[2012年12月24日]
【本八幡教室情報 受験対策月間】
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積極的に何かを学ぼうという気持ちなどなかったはずなのに、本当に何気ないひとつの出来事が、身体をふるわせるくらいの膨大な感動を与え、大きく人生を変えることがあります。
最近、偶然何となくテレビをつけたらその途端に、その世界へ引き込まれたそんな希有な番組がありました。2012年11月25日(日)放送のNHKスペシャル「大海原の決闘! クジラ対シャチ」です。
南方のメキシコ沖などで育ったクジラたちは北へルートをとり、アリューシャン列島を越えた先にある、ベーリング海を目指します。そこはまさに、豊饒の海で、大量のえさに恵まれた生き物たちの楽園のような場所だからです。
ところが、その手前には危険な罠が待ち構えています。アリューシャン列島の島々の間にユニマット海峡がありますが、そこでは、200頭ものシャチの群れが弱いクジラの子を狙い撃ちにし、一気に仕留めにかかります。もしもこの至難を乗り越えれば目的地へたどりつき、豊富な栄養を得て体を大きくすることができますが、子供をかかえるシャチもまた生きることに必死です。
番組を見ていると、そこに、母親とはぐれたコククジラの子供が現れました。当然シャチの群れは見逃さず、一気呵成に獲物を狙いにいきます。常識的には絶体絶命のピンチですが、本当に思わぬ出来事、驚くべき衝撃が待っていました。
何と──コククジラよりもずっと大きな体長のザトウクジラがものすごい勢いで、助けにきたのです。同じクジラといえばそうなのでしょうが、種も異なれば、血のつながりもないはずです。
それなのに、ザトウクジラたちは、命がけで果敢にシャチの群れへ挑み、大きな体にものをいわせ、ドカンと尾びれや胸びれを振り下ろし、猛攻撃をかけます。この力に圧倒されたシャチはついに観念し、慌てて逃げまどうこととなり、どうにかコククジラの子供の救出に成功します。
聞くところによれば、まだ完全に科学的に解明されていないそうですが、おそらくザトウクジラには、群れを守る習性として、弱いものを慈しみ、これをどうにかして守ろうする意識が働くのではないか──と言います。今回、初めて、コククジラの子供を守った映像の撮影に成功したそうですが、同じようにやはり、ザトウクジラがシャチからアザラシを守ったケースもあるそうです。
何ともすーっと全身の皮膚が粟立つような感動が心地よく、久しぶりに質の高い番組を目撃できたという感慨に浸れました。
それにしたって、ザトウクジラこそ、本当に強き者です。弱い立場の者を守ってこそ、真に強い存在です。
ただ、生物の世界には、シャチのような生き物もおり、熾烈な生存競争があることも事実です。それはまた人間も確かに生き物である以上、はっきり優劣が決まる競争世界があることで、スムーズに経済のサイクルが循環するという大前提があります。
もしも市場において、企業間、個人間の競争がなかったら、より便利で質の高い商品を供給することはなくなるでしょうし、その結果、消費者の暮らしにおいて物質的豊かさを失ってしまいます。
そうすると、経済活動において、競争原理は不可欠であり、くっきりと勝つ者、負ける者が際立つ世界というものが厳然とあります。この競争原理がもたらす、競い合い高め合いの世界に、いつか教育を受けた後に、学生たちは勇んで出ていくことになります。
ただし、社会はこれだけで終わってしまうものではありません。優勝劣敗ある世界では、確実に強い者と弱い者との線引きがなされるべきでしょうし、この明確な線が引かれることで、強い者は、はじめて弱い立場の者を守る義務感が発生します。
体の大きなザトウクジラは強い者だからこそ、またその自覚があるからこそ、命を張って弱い者を助けることができるはずです。彼らが弱かったら、残念ながら、その優しい気持ちだけで弱者を助けることなんてできません。いくら優しい気持ちを増幅させたって、強くならなければ、何もできないのが自然の掟、社会の掟です。
だから、教育の力を受けて、人は、うんと、強くならなくてはなりません。そしていつの日かザトウクジラのように、社会と言う大海原へ。願わくは、ザトウクジラのように雄大な心をもつ強き者へ──