いのですが、やはり大人 (親) が子どもに日常的にきちんと物事の善悪や価値観を教えなくてはならないと思います。
読書好きにする方法? <環境と習慣作り>
● 毎日30分間、家族全員で一斉に読書をする習慣を作ってください
「うちの子は本が嫌いで・・・」 というご家庭も多いことと思います。
その解決策は意外なところにあります。
====== 読書に適した場作り ======
読書の苦手な子どもの場合、まず「読書をする環境」を作ってあげることです。
テレビ・ゲーム機・マンガ・パソコン・携帯電話などが自由に使えるという状況で、読書の苦手な子どもが本を読むようになることは絶対にあり得ないでしょう。
また、子どもに 「本を読みなさい」 と言いながら、お父さんがテレビの野球に熱中したり、お母さんが電話で楽しそうに話していたりでは、子どもが本に集中できるはずもありません。
====== 読書タイムを作る ======
毎日できれば30分。最初のうちは10分間から家族全員で「読書の時間」を作ってみてください。
もちろんその間はテレビやラジオを消して読書だけに集中できる環境を作ることが肝要です。
本は、その魅力や面白さに引き込まれるまでには、少々時間がかかります。
本が好きな子どもはすぐに本の世界に入り込めますが、読書の苦手な子どもの場合、どうしても時間がかかってしまいます。
ですから面白くても面白くなくても、最低10分間は黙って文字を読む、という 「訓練」 をさせなければなりません。
10分経って子どもが集中していないようでしたら、そこで無理には読ませず中断して、また明日ということでもいいと思います。
====== 同じ時間を共有する喜び ======
家族全員で同じことをして時間を共有する、というのは読書に限らず 「しつけ」 や 「家族のコミュニケーション」 においてもとても有効だと思います。
勉強ももちろんのこと、掃除・食事の支度や後片付け・何かの準備など、一緒にやることが、子どもにとって純粋にうれしいことなのです。
● 本は借りずにできれば買ってください
====== 読もうかな? と思い立ったときにすぐ手に取れること ======
本を図書館で借りて読むこと自体決して悪いことではありません。
常に手の届くところに本がある状態が望ましいということです。
そして、名作であれば、何度も何度も繰り返し読んで欲しいのです。面白いから繰り返し読む、そして時を経て再び読む、いわゆる 「愛読書」 はいつも手元に置いておいて欲しいと思います。
● さらに、名作全集を揃えてください
====== 心の成長とともに読む本が変わってきます ======
子どもが望む本を買ってあげることは、それはそれでよいことでしょう。
同時に名作と言われる本を一通りそろえておいていただきたいものです。
今は、それらを読まなくても構わないでしょう。子どもは精神の発達とともに、自分に合った本を求めるようになります。
やさしい本を卒業して、名作と言われる本を手にした時、もし子どもの求めているものと本の与えているものが同じレベルであれば、一気に引き込まれていくことでしょう。
ご両親が子どもの頃読んだ名作を是非並べておいて欲しいと思います。
読書好きにする方法? <仕掛けと練習>
● 「読み聞かせ」 で 「途中まで読み」 をしてあげてください
「うちの子はなかなか本に興味がなくて・・・」 というご家庭も多いことと思います。
「読書好きにする方法 その2」 として直接的な興味付けの方法についてお話ししたいと思います。
その解決策は、「待っていてはだめ」 ということです。
====== 単純に、聞くことは楽しい ということ ======
面白い話を聞く、という行為自体嫌がる子どもはいません。大人でも落語や講談などはとても楽しいものです。
お話を耳から聞くというのは、いくつになっても面白いですし、興味を引く話は聞く方も一生懸命考えますので、脳を活性化させます。
親御さんが読んであげるお話を聞くことによって、子どもは物語の楽しさを知っていきます。
物語が楽しいことがわかれば、自然と本に馴染んでいきます。
===== 仕掛ける ⇒ 自分で読み出すきっかけ作り =====
「読み聞かせ」 から 「自分で読む」 ようにするには、環境を整えて待っていただけではだめで、仕掛けることが必要です。
一つは、 「途中まで読み」 です。お話が佳境にさしかかったとき、あるいは結末に至る直前に、「あ、そろそろご飯の支度をしなくちゃ」 「混んじゃうからそろそろスーパーに買い物に行かなくちゃ」 などの理由をつけて読むのを止めてしまいます。
そのお話に興味を持っていれば持っているほど、子どもは続きを知りたいと思うでしょう。
子どもがどうしても続きを知りたいと言ったら、 「じゃあ、続きは自分で読んでもいいわよ」 と、本の続きの部分を示してあげればいいのです。
つまり、物語の続きを知りたい気持ちを高揚させて、自分で読み出すきっかけを作ってあげるのです。
● 音読をして読む練習をしてください (文節で区切って読む練習)
====== なぜ、つっかえ つっかえ読むのか ======
先の 「読書に必要な環境と基礎力」 でも述べましたが、本を読むことが苦手な原因の一つとして、内容を読み取ること以前に、文字や文章がすらすら読めないことが挙げられます。
学校の授業参観で、子どもたちの音読をお聞きになったことはありますでしょうか。
読み方に関して、かなりの能力差をお感じになったことはございませんか。
漢字の読みができるか否かも影響しますが、すらすら読める子どもと、どこで区切ったらいいのかわからず、つっかえつっかえ読む子どもとでは、その差は歴然としています。
すらすら読める子は文字や文章を読み慣れていて、自然と文節で区切る読み方ができています。
しかし、つっかえてしまう子は、文節で区切るということが習得できていません。
さらに、そのようなつっかえる読み方では、文章の意味はわからなくなってしまうでしょう。
====== すらすら読めるようになるには ======
ですから、学校でも盛んに音読をしたり、音読を宿題にしたりして読み方を練習させています。
音読は、ただ読むのではなく、ゆっくりと文節で区切って読むようにすることが肝要です。
例えば、「これが/わたしの/作った/もっとも/優秀な/ロボットです。/何でも/できます。/人間に/とって/これ以上の/ロボットは/ないと/いえるでしょう。」 (ネ、サ、ヨを入れて自然に区切れる箇所が文節の切れ目)
これを、すらすら読めない子はどのように読んでしまうかと言いますと、「これがわたし/の作った/もっと/も/優秀な/ロボットです。/何/でも/できます。・・・・・」
というように、非常にぎこちなくなります。
教科書を使った音読の練習によって、文をすらすら読む力を鍛えていただきたいと思います。