[2015年6月16日]
こんにちは。BREST南高前の久本です。
BREST南高前は、東永谷中対象の学習塾です。
なんの楽しみもないのみならず
悲しく懶(ものう)い日は日毎続いた。
目を転ずれば照り返す屋根、
木々の葉はギラギラしていた。
雲はとおく、ゴボゴボと泡立って重なり、
地平の上に、押詰っていた。
海のあるのは、その雲の方だろうと思えば
いじくねた憧れが又一寸(ちょっと)擡頭(たいとう)する真似をした。
このような夏が何年も何年も続いた。
心は海に、帆をみることがなかった。
漁師町の物の臭(にお)いと油紙(あぶらがみ)と、
終日陽を受ける崖とは私のものであった。
可愛い少女の絨毛(わくげ)だの、パラソルだの、
すべて綺麗(きれい)でサラサラとしたものが、
もし私の目の前を通り過ぎたにせよ、そのために
私の眼が美しく光ったかどうかは甚(はなはだ)だ疑わしい。
中也の詩特集です。シニカルで激烈なのが中也の持ち味ですが、しかしその中でも「パラソル」だのなんだの可愛い言葉が入っていますね。さすが夏の詩です。