1.2019年度入試を最後にセンター試験がなくなります。
かわって登場するのが、「高等学校基礎学力テスト」と「大学入学希望者学力評価テスト」の2つのテスト。
この2つのテストを合わせて「新テスト」とよびます。
2.新テストはそれぞれ実施時期や役割が異なります。
「高等学校基礎学力テスト」は高校2年生以上での受検、「大学入学希望者学力評価テスト」は高校3年生以上での受検が想定されています。
また、両テストとも、1年間に複数回実施する方向で準備が進められています。
この2つのテストの違いは、難易度の違いではなく、役割の違いであると文部科学省では説明しています。
3.「高等学校基礎学力テスト」の役割は?
高校の学習内容がどの程度身についているのかを確認するためのテストです。
受検は強制ではありませんが、実質的には大学を受験する、しないを問わず、ほぼ全員が受けることになるでしょう。
テストの科目は、数学?、物理基礎などの必修科目で、出題形式などは従来のセンター試験に近いものになりそうです。
ただし、ペーパーテストではなくCBT(コンピュータ端末を用いたテスト)が導入されることになっており、受検風景は一変しそうです。
また、英語に関してはこれまでの「読む」「聞く」「書く」に加えて「話す」技能も対象となるため、たとえばTOEFL iBTのような民間の資格・検定試験が活用されることになります。
結果については、点数ではなく段階別表示で学校と本人に示されます。
4.高等学校基礎学力テストの特徴
「参考資料」の位置づけですが、志望大学を絞り込むための目安になるかもしれません。
また、調査書に「高等学校基礎学力テストの結果はAランク」などと記載したりすることが想定されます。
ちなみに、「基礎」という言葉がついていますが、「大学入学希望者学力手評価テスト」に比べて簡単という意味ではありません。
5.大学入学希望者学力評価テストって、どんなテスト?
大学を受験するための「資格試験」です。
こちらは、その名の通り、大学入学希望者が、これからの大学教育を受けるために必要な能力を供えているかどうかを評価するテストで、その結果を大学入試の「受験資格」として使用することを文部科学省も積極的に進めようとしています。
高校3年生以上での受検が予定されており、年複数回実施されます。したがって、従来のセンター試験とは実施時期が大きく異なります。
また、テスト形式は「高等学校基礎学力テスト」と同じくCBT方式の導入が予定されていますが、「高等学校基礎学力テスト」の問題が原則として選択方式なのに対して、こちらは選択方式に加えて記述式の問題を導入することを目指すとされています。
★CBTが導入されるということは、キー入力のスピードも結果に影響するということ!?
ブラインドタッチ(キーボードを見ずに入力)できない人は不利になる!?
6.大学入学希望者学力評価テストの特徴は?
問われる能力や対象となる教科の扱いが、センター試験と大きく変わります。
「高等学校基礎学力テスト」がいわば従来型のテスト形式であるのに対し、「大学入学希望者学力評価テスト」は思考力・判断力・表現力」を問うものとされ、問題も従来のような「教科型」の問題に加えて、「合教科・科目型」や「総合型」の問題が出題されることになっています。
※将来的には「教科型」は廃止の方向
また、英語に関しては「高等学校基礎学力テスト」と同様に、民間の資格・検定試験を活用するとされています。
こちらも、従来の「読む、聞く、書く」に加えて「話す」能力が問われます。
テストの結果についても「高等学校基礎学力テスト」と同じく、点数ではなく「段階別表示」で本人に示されます。
自己採点をしていたセンター試験と大きく異なる点と言えるでしょう。
7.「合教科・科目型」「総合型」って何?
その具体的な姿はまだ明らかにされていませんが、予想のヒントとなるものはあります。
1つは、全国学力・学習状況調査の、主として「活用」に関する問題、いわゆるB問題です。
新聞記事や統計資料などを読み取って問題に答えるものです。これは、中教審の討議の際も資料として配布されています。
もう1つは、神奈川県の公立高校入試で実施されている「特色検査」の問題です。
たとえば、横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校の特色検査では、統計資料や新聞記事のほか、英文の手紙を読んで、「介護ロボットのアイデア」を考え、文章、図、イラストなどを用いて表現する、といった問題が出題されています。
これまでの入試問題とは全く異なることが分かると思います。
8.そもそも、なぜ大学入試を変えないといけないのか。
「今のままでは日本に未来はない」という危機感からです。
これまでの日本の入試制度は知識量を問う問題への偏りから脱しきれていませんでした。
今のままでは、日本に未来はない
中教審の答申にもそういった内容が書かれています。この状況を打開するための改革が文部科学省が示した『高大接続改革実行プラン』であり、センター試験から新テストへの切り替えなのです。
9.大学入試なんて、まだ先のこと?
いえいえ。大学入試が変われば高校の内容も変わる。高校の内容も変われば高校入試の内容も変わり、中学での学習内容も変わるはずです。
10.推薦入学やAO入試は?
「廃止」が打ち出されました。
いま、私立大学への入学者の半数近くが、いっぱんにゅうしではなくすいせんにゅうがくやAO入試の制度を利用していると言われています。知識偏重との批判もある一般入試だけではなく、多様な入学制度があるのはいいことのように思えます。
一方で、推薦・AOによる入学者の増加が、大学生の学力低下を招いているという指摘もあります。学力以外の人間性や個性も評価するという本来の目的が、学力が低くても入学できるということにすり替わっているというわけです。
11.新テスト対策に追われると部活動は?
勉強以外も評価の対象となります。
部活動、学校外での資格取得なども評価の対象となりますので、積極的な高校生活をおくることが大切となるでしょう。
12.詳細発表時期
2017年に「新テストの実施方針」が公表される予定です。
「高等学校基礎学力テスト」は2019年度から、「大学入学希望者学力評価テスト」は2020年度から実施されます。対象となるのは2015年度の中学1年生からということになります。
13.実施は2020年度からなら、まだ先のこと?
「新テスト」を念頭に置いた学習が必要です。
従来の時間をかけて学習する「知識取得型」の学習が通用しなくなる可能性が高いです。
つまり、知識を使って論理的に考え、述べることができる力が求められるということです。
そういう意味では、現在の小学生の方こそが今、対策を始めるべきなのです。
皆さんのお子さまは準備ができていますか?
□ 文章でなく、単語で伝えようとすることが多い。
□ 小学校の科目テストで80点以下の点数。
□ 英語を使ってコミュニケーションがとれない。
□ 読書習慣がない。読んだとしても、いわゆる娯楽本。
□ テレビ、マンガ、ゲームなど視覚的コンテンツを好む。
上記に1つでも☑が入ったら、早めの対策が必要かもしれません。
知識は大人になってからでも身につきますが、その土台となる能力を鍛えるのは脳科学的観点からも10歳前後まで、と言われています。
また、上記の課題は一朝一夕には身につかず、長い時間をかけての習慣付けが必要であることも加えておきます。