[2016年9月2日]
教育関連ニュース
○ 新学習指導要領「審議まとめ案」 公表
・「アクティブ・ラーニング」(AL) 能動的な学習の取り入れ
自ら学習に向かう「自主的な学習」
児童生徒同士や教員・地域の人々と協働的に学習する「対話的な学習」
習得した知識、考え方を活用し,問題を発見したり、解決したりする「深い学び」
「何を学ぶか」という指導内容に加えて「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」という視点から見直した。「どのように」という学びのプロセスでキーポイントになるのが「アクティブ・ラーニング(AL)」である。
一方的な講義と異なり、学ぶ側の能動的な参加を取り入れた指導・学習方法の総称。発見学習や課題解決学習、グループディスカッションやディベート、グループワークなども有効とされている。
文部科学省は「学習内容を深く理解し、社会や生活で活用できるようにするには、知識の量だけでなく、質も思考力も必要である。ALの視点に立って、学習の質的改善を目指す」としている。
小 学 校
意識すべき資質能力として三つの柱を挙げている。
・知識・技能(何を理解しているか、何ができるか)
・思考力・判断力・表現力等(理解していること、できることをどう使うか)
・学びに向かう力、人間性等(どのように社会・世界と関わり合い、より良い人生を送るか)
・小学校5・6年生の英語は「外国語活動」から教科に格上げ
週2コマ分(1コマ45分)で、「読む・書く」の領域のを加えて年間の授業時数は70コマ分に倍増。他教科も合わせた年間の総授業数は1015コマ分になる。国の検定を受けた教科書が使われ、身近な単語や文章の読み書きが始まる。
小学校3・4年生は30コマ分(週1コマ分)の「外国語活動」が始まり、「話す・聞く」が中心の現行の5・6年生と似た内容になりそうである。」
また、「プログラミング教育」も加わる。コンピューターに指示を出す作業を体験し、基礎的な「プログラミング的思考」を身につけるのが目的。「総合」「理科」「音学」「算数」など学校の決める教科や活動の中で行う。
討論や発表を通して主体的、協働的に学ぶ「アクティブ・ラーニング(AL)」も本格化。
児童の負担などから週の授業時間の限界は28コマとされているが、年間標準授業時数(最低限度の授業時間)は1015コマ分、週29週相当になる。
文部科学省は、モジュール学習(始業前の短時間学習など)を使うことを想定しているが、すでに読書や計算に活用している学校が多い。このため、柔軟な時間割編成を可能にした。
中 学 校
○ 義務務教育9年間を見据える
9年間を通じた資質・能力の育成を図る。その成果を高校で受け止め、学習課題に応じ、学び直しを行うなど、高校における「共通性の確保」を確かなものにしていくことが必要。
高校への指向性、高校での新教科、科目構成との接続を含めて重視する。
小・中・高を見通した改善・充実を図るため、グローバル化への対応、政治参加、プログラミング教育、各教科等の課題に応じた教育内容の見直しを行う。
中学生の思春期特有の多様な課題に対応するために、教職員、地域の意識、「カリキュラム・マネジメント」を軸に一体化していく重要性がある。
部活動で「深い学び」は「生徒の自主的、自発的な活動」として教育課程の外に位置付けられている。新学習指導要領でもこの扱いは変えず、関係教科と関連付けた「深い学び」の実現を提案し、休養日や活動時間を適切に設定するように求めた。
文部科学省は、中・高校の運動部活動について休養日の設定を含めた改善策を発表。実態を調査し、どのような休養日設定が適切か、基準をつくる。
高 等 学 校
・新設「公共」で主権者教育 (高等学校)
当初から高校を議論の中心に据え、地理歴史や公民などで科目を再編し大幅に内容を見直した。
【地理歴史】全科目を再編。
・『歴史総合』… 世界と日本の18世紀後半以降を学ぶ必修教科。
・「世界史探究」「日本史探究」…通史を学び、歴史上の事象の意味や愛岐を広く深く考察。
・「地理総合」… 必修。選択教科として「地理探究」を置く。
【公民】主権者教育を担う必修教科 『公共』 の新設。
模擬選挙や模擬裁判、ディベートなどを通じて地方自治や雇用、司法参加、契約などについて幅広く学ぶ。「現代社会」は廃止。
「倫理」「政治・経済」も思考力を重視する方向で内容を刷新。
【国語】「現代の国語」と「言語文化」の新設。
・「現代の国語」… 論述や議論を通じて表現力を伸ばす。
・「言語文化」 … 古典を中心に現代とのつながりも学ぶ。
(選択教科)「現代文A」「現代文B」「古典A」「古典B」が「論理国語」、「文学国語」、「国語表現」、「古典探究」となり各4単位。
【理数】数学と理科を活用して多角的に思考する選択科目「理数探究基礎」「理数探究」の新設。
【外国語】英語が6科目に。
・「英語コミュニケーション?、?、?」… 「読む・聞く・書く・話す」の4技能を育成。
(「英語コミュニケーション?」は、中学校の学習の定着させる内容を含む。)
・「論理・表現?、?、?」…苦手な生徒が多い「話す・書く」の発信力を伸ばすため、スピーチや発表、議論が中心。
【情報】「情報?」…必修。
「情報?」…選択。
・プログラミングを両教科に組み込み、全員が学ぶようにし、情報技術の活用力やコンテンツの創造力を育む。
○ 新共通テスト 記述式は各大学が採点?
大学入試センター試験に代わり2020年度に始まる共通テストで導入予定の記述式問題について、文部科学省は、受験生が出願した大学が採点を担う方向で検討し始めた。科目は当面国語のみとする。記述式はマークシート式と違って機械的に採点できず、どう処理するかが問題になっていた。この案が採用されれば、記述式の導入にめどが立つ。
新テストは現中学2年生から受験する。記述式の導入は、思考力や判断力、表現力を重視する今回の入試改革の目玉とされている。
○ 無利子の奨学金 成績基準緩和へ
大学生向けの無利子の奨学金について、文部科学省は、来年度から、低所得の家庭の学生には成績の基準を緩める方針を固めた。高校の成績が5段階評定の3.5を下回っても借りられるようにする。2017年度予算の概要に盛り込む。
国の奨学金は月額3万〜12万円の範囲で選んで借りられ、卒業後の返済月額は一般的に1万円前後。今年度予算ベースで有利子奨学金(7月現在で年利0.1%)は約84万4千人、無利子は約47万4千人を対象にしている。
有利子には明確な成績基準はないが、無利子は評定の平均が3.5以上あることを申請の条件にしている。
政府は有利子の対象者を減らし、無利子を10年前から約15万人増やした。それでも無利子の奨学金を希望する学生全員にはいきわたらず、条件を満たしているのに借りられない学生は約2万4千人いる。
このため、文部科学省は、条件を満たす学生全員に貸与できるように予算要求する。さらに経済的に苦しい家庭の子どもについては成績基準そのものを緩めて対象を広げる方針。
奨学金制度を巡っては、文部科学省は困窮世帯を中心に返済の要らない「給付型奨学金」の制度を新設する方向で検討している。
○ 小学校での暴力行為 全国で1万件超
小学生による暴力行為が増えている。2014年度は全国で1万1千件以上が報告され、過去最多を更新。文部科学省によると、感情をコントロールできない子どもが増えていることが背景にあるという。「繰り返し暴力をふるう子が増えている」と現状を注視。担当者は「低年齢化を防ぐため、地域や警察などと連携した体制をつくるように働きかけていきたい」と話す。