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加藤学習塾
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[2012年4月28日]

教育ニュース 全国学力テスト

教育ニュース
全国学力テスト


8割超参加、初の理科
17日に2年ぶり全国学力テスト


 小学6年生と中学3年生を対象にした全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が17日、実施される。昨年度は東日本大震災の影響で、希望校への問題配布にとどまったため、2年ぶりの実施。今回は従来の国語と算数・数学に加え、初めて理科が実施される。国費で行う3割の抽出対象校と希望参加校を合わせ、全国の8割超が参加する見込み。
 全国学力テストは平成19年度に、43年ぶりに全員参加方式で復活したが、民主党政権下の22年度からコスト削減などを理由に3割を抽出する方式に変更。抽出対象外の学校は、希望すれば問題の無償提供を受けて参加することができる。
 文部科学省によると、抽出対象校は全小中学校の30・5%に当たる9709校、希望参加校は同50・7%の1万6159校で、計81・2%に当たる2万5868校が参加する。前回より7・7ポイントの増加で、全公立小中学校が参加する都道府県も、秋田や茨城、富山など21県にのぼり、前回より8県増えた。
今回は、小中学生の「理科離れ」が指摘されていることなどから理科を初めて実施する。ただ、児童生徒らの負担増に配慮し、3年に1度行う予定だ。
 また現行の抽出方式について、教育界から全員参加方式に戻すべきだとの声が強く、文科省は「数年に1度は市町村、学校などの状況も把握することが可能なきめ細かい調査の実施が必要」として、25年度は全員参加方式で実施される。     <産経新聞 4月16日(月)>

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全国学力テスト結果 小6→中3
同じ間違い・つまずき 克服できず


◆上位・下位 固定化も

 文部科学省は「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト、学テ)の結果を発表した。4回目は、民主党政権の方針で全員調査を中止、全小中学校の約30%を抽出する方式で行い、約1万校の小学6年、中学3年の計約74万人が対象になった。抽出化により、都道府県別の平均正答率は1〜2%程度の幅のある数字で示され、正確な順位は表せなくなった。今回、第1回当時の小6が中3になって参加、基本の図形問題で小6当時と同様に間違える生徒が目立つなど、つまずきが克服できていない実態も分かった。
 実施教科は、小6が国語・算数、中3が国語・数学で、それぞれ基礎知識を試すA問題と応用力をみるB問題がある。A問題は今回、難度が下がったとみられ、数学Aを除き3分野で80%前後の高い平均正答率だった。B問題は、算数・数学とも平均正答率が50%に満たないなど引き続きふるわず、国語でも「新聞記事を読んで感想を書く(中3)」(正答率52.6%)などの記述式問題で特に課題がみられた。
 これまで小数点以下第1位までの数値で示されていた都道府県別の平均正答率は、「79.1〜80.6%」のように「平均正答率が含まれる範囲」で示された。小中とも秋田、福井が上位を占めるなど、特に中3で上位・下位が固定化する傾向がみられた。一方、小6で昨年まで下位だった山口や高知が、B問題で中位〜上位に浮上するなど、独自の学力向上策で一定の成果がみられた県もあった。
 抽出調査になったことで、市町村別や学校別のデータの比較ができなくなり、平均正答率の低い自治体に教員を重点配置したり、学級ごとに対策を講じたりというきめ細かな指導が行えなくなった。
また、今回、抽出に漏れた学校の6割にあたる小中学生約89万人も希望参加方式で参加したが、希望参加の場合、学校などで独自採点・分析をするため、正確なデータの把握は難しくなった。
文科省は30日、希望参加校が自己採点の結果を分析するためのソフトを配布、結果の詳細を同省HPでも公開した。

◆直径×円周率=円の面積?

 今回の学テで初めて明らかになった、同じ子どもたちの小学6年時と中学3年時の比較。例えば、今回、中学数学A問題で出された円柱の体積を求める問題の正答率は43.2%で、生徒全体の11.9%は円の面積の求め方を「直径×円周率」などと間違えていた。小6の時に出た、円の面積の問題(正答率73.2%)でも約1割が同じ誤りをしており、テスト結果を指導に生かせていない現状の一端が浮かんだ形だ。

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全国的な学力テスト」の結果から見えること−子どもの学力を培い、支えるもの

 平成19年度から実施されている「全国的な学力テスト」(正式には「全国学力・学習状況調査」)については、その実施と公表を巡ってさまざまな議論が起こっている。この学力テスト、ランキングや地域格差が注目されがちだが、調査では子どもたちの自宅での生活習慣、学校生活や友だちとの関わり、さらに学校としての取組み等についても尋ねており、それらと正答率(正しい答えを回答した率)の関係性を分析している。その結果は報告書(「全国学力・学習状況調査結果概要」文部科学省/国立教育政策研究所)で公開されており、内容は非常に興味深いものである。
 20年度の調査結果の一部をご紹介しよう。小学校調査で児童を対象とした調査結果をみると、生活習慣については「朝食を食べる児童」、規律や友だちとの関係性については「学校の決まりを守っている児童」、「友だちとの約束を守っている児童」、「どんなことがあってもいじめはいけないと思っている児童」で正答率が高い傾向がある。また学校を対象とした調査結果をみると、正答率が5ポイント以上全国平均を上回る学校では、5ポイント以上下回る学校に比べて、「地域の人材を外部講師として招聘した授業を行った」、「ボランティア等による授業サポートを行った」、「博物館や科学館、図書館を利用した授業を行った」と回答している割合が高いという結果が出ている。
 もちろん、学習時間や学習習慣が学力に大きな関わりがあることは言うまでもない。子どもや学校を取り巻く地域環境の影響も大きいだろう。しかし、規則正しい生活習慣が身についていたり、学校や友だちとのコミュニケーションに積極的な志向を持っている子どもは学力も伴うことが多いし、また、学校を地域に開くことは子どもたちの教育にも前向きな影響があると考えることができよう。
 近年、学校を地域に開くことの重要性は強く認識されている。全国的な学力テストで小学校が1位、中学校が2位の秋田県では、公立小・中学校について住民参加による外部評価制度などを実施しており、県が政策として積極的に学校を地域に開こうとしている様子がうかがえる。また、文部科学省でも、「教育課程特例校制度」(学習指導要領等の教育課程の基準によらない特別の教育課程の編成・実施を可能とする特例制度)、「コミュニティスクール:学校運営協議会制度」(保護者や地域の声を学校運営に直接反映させる制度)など、教育のあり方を住民・地域で考え、実践していくための制度を設けている。
 こういった制度を活用するには、制度実施上の課題もあるだろうが、何より地域の協力が不可欠である。学校のステークホルダーは、子どもを持っている親だけではない。また、子どもたちの成長する力、生きる力を支えるのは教育関係者だけではないという意識を、広く地域と社会で共有していく必要があるだろう。
 地域と社会が子どもと学校に関心を持ち、関わっていくことの大切さも「全国的な学力テスト」の結果から見えてくる気がするのである。
<研究員の眼 社会研究部門 柄田 明美>