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個別・少人数集団の塾「あっぷ指導会」
船堀校(あっぷ船堀)

[2013年7月25日]

市川市本八幡の進学塾:ゲーデルの不完全性定理

 かつて数学の世界の大巨匠、ヒルベルトは、「数学理論に一切矛盾はなく、どんな問題であろうと、真偽の判定が可能であること」を証明しようとしました。

 ところが、1930年、何と、クルト・ゲーデルが、不完全性定理を発表します。「数学理論は不完全なものであって、いかなる矛盾のない公理的体系の中であっても、真偽を決められない命題が存在する」

 これまで、「論理を駆使していけば、どんな問題であっても、真か偽の判断がつき、その判断を重ねていけば、いつかは真理に到着する」と信じていた人間たちは、ゲーデルの不完全性定理に衝撃を受けます。

 そうすると、真か偽か解けない命題に、無駄な時間を費やしてしまうことになりますから、それを回避するすべがほしいところです。しかし、アラン・チューリングは、「真か偽の判断がつかない命題であるかどうか、有限回の操作で知る方法など存在しないこと」を証明してしまいます。

 ただし、アラン・チューリングのこのときの研究が、今日のコンピュータの理論につながります。皮肉にも、数学に限界があることを示した、この不完全性定理と結びつくことで、コンピュータの着想が生まれ、ゆくゆくはコンピュータの性能が向上することで、たくさんの謎や神秘を解明することになります。

 繰り返しますが、実に、実に、皮肉な話です。何とも、“真偽を決められない命題”があることを証明しておきながら、ここを出発点とし、速やかに“真偽の判断を見極める”コンピュータが誕生していくわけですから、不可思議なつながりと表するしかありません。ちなみに、チューリングが考案した仮想的計算機を、チューリング・マシンと言います。

 確かに、コンピュータの進化には目覚ましいものがあり、ついには、チェスの王者がコンピュータに敗れ、日本では先ごろ将棋のプロ棋士がコンピュータに敗戦するというニュースが伝わりました。

 また医療の分野では、2003年、コンピュータの解析技術によって、ヒトのゲノムの全塩基配列を解析するプロジェクトが完遂しました。さらには、全人種の先祖が、アフリカの一人の女性から始まったことも、コンピュータによる遺伝情報の解析によってわかっています。

 言うなれば、多くのことが判然としてしまう時代にありますが、一方でゲーデルの不完全性定理の証明が覆されるわけではないので、世の中には多くの割り切れない問題があり続けます。いざ社会に出てみると、問題集についている答えのようなものはなく、多くの場合、資本主義の大きなマーケットの中で、一つとは限らない答え、すなわち、需要者のニーズを求め続けなくてはなりません。

 それに比べると、学生時代の学習には、答えがあります。問題の論点を理解し、きちんと一つ一つプロセスをたどることができるなら、一つの答えへ行きつくようになっています。

 まさに今、当塾本八幡校では、夏学習期間にあり、受験勉強の最盛期にありますが、ぜひとも、無矛盾の答えがある正攻法の学習を通して、どこまでも成長してほしいと願います