[2013年10月29日]
メジャーリーガーやプロゴルファーなどの世界では、優れたアスリートには、優れたコーチがつきものです。その中でも俄然注目されるのが、メンタルトレイナーの存在です。
どうしても、スポーツは体が資本ですから、昔からフィジカル面のトレイニング抜きには語れぬものでしたが、さらに選手間、チーム間の競争は進んでいます。今では、競技の勝敗のため、記録のために、メンタルトレイナーが中心となり、脳科学や心理学までも駆使されます。
つくづくメンタリティーの改善が求められる時代です。いったん就職すると、仕事においては、自己啓発型の研修へ参加することは決して珍しくありません。
たとえば、京セラグループでは、京セラグループの経営の原点は、創業者である稲盛和夫氏の実体験や経験則にあるとして、それらをまとめたのが「京セラフィロソフィ」と言います。このいわば、哲学書は、社員の意識改革を促すための、メンタルトレイナーの役割をします。
やはり教育の話に移りますが、教育の世界でも、自発性、主体性、やる気などという言葉が飛び交います。スポーツや仕事同様に、何よりもメンタル面の強化なくして、学習効果は望めません。学習への気持ちが発火していないのに、いくら学習技術を与えても、徒労に終わってしまうだけです。そうすると、教育者は、メンタルトレーナーであり、モチベーションをかき立てるモチベーターであるべきです。
さて、本人の意欲を喚起する方法論を提示するのなら、子供たちに将来の目標を持たせることが一番です。将来就きたい仕事への欲求を高めることによって、今取り組む学びの価値が引き上げられます。
また人間が本来持つ知的好奇心をくすぐってあげることも大切です。もちろん学習塾ですから、定期テストや入学試験へ備えることは当然といえば、当然ですが、彼らが興味を抱く学問的な話を織り交ぜてあげることも、講師陣の力量として問われます。
今ぱっと思いつく内容ですが、数学の世界なら、フェルマーの最終定理やリーマン予想、理科の世界なら、アインシュタイン以前とアインシュタイン以降の物理学の話などがよいかもしれません。あるいは、英語なら、日本と西洋の根本的な思想、文化の違いなどを伝えることで、学問への関心を高めたりします。
やはり、子供たちは生身の人間ですから、言うなればベルトコンベアの流れ作業のように学習を進めるわけにもいきません。
いかに子供たちの心の導火線に火をつけられるかどうかということになりますが、優れた指導者ならば、まさしく人間の知性を躍動させるストーリーテラーを目指すべきではないでしょうか。