[2013年12月5日]
宮崎県の南東部に小さな島が浮かんでいます。この島を幸島といい、現在約百頭のサルが暮らしています。
幸島のサルの研究が京都大学の手で始まったのは、太平洋戦争が終わって間もなくのことで、この長年積み重ねられた研究は、今では世界的にも注目されています。
その中でも興味をひくのは、文化の発生です。
貝食や魚食、イモ洗いなどを行うのが、幸島のサルの特徴ですが、それらはもとからあった慣習ではありません。すべての出来事には必ず始まりがあります。
決まってこのような文化の発端を担うのが、好奇心旺盛な若いサルです。一方どんなに名君と讃えられたボスザルだろうと、新しさを生み出すことはありません。若いサルたちが、海に落ちたイモを泳いで拾いにいくのに対し、意気地のない年配のサルは、歯がゆい思いで耐え、決して海にとびこむ真似はしません。老いたサルはいつだって保守的で、群れの安全ばかりに気をつかいます。もちろん、それが悪いというわけではありませんが、強調すべきは、冒険心のある若いサルが、新しい文化をつくるということです。固定観念に縛られない彼らが、群れに活力を生み出すのです。
そしてその仕組みは、人間にも言えます。
はたまた、それは、あっぷの教室内でも言えます。
要するに、新しい発想を生み出すのは、若い先生方だということです。もっといえば、さらに若い生徒たちの方が、教室に好影響を与える文化を創出する可能性があります。
あれはしちゃ駄目、これをしちゃ駄目と、保守主義の大人は子供へ制約を与えがちですが、それでは彼らの柔軟な思考を停止させることになります。
それよりも、子供特有の「まずはやってみよう」と思うチャレンジ精神をくすぐることが大切です。
ところで、中学入試で大成功を収めたある生徒のノートづくり、ファイルづくりが話題となり、この文化があっぷで一層浸透しています。
子供たちを見て、思わず「すごい」と感心してしまうのは、文化をただ踏襲することで満足しないことです。従来の文化に新しさを組み込もうと工夫します。ノートやファイリングしたプリント類を見ると、自分なりの絵や図をくわえています。記憶の忘却時にこのファイルを見ることになりますが、このように思考の痕跡が残っていることで、それが記憶を引っ掛けるフックとなり、すぐに失った記憶が鮮明に甦るはずです。
なるほど、と子供たちの創意工夫に感嘆の声をあげずにはいられません。
幸島のサルにもいえることですが、年長者こそ、子供たちからたくさん学ぶべきです。