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個別・少人数集団の塾「あっぷ指導会」
船堀校(あっぷ船堀)

[2014年1月19日]

船堀の進学塾:ソーカル事件の真相

 1994年、当時最も人気のあった人文学系の評論雑誌の一つ『ソーシャル・テキスト』誌に、『境界を侵犯すること:量子重力の変換解釈学に向けて』(Transgressing the Boundaries: Towards a Transformative Hermeneutics of Quantum Gravity)と題した論文が投稿されます。

 そしてこの論文、ポストモダニズム派の研究者らの査読の末、1995年受諾、1996年に『ソーシャル・テキスト』誌にポストモダン哲学批判への反論という形で掲載されました。

 後に同誌編集者は、この件で見事イグノーベル賞を受賞することになりますが、一体何が起こったのでしょう。念のために付言しますが、イグノーベル賞というのは、ノーベル賞のいわゆるパロディ版で人々を笑わせる研究に与えられる賞です。

 実はこの論文の作り手はニューヨーク大学物理学教授だったアラン・ソーカルで、ポストモダニズム派の研究者が喜びそうな数学らしき記号をでたらめに羅列し、彼らを試したのです。

 本当に人の悪いソーカルです。わざと放射性物質のラドンと数学者のヨハン・ラドンを混用したりと、自然科学の高等教育を受けていればおよそお粗末な仕上げだいうのだから、ひどいものです。

 まさに彼の思惑通り、この擬似論文に食いついた衒学の権威たちは、赤っ恥を欠かされ、「用語の意味もろくに知らず科学的用語をひけらかしている」などとこき下ろされることとなります。

 この擬似論文事件こそが、世に知られるいわゆるソーカル事件です。

 こんな話を聞くと、学問が随分といい加減なものであると思われたかもしれませんが、ソーカルが指摘するように、哲学、人文科学、あるいは社会科学を研究する裸の王様は、ごく一部に過ぎません。

 しかし学びの中でどんなレベルにあろうと、非論理的に知った風を装っていれば、鼻っ柱をいつ折られるかわかりません。謙虚に学問に励み、真実を見極める目を養う必要があるのかもしれません。