[2013年9月8日]
教育ニュース
国公立大の進学にも「経済格差」 成績優秀でも断念!?
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大学受験を控えるお子さんを持つご家庭にとって、心配なのは成績以上に学費の工面かもしれません。保護者の方々の学生時代に比べれば、私立大学は言うまでもなく国公立大学の学費も相当高くなっています。そして、本来はどんな家庭にも平等に進学機会が開かれているはずの国公立大学にも、経済格差が生じているというのです。
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小林雅之・東京大学教授らの研究グループは、2012(平成24)年3月に高校を卒業した子どもを持つ保護者を対象にインターネット調査を行い、06(同18)年3月に行った調査と比べてみました。所得階層別に国公立大学への進学率を見ると、06(同18)年の時点では400万円以下の所得層が9.1%、1,000万円以上の所得層が11.9%とその差はわずかで、どんな経済状態の家庭からも同じように国公立大学に進学できていました。しかし2012(平成24)年調査になると、所得が上がるほど進学率も高くなる傾向がくっきりと表れ、400万円以下の所得層が7.4%、1,050万円以上の所得層が20.4%と、その差は約3倍にも開いています。
二つの調査の間にはリーマンショック(2008<平成20>年9月)があり、これをきっかけに日本でも所得格差が深刻化しました。その影響が、ついに国公立大学の「進学格差」という形で及んだものと見られます。
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中学3年生の時の成績別に進学率を見てみると、より深刻さが際立ちます。子どもの成績が「上」だったと答えた人のうち、2006(平成18)年の時点では400万円以下の所得層でも67.0%と3人に2人が国公立大学に進学しており、1,000万円以上の所得層(72.9%)とそれほど大きな差はありませんでした。それが2012(平成24)年になると、400万円以下の所得層の国公立大学進学率は53.3%と2人に1人に落ち込み、1,050万円以上の所得層(76.9%)との格差は1.4倍に開きました。
今回の調査からは、子どもが就職した人の中にも「経済的に進学が難しかった」「給付奨学金がもらえれば進学してほしかった」という保護者が5万〜6万人いると推計されています。小林教授は、子どもが成績優秀なら経済的に苦しくても何とかして進学させようとする「無理する家計」が日本の大学進学を支えていたのに、その無理が今や続かなくなっている、と心配しています。
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そんな家庭の味方となるのが、奨学金です。2012(平成24)年調査を見ると、400万円以下の所得層の2人に1人が日本学生支援機構の奨学金を受給していることはもちろん、625〜800万円の所得層でも2人に1人、825〜1,025万でも3人に1人が有利子を中心に奨学金を利用していました。中間の所得層にとっても、学費の工面策として大きな役割を果たしていることがわかります。
しかし学費が高くなった分、奨学金で返済すべき「借金」の額もかさむことは、以前の記事で紹介した通りです。将来の返済の大変さを心配して奨学金の利用を諦め、進学も断念してしまっては、子どもの可能性を狭めることになってしまいます。景気が良くなって家計が潤うのを待ってはいられません。少しでも支援策を拡充することが急がれます。