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個別・少人数集団の塾「あっぷ指導会」
船堀校(あっぷ船堀)

[2013年6月7日]

市川市本八幡の進学塾:成長戦略なくして教育を語れない

 「アベノミクスの3本目の矢が折れた」などという記事が、新聞に出ています。やはり市場は成長戦略第三弾の発表を、マイナス評価と受け止めたようです。

 当初安倍い政権下で打ち出していた豊富なアイデアからすると成長戦略がスケールダウンしたことは否めません。また国民所得を一人あたり150万円増やすという構想もまた、その実現性を証明する論拠にとぼしいようです。さらには実現時期の想定が先送りした感が強いという印象もあります。

 これまでの金融政策の成功に期待値が高まっていただけに、裏切られた思いはとても大きかったのでしょう。それにしても、抵抗勢力に屈し、成長戦略は結局骨抜きになってしまったことは残念でなりません。もっと言えば、スローガンばかりで、実態を伴わない戦略が浮き彫りになってしまったのですから、もう一度大きな修正を図らなければ、日本の復興を果たせないはずです。

 しかし、リーダーへぶつける思いは、ブーメランとなって私たち自身に突きつけられます。政治の世界に限らず、私たち一人一人もまた、成長戦略を持たなければならない時代です。かつてなら、政治の世界も、世界の競争にさらされていなかったので、工夫の仕方も今に比べてはるかに次元の低いものだったはずです。

 ところが、グローバールに競争する社会、常に変化する市場のトレンドがすべてを決定する新しい形の世界にあっては、未来を見越すビジョナリーとなり、常に知恵ある先手を打っていかなければなりません。政治の世界も、経済の世界も、世界全体の競争原理に組み込まれるようになったのですから、かつてよりずっと次元の高い成長戦略を打ちだなくては、もはや生きてはいかれないはずです。

 ですから、いつまでも古いしがらみ、既得権益、現状維持思想、抵抗勢力、過去の成功のノスタルジーなどとは決別し、市場のトレンドが期待する抜本改革をクリエートしなくてはなりません。

 このことは日本に限りません。世界の産業界を見た時に、たとえば、イーストマンコダック社は現在、破産法を申請しています。かつての巨大企業は、最も優秀な人材が集まる企業のうちの一つであり、資金力もあったわけです。確かに写真フィルムの製造において、最も売上が大きく、消費者の支持を得ていました。

 しかしながら、時代は写真フィルムからデジタルカメラの時代になりました。実は一番にデジタルカメラを開発したのは、イーストマンコダック社でありながら、写真フィルムの売上が落ちることをおそれ、デジタルカメラへの投資を怠ってしまったことを伝えておかなければなりません。当然、不特定多数の消費者たちは、過去の遺産には見向きもせず、ほしいという欲望のままに、常に新しく便利な商品を求めます。

 したがって、写真フィルムの時代は完全に終わり、デジタルカメラがライフスタイルに溶け込み、さらには、スマートフォンにもデジタルカメラ技術など簡単に組み込まれていきます。すべては変わりゆく市場が決定することになります。

 いみじくも、進化論を提唱したイギリスの自然科学者チャールズ・ロバート・ダーウィン(Charles Robert Darwin)はこう言います。

「生き残る種とは──最も強いものでもなければ、最も知能の高いものでもない。変わりゆく環境に最も適応できる種が──生き残るのである」

 最も資金力ある強者であり、最も優秀な人材が集まる企業でありながら、イーストマンコダック社は生き残れなかったわけです。なぜかというと、まさにダーウィンの語る通りです。変わりゆく環境に最も適応できる種ではなかったからです。

 一方、日本の富士フィルムは、勝ち組企業の一つと言われています。圧倒的にイーストマンコダック社が世界トップをひた走った時代がありながら、この逆転現象はどのように生まれたのでしょう。富士フィルムは、写真フィルムの精密なナノテクノロジーを活かし、今では化粧品や医療機械を成長の柱としています。それこそ変わりゆく環境に合わせて、写真フィルムに見切りをつけ、新しい成長分野を開拓したということです。

 さて、このことは、教育の世界にも言えます。世界の産業の在り方が変わるなら、そこで活躍する人材の質も変わります。そうすると、世界の市場が求める人材を送り出すのは教育の役割ですから、教育もまた変わらなくてはなりません。成長戦略なくして教育を語れない時代です。