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加藤学習塾
【岡山県岡山市の進学塾】

[2017年3月3日]

感想文がスラスラ書ける!秘訣を専門家が伝授 

感想文がスラスラ書ける!秘訣を専門家が伝授

 長期休暇の宿題の中で、ご家庭でもっとも頭を悩まれるのが読書感想文ではないでしょうか。エリアベネッセ青山で行われた卯月啓子先生の読書体験イベント「読み読み教室シートン動物記「オオカミ王ロボ」を読むを取材し、読書感想文を楽しく書けるようになるポイントをレポートします。
 講師の卯月啓子先生は、ライブ授業クリエイターとして、子ども主体のオーダーメイド授業を各地で繰り広げています。参加した子どもの保護者のかたの中には、「卯月先生のファンで、先生の色々な教室に参加しています」というかたもいらっしゃいました。

● 自分の意見を言えると、読書と読解はもっと楽しくなる

 読書感想文や文章の読解は、体育や家庭科といった実技教科と同じで、理論を学べば直ぐに実践できるようになるものではないという卯月先生。「今回のイベントでは、みんなで同じ本を読む中で質問を繰り返し、子どもたち全員に発言をしてもらいます。いろいろな発言が出てくると思いますが、それを否定するようなことは一切言いません。それは、『正しい読解』というのは、存在しないからです。お友達の色々な意見を聞いたり自分の意見を発言したりすることで、色々な面から一つの物語について考えられ、それが読解できたということになり、楽しい読書経験につながるのです。」

● 早口での読み聞かせだからこそ物語に集中できる

 全員に本が配られ、いよいよイベントがスタートします。
「読み読み教室」では、子どもたちが順番に本を音読するのではなく、卯月先生が読み聞かせをします。驚くのは先生が物語を読むスピードの速さです。早口といえるようなスピードで、どんどん文章を読み進めていきます。子どもたちは先生の読むスピードに合わせながら読んでいる文字を指でなぞりながら読み進めていきます。 「普段、本を読むときは黙読をすることが多い一方で、授業では物語を音読することが多いでしょう。そうすると、子どもたちは自分の黙読のスピードの方が早いので、自分で先を読んでしまいます。これだと、頭の中に雑念が入ってきたり、流して読んでしまったりするのです。わたしが早口で音読していても、耳で聞いて、指でなぞって、目で読むということで、文字を言葉に変換することで物語の世界が理解でき、さらに集中して物語を読み進めることができるのです」。
 子どもたちも、物語の臨場感に合ったスピードで読み進めながら内容をしっかり理解している様子です。読み聞かせの途中に挟まれる先生からの問いかけにも、1年生から5年生まで学年も違い学校も違う子どもたちから次々と手が挙がり答えていました。

● 否定されないから、自分の意見を発表したくなる

 「学校の授業では手を挙げて発言しないのに、今日はどんどん手を挙げているから驚きました」とおっしゃる保護者のかたがいらっしゃったほど、自主的に手を挙げる子供たちが続出。なぜでしょう。
 「『全員指しますよ』と、あらかじめ言っておくことがコツです。はじめは順番に当てていって、わたしはその子どもたちの意見について、「そう思ったんだね、すごいね」と言ってあげると、子どもたちも気持ちよく自分の意見を発表できますからね。元気のないクラスでこの授業をやるときでも、最初からそう言っておくと、うなだれていた子どもたちがだんだんイキイキとしてくることがわかりますよ」と卯月先生。

● 豊かな感想を持つことが感想文に繋がる

 「思ったことや感じたことを口にしてみることが、読書感想文を書くときの基になります」と卯月先生はおっしゃいます。実際、イベントの終了後に話を聞いた子どもの中には、「本を読んで発表したことをそのまま読書感想文にすればいいんだね!」「みんなの意見も聞けたから、今年は読書感想文が楽しく書けそう!」と話してくれた子もいました。
 「読書感想文で一番困ってしまうことは、『感想がない』ということですよね。読書の段階で豊かな感想を持たせるには、本を読みながら家族で感想を言い合うのが一番です。保護者のかたも、子どもに『本を読みなさい』というだけでなく、同じ本を読んで『私はこう思ったけど、あなたはどう思う?』と会話を楽しんでみてください。当然、家族の中でもお母さんの読みかた、お父さんの読みかた、きょうだいの読みかたは少しずつ違ってくるかもしれません。そうした意見を聞きながら交流ができれば、豊かな感想がどんどん引き出せるはずです」。と卯月先生はアドバイスします。

 そしてこのとき、保護者のかたに気をつけてほしいのは、もし子どもが本を読んで『つまらなかった』と言っても怒らないでほしいということ。「そんな時は『どうしてつまらなかったの?』と理由を聞いてあげてください。本の読み方や面白さは人それぞれに違いますから、『長かったから、つまらなかった』など、その子ならではの意見が出てくるはずです。面白くなくても、どうして面白くなかったかが書ければ、読書感想文になりますよ」。

● 家庭で話した感想を書けば、読書感想文になる!

 読書感想文の書き方については「1.読書」→「2.下書き」→「3.清書」の3ステップで書くのがおすすめですという卯月先生。家族での読書を通して豊かな感想を引き出せたら、次はそれを下書きにまとめる作業をします。
 「読書感想文は、『はじめ』『なか』『まとめ』と3つの構成で書くことが多いかと思います。『はじめ』には、どんな話なのか、またはどんな人に読んでもらいたいのかを書きます。豊かな感想がいきてくるのは『なか』の部分です。本を読んで自分が思ったこと、家族に話したことを積み重ねていけば、どんどん原稿用紙は埋まっていき、項目が変わるたびに段落を変えていけば書けてしまいます。実際に自分が体験したことや、他の本で読んだことと比べることができると、ぐっと深みが増していきます。『まとめ』には、書き手がどんなことを思って本を書いたのか、作者に想いをはせてみるのもいいでしょう」。

● 多面的な読み方ができる「名作」がおすすめ

 読書感想文にとどまらず、親子で楽しい読書体験をするための本選びのコツはあるのでしょうか?
 「学年によって選ぶ作品は違うのですが、いわゆる名作と呼ばれている作品がおすすめです。宮澤賢治作品や芥川龍之介作品もいいですね。名作には、いい意味で読者への裏切りがあり、勧善懲悪的なものが少なく不条理や理不尽さもあり、考えや感情を激しく揺さぶってきますから多面的な読み方ができて、どんな読み方をしても間違いというのは有り得ないんです。だからこそ、ご家庭や友達同士で感想を言い合うと、様々な意見が聞けて面白いですよ」。
 また、大人は子どもに、学年や年齢に合った本を読ませようと思いがちですが、必ずしもそれにこだわる必要はないと卯月先生はおっしゃいます。「一見、小学生には難しそうな本に思えても、年齢によって受け止め方は変わるものの、その時々の等身大の感覚で内容を理解して、自分なりの感想を持つことはできます。挿絵が無い本でも、文字からしっかり読解することはできるものです」。

 読書の楽しさを伝えるには、親子で本を読んで感想を言い合うのが一番だという卯月先生。イベントに参加された3年生の保護者のかたは、「これまで子どもと同じ本を一緒に読むという発想がなかったので、これからは自分も読書を楽しみたい」と感想を話してくださいました。
 ご家庭でもお子さまの感性を豊かにする読書体験ができるといいですね。