[2012年9月12日]
願い = 強くなれ、優しくなれ、そして幸せになれ
幸福なんだ、この人たちは。自分という馬鹿者が、この二人のあいだにはいって、いまに二人を滅茶苦茶にするのだ。つつましい幸福。いい親子。幸福を、ああ、もし神様が、自分のような者の祈りでも聞いてくれるのなら、いちどだけ、生涯にいちどだけでいい、祈る。
(太宰治「人間失格」より)
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◆死を目前にした親の、子供達に対する願い
前のページに載せた「ふたりの子供たちへ」は、『飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ』という本の一部です。この本を書いた井村和清さんは、自分が病気でもう助からないと知ったとき、残された時間で本を書くことを決意しました。そこには、自分が出会った人たちへの感謝の気持ちや、何より残される二人の子供達の幸せを願う思いが込められています。教育の仕事をさせてもらっている私にとってこの本は、もっとも大切な「人の幸せを願う心」を思い出させてくれるバイブル(聖書)です。
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◆人間にとってもっとも大切なこと…それは幸せになること
人はみんな結局、幸せを求めているのだと思います。みんな幸せになりたくて日々、思い、感じ、考え、行い、悩み、苦しんでいるのだと感じます。人を幸せにできる人が素晴らしい人間であり、結果として人を不幸にしてしまうことはとても悲しいことなのだと思います。
塾はもちろん学習面を伸ばすところですが、子供が塾を出た後の数十年間の幸せを思ったとき、合わせて人間面を育てることはもっと大切だと思います。塾・学校の先生の中には、自分の言うことは聞く、自分の授業だけは良い、という人が指導力のある先生だという雰囲気がありますが、それはむしろ相手によって態度を変える人間を育てたことになり、決して本物の人間を育てたことにはなりません。本当の指導とは、幸せになれる自立した人間を育てることだと私は考えます。ですから例えば、私個人は質問にこだわります。教えてもらうのをひたすら待つ受け身ではなく、自分から行動を起こす前向きな姿勢を持ってもらいたい、成績を他人に上げてもらうのではなく、自分で勝ち取ってほしい、そしてそういう学習を通して人生を切り開く本物の力を育ててほしい、という願いがあります。
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◆大人が子供にすべきこと…自分で幸せになれる力を育ててやること
保護者のみなさんへ。
『倒れても倒れても自分の力で起きあがりなさい。』本当に子供のためになることをしていきましょう、子供の幸せのために。例えば「勉強しないので、宿題をたくさん出してください」とか「うちの子はおとなしいので、声をかけてやってください」などといった要望を聞くことがあります。もちろん現状をふまえ配慮はするのですが、それで終わりとするのが果たして本当に子供のためになるのかは疑問です。あたえられ、してもらうのではなく、自分から考え行動を起こす姿勢こそが尊いのです。なぜ勉強してほしいのか、どんな子に育って欲しいのか。「自分は本当にこの子を大切にしているだろうか」と常に自分に問いかけながら、魂を込めた言動を子供にぶつけていきましょう。
『おまえたちがいつまでも、いつまでも幸せでありますように。』子供を育てましょう、限りある時間のなかで。順番からいえば、親は子供より先に死んでいくもので、いつまでも面倒を見てあげられるわけではありません。まして塾講師や学校教師といった存在は、長くても数年の付き合いでしかありません。その意味では井村さんと大きな差はなく、本当に子供の一生の幸せを願ったとき、限られた時間の中ですべきことは何なのか…大人から子供への最大の贈り物、それが幸せになる力をつけてあげることなのだと私は思います。
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◆子供達へ…強い自分・優しい自分を育ててください
そして生徒の皆さんへ。
『これからどんな困難に逢うかもしれないが、負けないで、耐えぬきなさい。』強くなってください、自分を幸せにできるように。勉強だけでなく、部活動や、人間関係など、さまざまな困難に出会うでしょうが、それを乗り越えることで強さを身につけてください。嫌い、苦手だ、おもしろくないなどといった、自分の中の弱い心に負けないでください。
『心の優しい、思いやりのある子に育ちなさい。』優しくなってください、少なくともまわりの人を不幸にしなくてすむように、できればその人の幸せの手伝いができるように。それは例えば、悪口陰口を言わない、授業中まわりの人に迷惑をかけないといった、身近なところから始めることができます。そしてそれには、自分の中にある弱い心と戦う強さがやはり必要です。この世にはさまざまな不幸があるけれども、人間がつくり出す不幸を無くすことは、一人一人が心がけることで実現できます。みんなが幸せになれる社会を築いていってください。
みなさんの幸せを、心より願っています。
いい人生だったよ。本当だよ。(バスター・キートン)