「適性検査型」(「PISA型」)学力とは
●複数の教科を総合した出題形式
公立中高一貫校の適性検査は、算数の複雑な計算問題や難しい特殊算が出題したり、理科・社会の知識を問うたりする問題とは全く異なり、いわゆるPISA型と言われる教科横断型 (複数の教科を総合) の独特な出題形式をとっています。
●PISA型の特徴
PISA型 (PISA的学力) は、一般的に以下の5つの特徴が示されています。
?知識や技能を実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかどうかを評価。
学校カリキュラムには関わらない。
?図表・グラフ・地図などを含む文章 ( 「非連続型テキスト 」という) が重視され、出題の約4割を占め
る。
?「選択式」を中心にしながらも 「自由記述形式」 の出題が約4割を占める。
?記述式では、答えを出すための 「方法や考え方を説明する」 ことが求められる。
?読解力として、 「情報の取り出し」 ・ 「解釈・理解」 ・ 「熟考・判断」 、そして自分の 「意見を表現す
る」 ことが求められる。
テキストの「内容」だけでなく 「構成や形式」 についても問われる。
学習成果の特徴(私立入試対策との相違点)
●「総合学習」 の発展形だから興味深くおもしろい
適性検査の問題は総合学習の延長線上にあるものです。
小学校の 「総合的な学習の時間」 の学習内容の難度を上げたものと考えていいでしょう。
ですから、教科毎の学習とは異なり、非常に興味深く、好奇心や向学心をそそられて意欲の湧く学習ができるのです。
●本当の意味で頭が良くなる
知識の詰め込みではなく、思考力・判断力・表現力を磨くトレーニングをするため、 「学ぶ力」 が鍛えられ、 「地頭」 が出来上がってきます。
●言語能力 (表現力・記述力) が飛躍的に向上する
作文はもとより、常に記述練習を行いますので、否が応でも書く力がついてきます。
それに伴って、国語力が目覚ましく伸長してきます。
指導基本コンセプト
●学力以前に必要なもの (探究心) を引き出します
適性検査のための学習の過程で覚える充実感は、例えば、算数の計算問題や難問が正解することできてうれしいとか、得点や偏差値が伸びたときの感覚とは異なります。
問題の答えが明確な○か×ではなく、評価や成果が数値として表れにくいからです。
学習に対する姿勢は、もっと本質的なところが要求されます。
つまり、分析したり、追究したり、発想を転換したり、課題を解決したり、という物事に対する 「探究心」 の強さが求められます。
ですから、学習に対して、相当高い意識を持たないと、受検対策の土俵には上がれません。
思考力・判断力・表現力を磨くトレーニングをするための前提となる姿勢 (意識レベル) を引き上げ、堅固なものにすることがまずは重要です。
これが、指導の最初の大きなポイントとなります。
●常に能動的な学習態度を喚起します
先にも述べましたが、適性検査問題は小学校の教科毎の知識を問うのではなく、身近な題材の仮題を自分で考え、文章などで表現する問題が中心です。
つまり、小学校で学んできた事柄が実生活でどう生かされているか、総合的な学力・問題解決能力をみることに主眼が置かれています。
このような能力を伸ばすためには、ベースとなる基礎知識・学力の習得は必須ですが、学習姿勢として、与えられた学習内容をこなすだけの受身の学習では、思考力を要求される適性検査問題には歯が立ちません。
様々な分野に対して、好奇心や問題意識・疑問を持って積極的に解決しよう、自ら学ぼうとする姿勢が必須です。
指示待ちや受身ではなく、自主的・能動的な態度・姿勢、自分で考えて自分の意見をしっかり持つことを常に促していきます。
●学校生活での積極的な行動を促します
学校生活の中で、付和雷同ではなく率先垂範で能動的に行動しているかどうかが、学習の習得に大きく影響してきます。
つまり日頃からそのような態度・姿勢で自ら問題解決を図ろうとする発想がないと、適性検査問題が要求する思考レベルには到達できないからです。
ですから、毎日の学校生活は、適性検査対策の格好のトレーニングの場となります。
●言語能力は日常会話から点検します
適性検査で問われる最大のポイントは、 「正しい答えを出せるかどうか」 ではなく、 「答えを出す道筋を記述すること」 です。
さらには、都内全ての学校で課される作文は、論理展開が明快な文章を書く必要があります。
これらの能力は、一朝一夕には習得することは難しく、また机上の学習だけでは不十分で、むしろ日常生活の中で訓練する場面の方が多いくらいです。
聞いた事実を伝えたり、説明したり、自分の意見を述べたりする場面は、学校・家庭において毎日のようにあります。
そこで、簡潔に伝えたり、わかりやすく説明したり、明確に自分の意見を述べたりしようとする積極的な意識が最も重要です。
普段のこうした姿勢や意識なくして、言語能力は向上しません。
普段の言葉に対する意識の高さが、机上の学習の際、生きてきます。
まずは、日常的な些細な会話から始まり、あらゆる場面において言語能力を磨いていきます。
指導/学習内容 (概要)
●基礎学力を深め、思考力と問題解決能力を引き出す
【 算数型問題対策 】
基礎学力と言っても、算数型の適性検査では 「教科書レベルの基礎学力」 ではなく、私立中学受験で求められるレベルの 「基礎学力」 が要求されます。
しかし、特殊算や複雑な計算問題が出題されるのではなく、 「図形認識」 「数的推理」 「条件整理」 などの分野が頻出され、 「答えを出す道筋」 を記述によって説明することが重視されます。
適性検査は全て 「教科横断型」、つまり複数の教科を総合した独特な出題形式をとっています。
このような問題に対しては、知識だけを覚えていても一切太刀打ちできません。
知識を増やすのではなく、得た知識から深い考察と活用力をつけ、問題解決や新たなことを追究していくことのできる柔軟な思考力と論理的思考力を伸ばしていきます。
<学習例>
○資料の読み取りとデータ処理 (データを定量的に分析して結論を導く)
○立体図形を見る方向と条件を整理する
○数的推理・条件整理 (ルールを読み取って解く)
○平面図形と規則性
●身の回りの現象への好奇心と科学的な視点を養う
【 理科型問題対策 】
理科型の問題は、教科書レベルの知識だけでは全く歯が立たず、常に疑問を持ち深い考察が必要です。
また、昨今の教育現場の “理高文低” 傾向から、年々問題の難易度は上昇しています。
物理分野・地学分野・化学分野・生物分野などにおいて、「科学的方法」 (対照実験、演繹法、帰納法など) とは何かを学習し、 「科学的な思考の筋道」 を身に付けていきます。
<学習例>
○電流回路・運動・光・圧力
○気象分野・天体分野
○実験方法と実験結果の解釈
○生物の生存戦略と生物同士のつながり
●社会的な問題について考える力をつける
【 社会型問題対策 】
まずは、自分の生活する社会の様子を幅広く知り理解することから始まります。
そして、そこには常に単なる知識の習得にとどまらず、、身近な生活と密接に関わる社会の問題について理解し、それらについて深く思考することのできる力をつけます。
<学習例>
○環境問題(3R、ゴミ問題、資源・エネルギー、地球温暖化など)
○農業、林業、水産業、工業、貿易、食料自給率
○人口、少子高齢化
○地図、地形図
○世界自然遺産、文化遺産
○資料を活用する問題
●読解力と作文力をつける
【 国語型問題対策 】
ほとんどの学校で、課題文の読解問題と、その課題文に関連した作文が課されます。
課題文の大半は、説明的文章ですので、まずは、様々な分野の文章を読み、このタイプの文章に慣れることです。
作文は、いわゆる、 「意見文」 が求められます。体験した具体例の明示から、自分独自の意見を明確に述べなければなりません。論理展開が明快な文章を書くため、文章構成力と表現力をつけます。 (詳しくは後述の 「作文指導について」 参照)
<学習例>
○課題文 (説明的文章) の読解
○作文基礎学習 (言語知識)
○作文練習 (文章構成、説明文、意見文)
●企画立案力を育てる
【 企画立案型問題対策 】
公立中高一貫校が育てたい生徒像としてよく挙げる言葉は、 、「リーダーとして活躍する生徒」 というものです。このリーダーとしての意欲や資質を問う問題も多く出題されます。
それは企画立案型の問題で、提示された課題に対して立案する企画力や、状況に応じて課題を克服する問題解決能力が試されます。
これらの能力は、そもそもその資質の有無や性格に大きく左右されますので、机上でそれを教わるよりも、毎日の小学校生活の中で、より積極的にいろいろなことにかかわっていこうとする姿勢を喚起し、本人がそれに向けて努力することがまずは必要です。
<学習例>
○時間を効率的に使う行動計画を立てる
○学校や地域での課題を解決するための方策を考える
○目的達成のために効果的なアピール方法やコミュニケーション方法の模索
作文指導について
●学習の進め方
作文基礎学習以外の実際の作文作成は、基本的には自宅で行い、提出したものを添削します。
そして、修正の必要な箇所の指導に時間をかけます。
指導を受けた後、今一度自宅で書き直しをして再び提出する。という流れです。
、1週間1課題以上、1ヶ月4課題〜6課題をこなせるようにすることが目標です。
●作文基礎学習
作文基礎学習とは、作文を書く前の段階の広く言語の様々な知識の習得です。
語彙、国文法の基礎、正しい日本語表現、文の組み立て、表現技法などの言語知識と、要点・要約・要旨などのまとめ方、文章構造の種類の理解と読解、文節の並び替えや文の書き換え、一文〜二文による簡潔な表現技法などの、、文章作成の基礎技能のトレーニングです。
このように、スポーツに例えると、基礎体力や個人技能を向上させるための基本的な練習です。
●作文練習
作文と一言で言っても、その文章形態は様々です。
まずは、書き易い文章から少ない字数で練習をしていきます。事柄や物、事実などを説明する文から始まり、理科や社会で問われるような記述説明、そして意見文というように段階的に進めていきます。
作文力は書く量に完全に比例します。
課題や条件に沿って自分の考えを明確に述べた、論理展開の整った文章が書けるようになることを目指します。
●読解練習
作文問題は、課題文が設定されているものがほとんどです。
さらには、2種類の視点の違った課題文が設定され、難度の高い説明的文章がほとんどです。
テーマも小学生にとっては、決して平易な内容ではありません。
常日頃から、小説だけでなく、様々なジャンルの書物や、新聞に目を通して視野を広げ、未知の分野、いろいろなものの見方や多様な価値観を知る必要があります。
ご家庭でできること、すべきこと
●読書
読書習慣が身に付いている子は、さらに読書量を増やすとともに、小説だけでなく、説明的な文章を積極的に読む必要があります。
頻出・必須のテーマやキーワードは、 「地球温暖化」 「環境問題」 「水質汚染」 「生態系の破壊」 「食物連鎖」 「資源・エネルギー」 「森林資源の枯渇」 「運輸」 「食料自給率」 「少子高齢化」 「福祉」 「フェアトレード」 「日本の伝統文化・芸能」 「世界自然遺産」 「世界文化遺産」 などです。
これらについては、小学生向けの新聞や、中学生以下を対象にした新書、時事問題の解説書籍などを読むよう習慣づけてください。
●調べることを日常化する
、自分で調べて学ぶクセをつける、ということです。
「わからない言葉があったらすぐに辞書で調べる」 「ニュースで出てきた国がどこにあるか地図で調べる」 といったことが当たり前という雰囲気をつくることが大事です。
それには、辞書や地図、さらに百科事典や図鑑などを子どもがすぐ手に取れるところに置いておくことが必要です。
●いろいろな経験・体験をさせる
博物館・美術館・図書館などに行ったり、ハイキングやキャンプに連れて行ったりして、、文化的なものに触れたり、、自然体験をしたりして見聞や視野を広げてください。
好奇心や探究心を喚起し、思考力や判断力が育つ大きなきっかけ作りになります。
●任せる
家事を任せたり、買い物を頼んだり、休みの日の家族の行動計画や旅行計画など立てさせてください。
そして大事なことは、失敗してもうまく行かなくても責めたり叱ったりせず、そこからより良い方法を考えさせることです。つまり、、失敗から学ばせるということです。
●毎日、ニュースを話題にする
学校で学習する教科内容や、目に見える身の回りの出来事以外の、世の中のあらゆる出来事に興味関心を持たせるために、感度を磨いてください。
それには、様々な情報を与えてあげることです。
つまり、当たり前のように、新聞記事やテレビのニュースを話題にすることです。