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加藤学習塾
【岡山県岡山市の進学塾】

[2011年6月29日]

新しくて古い英語の学習方法

新しくて古い英語の学習方法
<授業で、音読やリスニングを大事にする理由>

前回(5月号)のつづき

事前知識? 
國弘正雄著 『音読 続入門編』より

以下、英語の大家國弘正雄先生の言葉を借りていきます。

1.なぜ日本人は英語が上達しないのか

 国連には191ヵ国(2002年9月現在)が加盟していますが、このうち英語を母語とする国はたったの12ヵ国です。にもかかわらず、国際会議などはたいてい英語で行われています。インターネット上でも、交わされるコミュニケーションのうち、約8割が英語で行われているという状況です。英語はもはや英米の言語という域を出てしまい、「地球語(global language)」になった感があります。
・・・
 しかしながら、日本人が国際社会で十分渡り合えるような英語力を持つようになったのかと考えると、いささか疑問が残ります。
 英語力を測るテストの1つにTOEFLがあります。この試験のスコアを国別で見た場合、日本人受験者の平均得点は、アジア23ヵ国・地域中、ペーパー版では20位、コンピュータ版では22位という低いランクです(1999年7月〜2000年6月)。中国や韓国など文化的背景があまり異ならない東アジアの隣国と比べても、日本人の成績は伸び率と得点の両方でかなり劣っています。世界的にこんなにも豊かで・さまざまな面で自由が溢れかえっている日本、しかも英語教材や各種教育機関が充実し、学校課程や入試でも英語は最重要科目の−つとみなされているというのに、なぜこんな情けない有様なのでしょうか。

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2.ヒトが言葉を理解するプロセス

 では英語学習の方法を述べる前に、ここでごく簡単に大脳内の言語学習のプロセスを説明しておきましょう。そもそもヒトの言語というものは、大脳の中のある特定のプロセスを経て初めて理解されるのです。何気なく日常使っている母語であっても、インプットされた言語刺激は大脳で処理されて蓄積されていきます。
 大脳の中には言語中枢があり、2つの領域に分かれています。1つは言語を受け身的に理解することを担当しており、発見者の名前をとってヴェルニッケ中枢(言語理解領野)と呼ばれています。他の人が話した言葉はここに入ってきて理解されるのです。そのそばにもう1つの領域、すなわち言語を能動的に使うことを担当するブローカ中枢(言語動作領野)があり、同じく発見者の名前をとってこう呼ばれています。ここでは、のどや唇、舌などを動かして言葉を発する指令がなされるのです。この2つは隣り合わせになっており、お互いに相互作用をしながら機能しています。
 例えば、何かに書かれた文字を見ると、目から入ったそのメッセージはまずヴェルニッケ中枢へ送られて理解されます。今度はそれを口に出して音声化してみようとすると、そのメッセージはブローカ中枢へ伝えられ、ここでメッセ−ジは音声という媒体を用いて発信するよう指示を受けます。そうすると、今まで目で理解していた視覚言語が音声言語化され、口から音声を発することになるわけです。そうして発せられた音声を自分の耳で聞き、再びヴェルニッケ中枢でその正否を理解するという具合です。言語能力を蓄積していくには、この2つの中枢の連携を活性化させて・常にメッセージが循環するような回路が必要なのです。
 2つの中枢の間でのinteraction(相互関連)を頻繁に引き起こしていけば、知識が肉体化され、受け身の知識だけでなく、能動的に使える知識となって身につきます。これを身体(からだ)の中にたたき込む、という意味で「内在化(internalize)」と言います。大脳内のこういったプロセスは、母語を習得する場合には意識しなくても自然に機能しています。
 ところが、外国語を学ぼうとする場合には、このような機能は自然には働いてはくれません。だから、この循環が繰り返し行われる環境を人為的に作り出してやる必要があります。

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3.まずは構築したい「英語回路」

 「先生、英語がなかなかうまくならないのですが、どうやったら話せるようになりますか」と質問されることがあります。
 こんな質問を受けた場合、「あなたは、声を出して読んでいますか」と私は逆に聞き返すようにしていますが、「はい」と元気な返事はなかなか戻ってきません。ほとんどの人が「いいえ……」と言って口ごもります。声を出さないで英語を勉強している人の英語力は、かわいそうなほど伸びません。
 英語を本当に身につけようとするには、大脳の中に英語を理解するための基礎回路を構築することが先決です。基礎回路ができていない段階で、雑多な新しい知識を吸収しようとしても身につきません。単語や構文などをいくら頭だけで覚えたとしても実際の場面では使えないのです。
 この基礎回路を身につける最も簡単で効果的な方法が「音読」です。目で見たことを口から音声で発する、つまりヴェルニッケ中枢とブローカ中枢の間でinteraction−最近の言葉を使えばfeedback−を引き起こしてやることです。身体のlつでも多くの感覚を使って、運動記憶に訴えてこそ、言語を自分の身体の中へ取り込む、すなわち内在化させることが出来ます。いったん内在化させた言語能力は、自分の肉体の中の血となり肉となって、広範囲な応用力を発揮します。つまり、今度はスポンジが水を吸うがごとく、触れた知識がどんどん身につくのです。
 どうでしたか、國弘正雄先生の深いことばに、自分の勉強方法を見直してみる気になったでしょうか。
 具体的には、次のような勉強方法の改善が考えられます。

? 単語を覚える時には、しっかり発音しながら何度も書いて覚える。発音のときに、アクセントの位置や難しい発音を注意して発音しておけば、毎回の定期テストでの発音問題や、アクセント問題で困ることはありません。
? 教科書の本文を何度も暗唱して覚える。どのみち教科書の本文の多くは、定期テストに出ます。全訳や穴埋め問題をこなしてテスト対策勉強をしている人が多いと思いますが、その前に何十回も暗唱していくと、覚え込もうと思わなくても覚えてしまうものです。しかも、その方が早く全訳や穴埋め問題を終わらすことができます。

 さて、そろそろ準備ができました。
 英検の準2級の女の子は、どんな英語の勉強をしてきたのでしょうか。
? インターネットによる外国人との英会話講座。これは、インターネット上でリアルタイムに外国人と自由にお話ができる講座です。もちろん外国人がリードしてより高い英語力へと導いてくれます。
? 英語の本の読書。主に、「マジック ツリーハウス」という本の英語のものを好んで読んでいました。
? 通常の英語の塾。これは普通の塾の授業です。ただし、週1〜2回だけです。

 この学習内容が、ここまで語ってきた言語の習得順序に適っていることは、もうお分かりですね。
 このまま数年経てば、たぶん、いや確実にこの女の子は、中学でも、高校でも、多分大学受験の時でも高い月謝を払って英語の塾に通う必要もなく、本人も英語で苦労することはないでしょう。安い月謝の内に、しかも頭が柔らかい時期に学べるチャンスを作った親からの何よりのプレゼントではないでしょうか。