[2012年3月30日]
中学校の教科書が変わる!
授業、高校入試も変わる!
小学校では2011年4月から教科書が大幅に刷新されましたが、中学校でも2012年から教科書が新しいものに切り替えられます。これは、日本の学校教育の拠りどころになっている学習指導要領が2008年に改訂されたことに伴うものです。そこで、その内容をみていきましょう。
★中学校の教科書が厚くなる。5教科平均では47%増、中でも理科は77%増。
どの教科も今回の改訂でページ数が大幅に増えています。しかも、いわゆる「ゆとり教育」が全面的に取り入れられた2002年度使用の教科書と比べると、数学は481ページから63%増の783ページ。理科にいたっては466ページから77%増の826ページ、全科平均でも、約1.5倍のページ数になっています。現行版の教科書と比較しても約1.3倍です。
★勉強する内容も増える。移行措置期間に変化の少なかった教科も刷新。
増えたのはページ数ばかりではありません。学習内容も密度の濃いものになっています。
教育課程をスムーズに切り替えるための「移行措置期間」には、理数系の教科が他教科に先駆けて新しい内容を取り込んで話題となりました。教科書が完全に切り替わる2012年からは、その他の教科でも刷新された内容での学習がスタートします。
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★練習問題数が約1.8倍になる教科もある。
では実際に、どのくらい学習内容が濃くなったのか。その目安となるのが教科書に掲載された練習問題の数です。
練習問題が増えたのは、学習の定着度を高めようという狙いがあるからです。
一例をあげると、数学は2427問から3273問へ846問の増加、理科は352問から622問へ270問の増加です。
しかも、これはある一社の例です。別冊で問題集がつき、大幅に練習問題の数がアップした教科書もあります。
★何のための教科書改訂か?それは子供たちの未来を論議した結果。
学習指導要領や教科書は、目新しさを求めて改訂しているわけではありません。これからの国のあり方や、子供たちの未来を見据えた論議が積み重ねられた結果として、見直しが行われているのです。
たとえば学習内容が削減された2002年の教科書は、それまでの「詰め込み型教育からの転換を図り、子供たちが本当に必要としている学力とは何なのかをつきつめたものでした。
しかしその頃から、日本の子供たちの学力低下が懸念されるようになりました。OECD(経済協力開発機構)による学習到達度調査(PISA)での日本の順位低下も、日本の教育界に大きな衝撃を与えました。
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★増えた教科書の内容を全部授業で扱うとは限らない。学習にバラつきが出ることも。
一方、「そんなに内容を増やして、本当に全部授業でこなせるの?」と心配な方もいらっしゃるでしょう。実は、新しい教科書の内容のすべてを、学校の授業で学習するとは限らないのです。
文部科学省は教科書づくりのルールを、以前の上限規定から下限規定へと変更しました。「最低限扱わなければならないことをクリアしていれば、その先どこまで扱うか、どの程度、プラスαの内容を載せるか教科書によって違って構わない」ということになったのです。
そこかわり授業でプラスαの部分まで学習するかどうかは「クラスの状況に応じて判断する」ということになりました。もちろん公立高校入試には「プラスα」の部分は出題しないといった配慮はされますが、学習内容にバラつきが出てくることは否めません。
★主要教科の授業時間はいずれも増加。中3理科は1.8倍増!
今回の学習指導要領改訂に伴って変わるのは、教科書の厚さばかりではありません。授業時間も変化します。主要5教科の3年間の授業時間を見ると、1.1〜1.3倍に増えています。
注目していただきたいことは、この主要5教科に関しては各学年がまんべんなく増加するのではなく、中3での増加率が際立っているということ。英語、数学では1.3倍、社会は1.6倍、理科ではなんと1.8倍にも増えます。
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★中3で特に増えるということに注意!早い時期から入試を見据えた学習を。
高校受験対策を考えたときに、注意していただきたいことがあります。これだけの授業時間をしっかり確保する必要があるほど、中3での学習内容は大幅に増えるということです。
中3の前半の時期に中1〜中2の学習内容を復習し、後半で中3内容も含めて定着させる…というスケジュールでは入試直前で負担が大きくなってしまうかもしれません。中3での学習内容が多すぎて、中1〜中2の復習にあてる時間の確保が難しくなるからです。
中1や中2の早い時期から、入試対策を見据えて学習に取り組んでいくことが大切になるでしょう。
★英語も授業時間数、学習する単語数ともに増える。
理数系の教科に注目が集まりがちな今回の教科書改訂ですが、高校受験などを考えると英語も気になります。
実は英語も大幅に拡充されます。
まず、学校での授業の時間数が増えます。各学年とも現在の105時間から35時間増えて140時間となります。約30%増です。
それに加えて、学習する単語数も900語から1200語へと300語、約30%増となります。
単語に関しては、単に学習する語数が増えるだけではなく、単語の意味についても扱いが広がります。例えばtakeという単語。ある教科書ではこれまでは「(乗り物に)乗る」「(写真を)撮る」など6つの意味しか扱っていませんでしたが、新しい教科書では「(授業・試験などを)受ける」なども加え、12の意味を学習します。
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★高校では基本的に英語で英語の授業を行う。中学でそれだけの英語力を身につけて。
2013年度から始まる高校の英語の授業は、基本的に英語で行われます。
もし、中学校での英語の学習が不十分だったり、苦手意識をもったままだと、入試を突破できたとしても、高校の授業では苦労するかもしれません。
中学校での英語学習の重要度が、ますます高まったといっていいでしょう。
★新たに追加された学習内容の一部は、すでに入試に出題されている。
学習指導要領の改訂を受けて、日本の教育はいま、大きな変化の流れの真っ只中にいるといえます。教科書の改訂もその一つ。もちろん高校入試も大きくかわりつつあります。
学習指導要領の改訂が公布されてから教科書が実際に変わるまでの3年間、学校では教育課程をスムーズに切り替えるための「移行措置」が行われてきました。特に数学と理科は、改訂で追加された学習項目が、教科書が新しくなるのを待たずに授業に取り込まれてきましたが、すでに公立高校の入試にもこの追加項目からの出題が増えています。
世界にも通用する学力を重視するという流れの一環でもありますが、教科書が新しくなり、新学習指導要領に沿った授業が本格化しても、この動きは変わらないものと見られます。
★さらに高校入試は、活用力や思考力を問う問題が増えつつある。
高校入試の変化は、出題形式にも表れています。前述のPISAでは活用力や思考力を要する問題が出題されることが特徴ですが、公立高校の入試問題でも同様な出題が増えつつあります。こういった問題にも対処できる力を育てることは新しい学習指導要領の狙いとも合致します。
これらの高校入試の新しい傾向は、少なくともあと数年は続くと考えていいでしょう。
新しい入試傾向をとらえた対策が大切になってきます。