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個別・少人数集団の塾「あっぷ指導会」
船堀校(あっぷ船堀)

[2012年9月3日]

塾・市川市本八幡の学習塾:情報過多の時代

 昨今の若者は、好景気を一度も経験したことがないなどと言いますが、それだけこの日本と言う国が、長くて深い景気低迷期を続けているということを意味しています。

 ただし、今の子どもたちが不幸であるかというと、家の中を見渡せば、どこもかしこもものであふれています。子どもでも当たり前のように携帯電話を持つ時代ですし、大型テレビなど昔では考えられない破格の値段で、しかも高性能を売りとした商品を簡単に手に入ります。子どものおこづかい程度、へたをすると、100円と消費税で、日用雑貨の購入がかないます。

 何か調べ物があれば、パソコンを立ち上げ、いわゆる「ググる」という俗語があるように、インターネットを使って、ものの数分で情報を取り入れることができます。何かを手に入れたいと思えば、ネットオークションや、価格.comを利用して、最低値で購買欲を満たすことができますし、かつてなら旅先でしか買い求めることができない土産物も、ネット直販サービスを使えば、あっという間にドアトゥードアで、宅配業者が家まで届けてくれます。

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 このように日頃の生活を考えてみるに、たとえば、日常生活の快適さという目線で、20年前と今とを比べたとき、圧倒的に今の生活の方が潤沢であるように感じられます。デフレであるがゆえの物余りが反作用として働き、とかく物品だけを眺めたときには、これほど幸福な日常はないかもしれません。

 しかしながら、今の子どもたちを気の毒に思うことがしばしばあります。いつまでも不況という社会から抜け出せない暗く不安な未来、あるいは、深刻な国の財政赤字、リーマンショック後の雇用環境の悪化、少子高齢社会による年金や介護のいまだ解決不透明な問題があるからというのもありますが、要因の基軸はそればかりではありません。

 満たされるがゆえの幸せがあるのなら、実に逆説的ですが、満たされるがゆえの不幸があるように感じます。

 ちょっと手を伸ばせば、すぐに手に入るという状況は、一見これほど便利で恵まれた状況はありません。しかし、本当の意味での獲得する力が、鈍化してしまうという致命的な欠点が生じてしまいます。

 当校は学習塾ですので、仮に受験期を迎えた生徒がいるとします。昔とは異なり、膨大な情報の選択源から、インターネットを介すれば、取捨選択が可能です。昔なら、自分の将来を考えたとき、親か学校の先生、あるいは本屋で売られている限られた受験関連本から情報を引き出し、かなり限られた選択の幅の中で、自分の歩む道を決めるよりありませんでした。限られた選択肢であるからこそ、かえって決定することに惑うことはなく、ひとつ決めたら、後はとことんのめり込むことができました。

 ひるがえって、現代っ子たちの進路選択は、選択肢が豊富であるがゆえ、かえってひとつを選べないというジレンマにへたをすると陥ってしまいます。「情報の山にふさがれて前へ進めない症候群」、または「情報の海に溺れてしまうシンドローム」とでも称せば、よいのでしょうか。インフォメーション・テクノロジーを使って選択の幅を広げることで、快適生活を目指す社会であるはずなのに、かえって若者たちの首をしめつけるという皮肉な事態を招いています。

 こうした、ある意味、情報過多の現代的病に備え、学習塾も変わらなければなりません。種々の学習技術を伝え、子ども達の成績向上に努めるだけではなく、進路指導に磨きをかける必要があります。おそらく、我々が情報の海の中での適切な泳法をマスターしなければ、我々こそが、たゆたう波にのまれて、溺れてしまいかねません。やはり、教育に携わる者、教育に生きると決めた者に、その矜持があるのなら、自ら子どもたちの模範となるべく、時代の変化への対応力を堂々と示さなければなりません。