[2012年8月26日]
競争原理がどんどん広がっていく!
内申書直結テスト導入を要請へ 大阪市教委が府教委に
(2012年8月20日 朝日新聞)
○大阪市教委は、大阪府内の中学生の内申書を作成する資料として、全校の中学生を対象にした独自の「学習到達度テスト」の導入を検討するよう府教委に要請する方針を固めた。内申書に直結する府内統一のテストが実施されれば、結果は府立高校入試の合否判定に大きく影響する。府教委で議論を呼ぶのは必至だ。
○府教委は現在、高校入試の合否判定で使われる中学の内申書に、全国で唯一「相対評価」を用いている。各中学が生徒を一定割合ずつ10段階の評価それぞれに割り振る仕組み。だが橋下徹市長は従来、周囲の生徒の成績には左右されない「絶対評価」への変更が必要だと主張しており、府教委も評価方法の見直しの検討を始めていた。
○この動きを受けて、市教委は非公式会合を17日に開き、府教委による相対評価から絶対評価への切り替えを受け入れる方針を固めた。さらに、絶対評価に移行するなら学校ごとに評価基準にばらつきが生じないよう、学習達成度を統一的に測るテストが必要、という認識で一致したという。
私のコメント
◇高校入試資料に、絶対評価が導入されたのは、2002年の教育改革以降のことです。絶対評価は、高校入試の選抜資料には、そぐわないと言われましたが、それは、評価基準が先生ごとに変わってしまうからですが、全国の都道府県では導入されて、今を迎えています。
◇大阪府だけは、そのデメリットを把握して、相対評価の内申点を選抜資料にしていたのだろうと思っていました。しかし、ここに来て、内申点を絶対評価にし、その代わり公平な選抜資料として、内申点が機能するために、「学習到達度テスト」を導入しようと大阪市が大阪府に導入の検討を依頼しました。それが今日の記事です。
◇この記事にあるようなことが本当なら、何か順番が違っていないでしょうか。内申点を相対評価にしておけば、わざわざ「学習到達度テスト」を導入しなくてもいいではないのでしょうか。ある程度の公平性は、相対評価の場合は、担保できるからです。
◇「学習到達度テスト」の導入が出てきたそもそもの議論は、多分、学力低下の問題を解決する方策として、「学習到達度テスト」の導入が出てきたのではないでしょうか。高校入試の選抜資料になるようなテストを中学校のある学年に課して、皆で勉強を強いていくような状況を作りたかったのではないのでしょうか。
◇もしそうだとすれば、はっきり言えばいいのです。それを、巧妙な言い訳をして導入をしなくてもいいのではないのでしょうか。大阪市・大阪府は、競争原理を徹底し、学力だけを上げるために、教育を考えると宣言すれば、良いのです。
◇以前にも書いたことですが、競争原理を導入していけば、どんどん価値の画一化が生じて、勉強ができない生徒は、どんどんできなくなり、勉強ができる生徒は、どんどんできるようになり、二極化が更に進行します。
◇この競争原理に乗れない生徒は、どんどん教育からは遠ざかっていきますし、学校も競争原理のそぐわない生徒や教師は、排除していくようになります。そうなれば、地域の教育力は、機能しなくなり、公共性の高い市民は、どんどん少なくなっていくのです。
◇もし、こんな事態になったら、社会は荒廃していってしまいます。教育のつけは、将来に及びます。この点をもう一度考えて、教育施策を採択してほしいと思います。