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加藤学習塾
【岡山県岡山市の進学塾】

[2013年2月7日]

三平方の定理についての話題を楽しもう!

三平方の定理についての話題を楽しもう!

 中学3年生は、高校入試に向けて学校の勉強も大詰めになってきました。数学も、最後の三平方の定理について学習をしているところでしょうか。そんな中学3年生の皆さんに、三平方の定理についての話題を提供しましょう。受験勉強の間に読んでみて、興味がわいたらしっかり定理を覚えてください。他の学年の人もバリバリ計算するような内容ではないので、気軽に読んでみてください。

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● 古代エジプトでの話

古代エジプト(今から5000年も昔)において建てられたピラミッドの底面は、きわめて正確な正方形になっている。
 また、古代エジプトではしばしばナイル河が氾濫した。だが、「エジプトはナイルのたまもの」という有名な言葉があるように、ナイル川流域の農地では、ナイル川の氾濫の後に上流から運ばれてきた肥沃な土壌が広がり、肥料を与えなくても年2回の収穫に恵まれたそうだ。土地の広さが収穫高に影響するため、人々にとって氾濫後の土地の区画整理は、重要な関心事であった。
 ナイル川の氾濫が起こるたびに土地の測量を行う必要が生じるわけだが、土地の測量は、なわとくいを用いて巧みに行われたので、これを行った人たちのことをなわ張り師とよんでいた。当時の彼らは、12の長さの縄を3,4,5の長さの割合に折り、それを張るとき直角ができることを用いた。すなわち、「3辺の長さの比が3:4:5の三角形は直角三角形になる」という事実を知っていたわけである。
 古代エジプトにおいては、ピラミッドの存在やナイル川の氾濫の話で、上記の内容は比較的有名だが、実は古代インドや中国でも、「3辺の長さの比が3:4:5の三角形は直角三角形になる」ということはすでに知られていた。

(参考)
 幾何学(図形の性質を研究する数学)は、この古代エジプトの土地測量術から生まれたといわれる。なわ張り師たちは、測量をもとにいろいろな形の土地の面積も計算していた。
 例えば、古代エジプトでは、文字や図形を書きとめておくのに、パピルスとよばれる水草を原料とする紙の一種が使われていたが、この中に、三角形や台形の面積を求める問題が見られる。
 
 図1の三角形の面積を求める解法は、「4の2分の1を求め、10倍すれば20が得られる。」とあり、現在の次の式で計算したものと同じになっている。
  三角形の面積=1/2 ×底辺 ×高さ

 図2の台形ではその解法は、「両底辺を加えると10になる。長方形を得るために10の2分の1を計算し5となる。この5を20倍すれば100が得られる。」
とあり、これも現在のものと同じである。
   台形の面積 = 1/2 ×(上底+下底)×高さ

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● 古代バビロニアと三平方の定理

 メソポタミア地域(現在のイラクの一部)は、大きく上・下の二つの地域に区分される。
 上メソポタミアはアッシリア地方とよばれ、緩やかな起伏をもつ丘状地であった。下メソポタミアはバビロニアとよばれ、チグリス・ユーフラテス川のデルタ地帯である。ここに農業や牧畜を基盤とする古代文明が誕生した。バビロニアでは、経済活動に関する記録として粘土版文書が多く書かれたが、その中に数学の内容を示したものも含まれていて、現在発掘されている数学文書は数百枚といわれている。そのような粘土板の中に、次のようなことが刻まれていた。



「3辺の長さが3,4,5である三角形は直角三角形で、3つの数の間にはという関係がなりたつ。」 
このほかにも、5の2乗+12の2乗=13の2乗など、直角三角形をつくる3辺の長さについて、いくつもの数値が刻まれている。
 左図の、m,nにいろいろな自然数をあてはめると、直角三角形をつくる3辺の長さが求まるのだが、バビロニアの人はこのことを知っていたといわれている。
 (例えば、m=2、n=1とすると、3辺の長さが3,4,5である直角三角形が得られる。)

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● ピタゴラスの定理の発見

 古代エジプトや古代バビロニでの話のように、経験的に知られていた三平方の定理に、はじめて証明を与えたのは、古代ギリシアの数学者ピタゴラスであるといわれている。そのため,三平方の定理はピタゴラスの定理ともよばれている。ピタゴラス(紀元前572年頃〜紀元前492年頃)は実在の人物であるが、ただ伝説的な面も多く、彼についての話はおもに言い伝えにもとづいている。ピタゴラスは、エーゲ海にあるギリシャの植民地サモス島に生まれた。ちょうど釈迦や孔子と同時代の人である。ピタゴラスは、どんな動機からピタゴラスの定理を発見したのか。それについては、いろいろな説がある。
 彼は、エジプトやバビロニアヘ旅行して、それらの国々の数学の知識を学んだと伝えられている。先に書いたように、そのころバビロニアの人たちは、3:4:5のほかに、「3辺の長さの比が5:12:13の三角形は直角三角形になる」ということも知っていた。これらの数の間には、3の2乗+4の2乗=5の2乗 5の2乗+12の2乗=13の2乗という関係がある。これを一般化し、その結果としてピタゴラスの定理を発見したのではないか、というのがひとつの説である。
 また一説には,当時の寺院にあった1図のような敷石を見て、ピタゴラスは定理を発見したともいわれる。この敷石の1枚1枚は、合同な直角二等辺三角形である。
 いま、1枚の敷石ABCに注目すると、2図のように、BC^2=CA^2=「敷石2枚からなる正方形の面積」
   AB^2=「敷石4枚からなる正方形の面積」
となっているので、直角二等辺三角形ABCについては、
BC^2+CA^2=AB^2
という関係が成り立っている。これがさらに一般の直角三角形についても成り立つのではないかとピタゴラスは考えた、というのがこの説である。

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● ピタゴラスの定理の証明

 ピタゴラス自身が、どのようにしてこの定理を証明したかは伝わっていない。しかし、今日では多くの異なる証明法が知られている。ここでは次のようにしてピタゴラスの定理を証明してみたい。
右図の直角三角形を4枚、下の左の図のように並べると、1辺がcの正方形ができる。次に、3枚の直角三角形を図のように平行に移動させる。すると、1辺がaとbの正方形が1つずつできる。したがって、a の2乗+bの2乗=cの2乗が成り立つことがわかる。