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個別・少人数集団の塾「あっぷ指導会」
船堀校(あっぷ船堀)

[2013年4月29日]

市川市本八幡の進学塾:グローバリズムの日本的ジレンマ

 すでに世の中の常識となりつつありますが、グローバリズムが進行していくなか、国際教養の重要性が強調されがちです。

 こうした「社会が求める人材」を当の本人たちが、意識するからなのでしょう。学生たちの進路の選択において、国際教養に関連した学部人気が高くなっています。

 ところが、ここでパラドックス(一方が正しいとすると、もう一方が成り立たないというように二つのことが相いれず、正しい判断に困ること 逆説、矛盾、ジレンマ)に直面します。学生たちの意識はグローバリズムにありながらも、実は日本人の海外留学は減少傾向にあります。かつてアジアの中で、海外留学の数が最上位だった時代は過去のことで、中国、韓国、インドに負けています。

 国内では国際教養関連の学部に人気が集中する傾向のなか、しかし、海外留学に踏み込めないでいる現象は、パラドックス以外の何かを、果たして示しているのでしょうか。

 いくつかの要因が挙げられます。

 ひとつは、学生たちのメンタル面の問題です。グローバリズムの時代であることは認識しているので、国際教養を獲得する意義を知ってはいるのでしょうが、取り組みやすいことにどうしても気持ちがいくので、近場で済ませたいということになります。つまり、海外へ旅立つまでの積極さを持ち合わせていないのでしょう。さらにいえば、学生たちの親への依存体質化(パラサイト化)が強まっている面もあり、裏を返せば、日本の親たちが、子供の自立を阻み、いつまでも子供を子供のままにしておきたいという大人の身勝手さも窺えます。

 またもう一つは制度面の問題です。明らかに日本の大学制度は、高校へ進学さえすれば、学生たちが積極的に動かなくても、何もかもが目の前に用意されます。日本は比較的他の国々に比べて、大人たちが多くの枠組み、多くの段どりを子供たちのために用意するので、こうした制度に合わせて、学生たちが誘導される面があります。選択しやすいから選択するという心理が働くことになるのでしょう。これもまた日本人特有の考えですが、皆が大学進学をするのなら、くわえてその皆が、国際教養関連が良いと言っているのなら、あまり深く考えず、同じ流れに乗ることが安心という向きもあります。その一方で、海外の留学制度といえば、提携している高校同士の交換留学が若干ある程度で、高校時代に、海外の大学入試が紹介されることはまずありません。

 そして最後になりますが、そもそも日本の教育制度そのものが、精密なサイボーグタイプの養成に重きが置かれます。たとえば、東大の入試問題一つ見るとして、簡単にいえば、減点方式です。何かひとつ間違えば、引き算され、満点からどの程度ミスしたかどうかが競われます。クリエイティビティあふれる魅力的な答案をつくろうが、そこは全く評価の対象にはなりません。

 こうした試験は、日本の典型であって、米国のハーバードやイェールの入試は異なります。はっきりとした個性が重んじられます。入試形態があまりに違うので、細かい話は抜きにしますが、多くの有名大学では、入試選考書類の一つとして、エッセイが課されるようです。何よりも、その人間の個性的主張、発想力、創造性が試されますので、東大をはじめとした日本の有名大学を受験する意識とは真逆でいかないときっと太刀打ちできません。そもそも日本の小学校から始まる教育が、その意味において、海外の大学受験向きとは言い難いこともまた、日本人の内向き主義を強める原因となっているのでしょう。

 さて、21世紀型の人材スキルとして、新しい教育の価値を見出すことが求められることはわかっていながらも、なかなか、世界へ羽ばたく勇気を持てないのが日本の制度そのものであり、その枠組みで生きる日本の学生たちです

 目下、安倍政権は教育改革にも力を入れているようですが、国家のリーダーばかりに解決を委ねるのではなく、ましてや民間の教育機関であるのなら、私どもあっぷ指導会もまた教育イノベーションに力を尽くさなければなりません。夢は大きく、世界に通用する人材の輩出に向けて、日々研鑽です