[2013年7月31日]
一般的に仕事の内訳が、コミュニケーション7割:デスクワーク3割といわれる時代です。要するに、人との関わり、チームとの関わりがないと、うまく仕事がはかどらないということです。
もちろん、個人一人一人に、優れた処理能力があるかどうか、それぞれが役割を持ち、責任を果たせるかどうかも、当然求められます。この大前提があった上で、コミュニケーション7割というように、インタラクティブな情報交換能力を高めていかなければなりません。
では、どうしたら、仕事の肝となる情報の送受信がうまくいくか──この論点を掘り下げる必要があります。
そもそも、人間は思考する際、脳内で豊かなイマジネーションを思い描きます。しかし、それをそのまま、相手にテレポーテンションすることはできません。ひとつ何かの絵を描いて伝える方法もあるでしょうが、それよりもずっと言語という記号は便利です。思い思いにかたどったイマジネーションを、口頭でも、書面でも言葉という記号に変換して、それを介することで、情報を共有することが可能となります。
したがって、様々な技術を通して、情報リテラシーを高めることのできる国語の読解力の向上は、欠かせません。どうしても日本で生まれてきた以上、日本語を用いてコミュニケーションする機会が多いので、受信するにも送信するにも、うまく日本語をハンドリングする必要があります。ただ正直言って、昨日のブログでもお伝えしましたように、英語に比べて、日本語は、実に厄介な言語だということを、付け加えておきます。
ちょうど学びの段階にある学生たちにとって、言うなれば、彼らが行き着く最終進化系は、現代文マスターへとのぼりつめることではありません。入学試験のハードルをクリアするために、現代文の読解スキルを高めるとしたら、手段を目的化しているということです。
もっと次元を高めるべきです。彼らの進化の先にあるのは、仕事場です。大切なのは、書類の読み取り能力や書類の作成術、大衆の前でも、小数の前でも、威力を発揮するプレゼンテーション力、インタラクティブな情報館能力ではないでしょうか。いずれもコミュニケーションにおいて有益な力です。ぜひとも、未来ある学生たちには、まさに今から、本物の情報送受信のマスターを目指してほしいと願います。
さて、ゴールの定義づけができたなら、その手前にある、現代文の攻略は随分とハードルが低くなったという印象になるでしょう。
これまで近視眼気味だった人たちは、きっとてっとり早く高得点を獲得する方法ばかり考えるか、それがないと判断すると、運を天に任せて、読解問題をやってきたに違いありません。
技術的なことを申し上げると、種々設問を解く解法技術があるのは、事実ですし(選択問題の選択法、記述問題の作成技術などがあります)、何度かそれについては本ブログでもご紹介してきました。しかしながら、若い才能たちが、先ほどの最終進化系になるために、現代文対策講義を利用するなら、何をおいても、正確に言葉という記号を読み取ることから始めなければなりません。
ここは解釈の力です。言ってしまえば、正確に文章を読み取れているかどうかを確認するために、一つ一つの設問があると思った方が正しいともいえます。
ひとつ挑戦していただきたいのは、あらすじ訓練です。一度読み終えたらなら、全く文章を確認することなく、全体図(一論点・一帰結)の説明をできるようにすることが、この訓練の真骨頂です。これに反して、部分、部分を切り取り、バラバラにして理解しがちなのが、えてして、国語を不得意とする人たちの典型思考といえます。
とどのつまり、話し言葉にしろ、書き言葉にしろ、これを理解するということは、言葉という記号を、あますところなく、映像へ変換することです。いったん映像化できたなら、作者の主張の一軸に留意した上で、この像に様々な言葉の表現をあてることになりますが、これこそ、本物のあらすじです。
あえて繰り返しますが、本当に完全理解できたかどうか、確認する方法が、一つ一つの現代文問題の設問です。そして、この全体理解の力は、受験勉強を超えます(超えるということは、やはり、相対的に受験レベルの壁の低さに気付くことでしょう)。
いざ社会へ出て、仕事をする段となったとき、効果てきめんです。まさに、学生時代の現代文のあらすじ訓練が、大いなる成果をもたらすことでしょう。しっかりと速やかに資料を読みこなし、これをテコとして、とてもわかりやすくプレゼンテーションできる、優れた仕事人となっているはずです。