[2011年3月15日]
我々がかつて経験のない出来事が、眼の前で繰り広げられているので、うかつな発言は慎まなければなりません。しかし、私はやはり教育を仕事とする塾人として、こうした惨事の中でも、常にあらゆる観察の中から学び、常に改善に向ける努力をしたいと考えます。もしかしたら、亡くなられた方や今なお被災の地で苦しんでいる人々がいるだけに、前向きに考えようという意識自体が不謹慎だとお叱りを受けるかもしれません。
だからこそ、あえて発言するということになるでしょうが、こういう毎日が不安な時にこそ、動揺を仕舞い込み、平常な生活にできる限り戻る必要があるのではないでしょうか。もちろん、非常時の一定の配慮はしなければなりません。電気の供給量不足に陥らないように節電につとめ、計画停電に協力することは当然でしょうし、今後政府が国民に求めることがあるのなら、率先して対応すべきです。ただこうした非常時に応じるべき事柄を抜きにしたのなら、出来る限り、大人なら、電力供給に支障を与えない程度に仕事に没頭し、子供なら、電力供給不足の問題や、液状化現象の影響で、自宅待機を要請している場合を除けば、可能な限り、学問に力を注ぐべきです。
このような状況においても、もしも仕事や学業に勤しめる環境があるのなら、ぜひとも与えられたこの恵まれた環境に感謝し、全力で没頭すべきないでしょうか。たまたま運よく命があるのなら──この大震災の中で、亡くなられた多くの方々がいる一方で、偶然にも生きながらえることができたのなら──日々の生活を粗末にすることなど到底できません。生き残った者たちはやはり、真に人を弔う心があるのなら、真剣に生きていかなければなりません。
毎日が不安の状況の中であっても、私にできることは何か、今問われるのなら、限られた制約の中でも精一杯塾人として、学びの場をご提供することです。そして、いつだって勤勉である、日本人のうちの一人でありたい、と心から願います。